2020年3月17日 14:00
日本商工会議所・東京商工会議所(三村明夫会頭)は、知的財産政策について中小企業のニーズや実態を踏まえ、標記意見を取りまとめました。
本意見は、知的財産政策について、目指すべき方向性と望まれる施策をまとめたものです。今後、政府の知的財産戦略本部や特許庁をはじめとする関係先に対し、要望事項の実現を働きかけていきます。
○基本的な考え方
①中小企業にとって知的財産(知財)は、自らの付加価値の向上やブランドの確立に貢献する競争力の源泉である。人材・研究開発投資の成果であると同時に、次の投資に向けた収益を生み出すための貴重な経営資源でもある。
②わが国の特許出願件数は漸減傾向にあり、その勢いを欠いている。一方、世界全体の特許出願件数は、中国を中心に高い伸び率を示している。また、研究開発費や論文の被引用件数においても、日本は米国や中国に大きく水をあけられている。こうした事実から、わが国では、知財の創造・活用が十分に進んでいるとは言い難い状況となっている。
③知財の創造・活用をより一層加速させるためには、中小企業の実態に即した支援策を展開することや、知財権の取得・維持に係る負担を軽減しハードルを引き下げることに加え、中小企業の経営者が、知財権を取得することによるインセンティブを実感できるようにすることが極めて重要である。あわせて、知財の保護を強化することや、知財の公正な取引を推進することも必要である。
④また、わが国の重要課題の一つである地方創生を加速させるためには、地域中小企業の競争力を強化することが極めて有効。そのためには、中小企業が地域資源の活用や国際市場への展開に積極的に取り組むことができる知財環境の整備のほか、中小企業の知財経営を担う人材の育成を後押しすることも不可欠である。
○主な要望事項
Ⅰ. 知財取引の適正化を
・親事業者の禁止(下請代金支払遅延等防止法第4条)行為に「不当な知財取引」の追加
・独占禁止法(優越的地位の濫用)のガイドラインの拡充(例:不当な知財取引を行う企業に対して企業名を公表)
・新たな振興基準をもとにした実効的な指導・助言の展開
・契約のひな形・ガイドラインの提示、専門家相談・派遣制度の創設
・取引調査員(知財Gメン)の活用
Ⅱ. 模倣品、海賊版への断固たる取り締まりを
・外国出願補助金等の公募期間延長、採択企業数の拡大、通年受付
・模倣品等の取り締まり、侵害の早期発見、警告などの強化
・政府・民間企業を問わず、サイバーセキュリティ対策の強化
Ⅲ. 中小企業の知財創造・活用の促進を
・「中小企業の特許料金の一律半減制度」の周知強化
・知財総合支援窓口における支援体制の強化(窓口で電子出願や手数料納付など、直接的な出願支援を可能に)
・インターネット出願手続きの抜本的簡素化(「かんたん願書作成」時の電子証明書の不要化)
Ⅳ. 知財金融や税制を活用した中小企業の知財創造・活用の後押しを
・政府系金融機関による知財公的融資制度の創設(低金利貸付や無担保・無保証貸付を可能に)
・信用保証協会の「知財特別枠」の創設
Ⅴ. 知財による地域中小企業の競争力強化を
・大学や研究機関の特許を中小企業に無償で開放する取り組みの後押し(中小企業が事業化後、有償のライセンス契約に移行)
・国際認証取得費用への助成制度(全国版)の創設
・人材育成プログラムの全国開催、知財OBの活用促進
(少年少女発明クラブなど、学校外の活動も含めた知財創造教育の推進)
Ⅵ. 日本のコンテンツの市場規模の拡大を
・コンテンツグローバル需要創出等促進事業(補助金)期間の大幅拡充
・各国政府に対する規制緩和・撤廃に向けた働きかけの強化
・制作現場の労働環境改善、適切な報酬を得られるように環境整備
(各種ガイドラインの周知および優越的地位の濫用に抵触しないように周知)
・海賊版・リーチサイトへの早急な対策
Ⅶ. 知財紛争における紛争処理能力の強化を
・知財訴訟費用補助金の創設
・訴訟提起前の査証制度の導入(訴訟提起前の証拠収集で見込み違いの提訴を防ぐ)
・侵害者側に、侵害行為で得た利益が手元に残らないように
○意見書の全文は以下リンク先をご覧ください。
以上
【本件担当・問い合わせ先】
日本商工会議所 産業政策第一部
担当 寺田、村松、石井、清水
TEL 03-3283-7630