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骨太の方針など閣議決定(経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議)

 政府はこのほど、第20回新しい資本主義実現会議と令和5年第9回経済財政諮問会議の合同会議で取りまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を閣議決定した。骨太の方針では、「新しい資本主義」の実現に向けた構造的賃上げの実現や人への投資、分厚い中間層の形成に 向けた取り組みや、GX・DX、スタートアップ推進や新たな産業構造への転換など、官と民が連携した投資拡大と経済社会改革の実行に向けた基本方針を提示。こども・子育て政策の抜本的強化、地域の中小企業の活力を引き出し特色ある地方創生を実現するための方針も示した。

 合同会議に出席した岸田首相は、「人への投資、構造的賃上げと労働市場改革を進める」と述べ、異次元の少子化対策については、こども・子育て政策の抜本強化により、少子化トレンドを反転させる決意を改めて表明。社会課題の解決に向けたスタートアップの育成や国内投資を進めるとともに、「グリーン」「経済安全保障」「AI」「半導体・電池」など、市場や競争に任せるだけでは過少投資となりやすい分野については「官民連携の投資を拡大し、持続的で包摂的な成長へとつなげる」との考えも示した。

 骨太の方針は、「マクロ経済運営の基本的考え方」「新しい資本主義の加速」「わが国を取り巻く環境変化への対応」「中長期の経済財政運営 」「当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方」の5章で構成。環境変化に対応したマクロ経済運営の方向について「政府と日本銀行との緊密な連携の下、経済・物価・金融情勢に応じて機動的な政策運営を行う」とした上で、日銀については「2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現すること」への期待を示した。

 適切な価格転嫁に向けては「政府としては、賃金上昇やコストの適切な価格転嫁を伴う『賃金と物価の好循環』を目指し、下請取引適正化を始めとする中小企業の価格転嫁対策、最低賃金の継続的引き上げに向けた環境整備、適切な労働市場改革などを進める」と説明。国内投資の持続的拡大に向けては「生産性向上とイノベーション促進に向けた民間投資」「人への投資」「GXなど社会課題の解決に向けた官民連携投資」「海外からの人材や資金の積極的な呼び込み」などに取り組む考えを示し、「成長力の向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費・国内需要の持続的拡大が実現する『成長と分配の好循環』を目指す」と強調した。

 三位一体の労働市場改革では、「リ・スキリングによる能力向上支援」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」を掲げ、失業給付制度については、自己都合による離職の場合の要件を緩和、雇用調整助成金については、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう助成率などを見直すことを示した。

 家計所得の増大と分厚い中間層の形成に向けては、「2000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する『資産運用立国』を実現する」との目標を提示。iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額および受給開始年齢の上限引き上げ、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充・恒久化など「資産所得倍増プラン」の実行を掲げた。

 投資の拡大と経済社会改革の実行に向けては「官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靱化」「GX・DXの加速」「スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、インパクト投資の促進」「科学技術・イノベーションの推進」「インバウンド戦略の展開」などの具体策を提示。少子化対策では、「こども未来戦略方針」に基づき、「加速化プラン」に沿って各種支援策を強化していく方向を提示。2030年代初頭までに、国の予算またはこども1人当たりで見た国の予算の倍増を目指す。

 地域経済を支える中堅・中小企業の活力向上に向けては、M&Aや外需獲得、イノベーションの支援、伴走支援の体制整備に取り組むほか、GX、DX、人手不足などの事業環境変化への対応を後押ししつつ、「事業再構築」「生産性向上」「事業承継」の支援や、新たに輸出に挑戦する1万者の支援を実施。「パートナーシップ構築宣言」や取引適正化の推進、加えて、インボイス制度の円滑な導入やサイバーセキュリティ対策を支援する。 中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの支援も強化する。具体的には、官民金融機関や信用保証協会などによる経営支援の強化、返済猶予などの資金繰り支援、資本性劣後ローンの活用などを通じた資本基盤強化、債務減免を含めた債務整理などに総合的に取り組む。また、早期の事業再生などを促す環境を整備するため、経営者保証に依存しない融資慣行を推進する。

 経済安全保障政策の推進とともにエネルギー安全保障を強化する。化石エネルギーへの過度な依存からの脱却を目指し、需要サイドにおける徹底した省エネルギー、製造業の燃料転換などを進めるとともに、供給サイドにおいては、足元の危機を乗り切るためにも再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。

 今夏にも策定する新たな「国土強靱化基本計画」では、デジタル田園都市国家構想や新たな「国土形成計画」と一体として取り組みを強化。東日本大震災からの復興については、ALPS処理水の海洋放出について風評影響への対応に万全を期すとともに、福島イノベーション・コースト構想のさらなる進展を目指す。

 全世代型社会保障の実現に向けては「医療・介護などの不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要」と指摘。「年収の壁」については、当面の対応として被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などを年内に決定し、さらに制度の見直しに取り組むことを明記した。

 詳細は、https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/を参照。

 

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