「地域経済に関する懸賞論文~ローカルファーストな経済社会の共創に向けて~」の結果について

 日本商工会議所 産業・地域共創専門委員会(委員長:中村 邦晴 東京商工会議所副会頭)による「地域経済に関する懸賞論文~ローカルファーストな経済社会の共創に向けて~」は、2024年6月18日から募集を開始し、10月31日に締め切りました。

 つきましては、ご応募いただいた11件の論文に対し、厳正な審査を行った結果、下記のとおり入賞者を決定しましたので、お知らせいたします。

 当所では、来年度も同事業を実施することを検討しており、引き続き地域経済の活性化に関する学生・若手研究者等の研究活動を奨励してまいります。

(1)最優秀賞(産業・地域共創専門委員長賞):賞金20万円

三田琳太郎・櫻井彩貴・李定倫,2025,「制度を通じたリソース獲得経路の最適化――経営資源集約化税制の再検討」.

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③審査委員による講評要旨

 中小企業のM&Aを優先的に促すインセンティブの付与が、本当に中小企業の長期的な成長を促し、中小企業を核とする地域経済の持続可能性に貢献するのか、という問題意識のもと、中小企業のM&A推進政策をさまざまな角度から分析した論文である。企業の成長のための「〈構築〉-〈借用〉-〈購買〉戦略」に基づく、「リソース獲得の経路」という観点から支援制度を体系化すべき、との指摘は興味深い。先行文献も丁寧に分析しており、意義ある指摘を行っている。M&Aはただそれを実施すればよいという時代は去り、現行制度を活かしながら新しい制度を構築すべき段階にある。この点で本稿は一石を投じている。

 今後、政策の学術的ロジックだけでなく、経営者の目線等、現場についての知見を深めることで、構造化に関する提言がブラッシュアップされることを期待する。

 

(2)特別賞(まちづくり・地域経済循環推進専門委員長賞):賞金10万円

吉川遼大,2025,「少子化改善と地域経済の復活に向けた自治体による親子世帯近居推進策の可能性――政策効果の実証分析」.

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③審査委員による講評要旨

 少子化問題は、長年解決しないまま時間が経過している。本稿は、実証研究に基づき、少子化問題の解決策として極めて有用な指摘を行う論文である。最も重要なのは「自治体による『近居推進政策』は、国が一律で行う保育料の補助などの子育て支援策よりも出生率への貢献度が高い」との指摘である。「近居」という視点から空き家対策にまで言及しており、政策論としての幅の広さがうかがえる。

 今後、中規模都市や大都市の近郊都市にはどのような展開が考えられるか、空き家問題の改善にどの程度つながるのか、統計分析モデルの説明力を向上できるか(決定係数の低さ、多重共線性等)、という課題に踏み込めば、より意義が高まる。

 

<本件担当> 日本商工会議所 企画調査部(kikaku@jcci.or.jp/担当:今井)

https://www.jcci.or.jp/kikaku/2024/6/17/JCCI_Paper_PR.pdf