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【最新!海外事情レポート】第6回中国国際輸入博覧会(上海)

115日から10日まで第6回中国国際輸入博覧会が開催された。過去3年はコロナの影響により、来場者が制限される中での開催であったが、今回は事前登録してIDタグを入手すれば入場できるようになっていたものの、初回のような熱気は薄れていた印象である。

 

成果の概要

上海市政府によれば、輸入博の成約額は前年比6.7%増の7841,000万ドルで、2年連続で増加したとのことである。JETROの報道では、今回の参加は、128カ国・地域から3,486社が出展し、そのうち、フォーチュングローバル500に入る企業や業界トップ企業は289社で過去最多となったそうである。会場では、442種の新製品、新技術、新サービスが紹介されている。また、イノベーション・インキュベーション特設エリアでは、39カ国・地域から300件のイノベーションプロジェクトが出展され、直近2回の輸入博での展示数の合計を上回ったとのことだ。

なお、出展社の約10%となる350社ほどが日系企業ということであり、国別では最多だそうである。

 

視察の印象

1)会場の雰囲気

今回は開会2日目に開催のイベント参加が目的ということで、日系企業の出展しているパートの一部などを短時間視察しただけで、全体を見ている訳ではないが、印象的な部分を記述しておく。

例年のことであるが、朝8時半ごろに地下鉄2号線の徐泾东駅に到着すると、IDタグを首からぶら下げた人々が改札からかなり遠回りするルートで地下道を歩いて、入口ゲートに誘導される。初回の時のように入場までに1時間近く待つことはなく、顔認証での入場も以前よりはスムーズになっていた。それでも目的のイベント会場に行くには、地下鉄を降りてから30分程度かかっていた。

 2つの参加イベントについては、後述するとして、テーマごとに分かれた四葉のクローバー型の展示館は一枚の葉の半分ごとに8つのパートに分かれ、さらにその外側にイベント会場の建物がある。会場での第一の印象は、中心部の周遊通路に半常設のような形で以前には多数の飲食店チェーンがあったが、今回は閉鎖されている部分もあり、賑わいが若干少なくなったように感じた。

 20231106 ④輸入博会場のバナー.jpg▲輸入博覧会会場のバナー

 

2JAPAN MALLブース

日本の水産物の輸入停止は続いているが、JETROでは日本酒150種類の試飲ができる「食品」ブースとアウトドア用品などの「消費品」ブースをJAPAN MALLブースとして2カ所で設置し、日本企業150社、650品目以上の市場開拓支援を行っていた。

食品ブースだけの視察となったが、150種類以上の日本酒や焼酎など来場者にゆっくりと試飲してもらえるよう入場人数に制限を設けていた。入場するまでの行列では関連SNSを見てもらうなど、待ち時間でも来場者にPRするような工夫がされていた。入場すると3つのプラスチックお猪口が手渡され、壁面に日本酒のラベル簡単な説明があり、その横にある小さな蛇口から好きな日本酒を試飲できる仕組みとなっていた。お猪口3杯になみなみと注いだ日本酒を飲んだ来場者には、ほんのり顔を赤くしながら、近くのビールの展示・試飲に向かっていく人や、スタッフに日本酒の説明を求める人もいて、大いに賑わっていた。

20231106 ①JETROブース.jpg▲JETROブース

 

3)日本企業ブース

JETROの食品ブースの近くにキリンが出展していた。毎年出展しているキリンではビールとサワーの試飲に加え、大阪王将とのコラボで焼き餃子も試食できるようになっており、多くの来場者で賑わっていた。10年前の中国では、中華レストランでは常温のビールが当り前というお店もあったが、冷えたビールがおいしいという習慣が急速に広まり、最近では常温のビールは特別にオーダーしないと、ビールと言えば冷えたビールが提供されるようになっている。地方ではいまだに常温ビールが一般的なところもあるが、日本食レストランでは冷えたビールが一般的になり、また、多くの中国人が日本に行った際に冷えたビールのおいしさを理解してきたことの表れではないだろうか。

その他に、伊藤忠商事のブースでは、低炭素社会に向けたリサイクル事業などの展示があり、キヤノン、日立、SONYなどのブースでは、業界関係者が多数訪れているようすであった。また、自動化の分野では不二越が大きなブースで展示していたのが印象的であった。残念ながら、その他の多くの日本企業ブースには訪れることが出来なかった。

 

20231106 ②KIRINブース.jpg▲KIRINブース

 

20231106 ③伊藤忠商事ブース.jpg

▲伊藤忠商事ブース 

 

最後に

中国国際輸入博は、6回の開催のうち半分の3回は、コロナの影響を受ける中での開催であった。ゼロコロナ政策の中で、来場者を制限しての開催が続いたが、継続して開催してきたこと自体に大きな意義があるものであろう。

近年の不動産市場の低迷や国際情勢の変化もあり、中国経済に対する見方には厳しいものがある。しかしながら、本年のGDP成長率は5%程度を達成する見込みであり、中国市場の巨大さは際立っている。さらに、自動車市場では、EVを中心に新エネ車への転換のスピードは驚くべきものがある。

中国経済の急速なデジタル化の実態やダイナミックな市場の変化、また、他国の中国市場へのアプローチなども体感できる場として、輸入博は貴重な機会であろう。次回には是非とも多くの日本の方々に、視察に来ていただき、自身の目で中国への理解を深めていただきたい。

 

(上海日本商工クラブ 事務局長 中村 仁)