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【最新!海外事情レポート】「あれも気になる。これも気になる」(北京)

激動の1ヶ月

 202212月初旬、ゼロコロナ政策が突如緩和された。いや、突然ではなかった。実際にはその予兆はあった。

その直前の時期は、48時間に1回はPCR検査を受けて、その結果を見せないとどこにも外出できなかった。当然すぐ結果が出るわけでないので生活を維持するために毎日検査を受けるはめになった。10人分の検体をまとめて調べるので、その10人のうちに陽性者がいると巻き添えを食らい自宅隔離になった。そのうち陽性反応が多く出過ぎたのか、検査結果自体が出なくなり、そのうち検査場も縮小していった。一方で、建物の入館に48時間の結果を求めるルールは残っていたので、検査場を探し求める市民が街中に溢れていた。

 政策が緩和され在宅勤務の要請も解かれた後も人々は感染を恐れて自主的に在宅勤務を継続した。しかし、12月中旬、北京では私も含め私の周りの肌感覚で約8割の人がコロナに感染。クリスマスイブには完治した者が集まり忘年会を行っていた。この1ヶ月の激動ぶりはジェットコースター並みであった。

 

コントロールが効かなくなった頃の北京市の感染状況(2022年11月末).png

▲コントロールが効かなくなった頃の北京市の感染状況(202211月末)

 

 

ビザを取るのも一苦労

 コロナ対策を理由に行われた措置は、大部分が解除され元に戻っている。いまだに残りかつ日中間の大きな懸念になっているのが、日本人に対する15日のビザ免除措置の停止である。コロナを名目に停止されたがまだ元に戻っていない。最近、中国の外交部はビザは相互主義だと主張している。日本政府は中国人に対するビザ免除を簡単にはできないだろうから、この問題はすぐには解決しそうにない。

 それで今問題になっているのが、観光でも商用でも短期の中国訪問にもビザが必要になったが、東京や大阪の中国政府のビザセンターが15日以内のビザ免除を前提とした人数しか揃えておらず、ビザの申請を処理しきれていないことである。ビザセンターに行く予約を取るのに約3週間かかり、ビザセンターでも指紋採取があるので本人が出向く必要がある。その待ち時間は最大で8時間かかるという。「うちの役員を一日ビザセンターで待たせるわけにはいかない」と中国担当者は頭を抱えている。これが、日中往来を阻害する最大の要員になっている。APECビジネストラベルカードがあればビザが不要だが、今カードを申請しても発行までに約2年かかるとも聞いている。

 

 

進みすぎたデジタル社会 

 3年間のコロナが開けて、日本からの出張者も多くなってきた。各社頭を抱えているのが出張者対応である。コロナ前を知る者が減り、空港送迎やどの店で食事するかなどのノウハウが断絶している。また、この間に中国ではさらにデジタル閉鎖化が進み、外国人出張者フレンドリーな環境とは言えなくなった。銀行口座と中国の携帯番号に紐づいた本人登録を必要とするアプリを使った現金を使わない生活が広がったため、これを享受できない出張者は電子支払いも配車アプリも利用できず、観光地のチケット購入もできなくなった。出張者が単独で動くのが難しいため、昼夜駐在員が張り付きお世話をすることになっている。

 

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▲地下鉄駅構内の某鶏肉屋の無人販売。QRコード決済のため現金は使えない

 

 

何がダメなのかが分からない

 中国にいる外国人の間で今話題なのが反スパイ法である。ジェームズ・ボンドのような活動をしてはダメ、公務員に金品を渡して情報を取るのもダメというのは理解できる。7月から施行の改正反スパイ法ではこれまでの国家秘密だけでなく国家安全・利益に係るものというものが対象に追加された。何が国家安全・利益なのかは明確ではなく、何をすると捕まるのか理解が難しい。しかし、これは、普通の生活をしていれば問題はなく、駐在員・出張者が過敏に反応して萎縮するものでもないと感じている。

 また、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法のいわゆるデータ三法が運用細則がはっきりしないまま施行されている。データの国外越境移転について定めているが、業種によっては海外へのデータの送信が必要な場合もあり、どのようなデータが法の対象になるのか、自分の企業はどのような対応をすればよいのかが不明確であり、引き続きの対応が求められている。

 

 

(中国日本商会 事務局長 松岡 鉄也)