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【最新海外事情レポート】外商投資法制定の動き(中国)

 中国日本商会には、異業種交流の「三資企業部会」という部会がある。元々は1987年に設立の独立したグループだったが、1990年代に当会の一部となった。部会名称の「三資」は、外国資本の3つの進出形態である合弁・合作・独資を表し、発足当時は北京への進出企業の中でも、駐在員事務所や支店とは多少異なる悩みごとなどが話されていたものと想像され、その名残か今でも活動が活発な部会の一つである。


 さて、この三資の形態を定めていた外資3法に替わる「外商投資法」が、このたびの全国人民代表大会で成立し、20201月から施行されることとなった。


 同法の草案は2015年にも一度公開されていたそうだが、2015年当時約150か条あった条文が成立した法令では42か条となっており、事実上、原則に当たる部分のみを先行して成立・施行されたとみられている。


 条文の中に旧法(外資3法)による企業組織から新法への移行期間は5年間となっているため、成立前に募集されたパブリック・コメントには、当会も含め各国の商工会議所等から、細則部分(今回の公表には含まれていない実務に関わる部分)の早急な公表を求めるものが多くなっていたと思われる(移行期間の4年目に公表されては移行までに実質1年しかないことになる)。


 また、4年前に草案が公表されていたとはいえ、新しい草案(今回成立した内容にほぼ相当する39か条)がパブコメの募集に合わせて1月に公表され、3月の全人代で成立したというのは、中国でも異例の早さで、経済減速の一因となっている米中摩擦の交渉に資する狙いがあるとも言われている。


 昨年の中国の経済成長率は6.6%28年ぶりの低水準であり、全国人民代表大会で示された今年の目標成長率は6%台前半であった。成長率が右肩下がりとはいえ、6%台の経済成長を長い期間経験していない国の者からすればまだまだ勢いがあるように感じられるが、これ以上、気分が低調にならないよう今年も様々な催しが予定されている。


 先ず、4月下旬には一帯一路関係国を集めたフォーラムが予定されている。一昨年に開催された前回は各国から多くの首脳級が集った。そのフォーラムの終了する4月末から10月の国慶節までの約半年間、北京市の北西、延慶区において国際園芸博覧会が開催される。そして10月の国慶節は建国70周年ということで、盛大に開催されることが見込まれる。


 日本との関係で言えば、6月に大阪で行われるG20への習近平主席の参加が見込まれ、秋には2回目の第三国市場協力フォーラムが予想される。5月に五四運動100周年を迎えるが、良好な日中関係の中で、敢えて景気の下振れ要因となりかねない拗れを作ることはないだろうというのが大方の見方である。

(中国日本商会 事務局長 渡辺 泰一)


        

     五四運動の聖地「北大紅楼」            国際園芸博(http://www.horti-expo2019.org/