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【最新海外事情レポート】20年ぶりとなる大規模な税制改革が進行中(フィリピン)

  ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は20165月に就任してから間もなく3年を迎え、2019年は任期6年の折り返しを迎える。こうした中で、フィリピンでは現在、20年ぶりの大規模な税制改革の議論が進行しており、特に「法人所得税率の引き下げ」ならびに「税制インセンティブの合理化」等を目的とする税制改革第二弾(TRAINN-2TRABAHO)は、日系企業をはじめとする外資系企業にとって、高い関心と同時に強い懸念を抱く状況となっている。

 

フィリピンの現在の法人所得税率は、ASEAN諸国の中で最も高い30%となっており、この法人所得税率を各国並みの20%に段階的に引き下げ、国際競争力の強化を図ることが狙いである。この点については、人口が1億人を超え、平均年齢も23歳と若く、今後も増え続ける人口やそれに伴う市場の成長性を考慮すれば、適切な改革方針であり、フィリピン日本人商工会議所としても賛成の立場を取っている。

 

しかしながら、フィリピン政府は、税率引き下げによる減税分の財源、さらには、現在フィリピンで進められている大規模なインフラ計画である「ビルド・ビルド・ビルド」をはじめとする様々な経済政策の実行に向けた財源の確保のため、日系企業の多くが登録しているPEZA(フィリピン経済区庁)等に与えられている税制インセンティブの廃止・縮小を提案しており、仮にこの法案が成立すると、PEZA企業等を中心に増税あるいは煩雑な事務手続きを余儀なくされることになる。

 

フィリピン日本人商工会議所が昨年10月にセブ・ミンダナオの日本人商工会議所と連携して実施した会員企業に対するアンケート結果をみると、日本企業がフィリピンへ進出を決めた最も大きな理由は、「労働力(量・質・競争力のある賃金)」が最も多く、次いで「税制等の優遇制度」、「フィリピンの今後の成長性」、「取引先の集積」となっている。さらに輸出型製造業を中心とするPEZA企業に限ってみれば、「税制等の優遇制度」が最も高くなっており、いかに現在の税制インセンティブが投資の大きな判断材料になっているかが分かる。

 

 

                   ◆フィリピンに投資する理由(PEZA企業のみ)

また、現在の税制改革第二弾がこのまま成立したと仮定した場合の動向について、PEZA企業の63%が「撤退」「別の海外拠点へシフト」「生産規模の縮小」を検討すると回答した。こうした動きが現実となれば、日系企業のビジネスはもちろんのこと、日系企業が直接生み出している多くの雇用や輸出など、フィリピン経済にとっても大きな悪影響が及ぶことは言うまでもない。

 



                  ◆税制改革第二弾が仮に成立した場合のPEZA企業の動向


フィリピン日本人商工会議所では、本改革による日系企業への影響を最小限に留めるべく、前述のアンケート結果に基づき、昨年11月にポジションペーパーを取りまとめ、財務省(DOF)、貿易産業省(DTI)、PEZAに対して、日系企業の考え方やこのまま成立した場合の懸念を直接訴えるとともに、日系企業・フィリピン経済の双方にとって有益な具体的対応策を提示した。そのほか、在フィリピン各国商工会議所とも連携し、上院議員等への働きかけを積極的に展開している。

 こうした活動等の結果、昨年内の成立は阻止され、議論は今年に持ち越しとなった。フィリピンでは現在、今年5月に実施される中間選挙に向け、社会全体が選挙モードの突入したこともあり、議論は一時ストップの様相を呈しているが、おそらく選挙後に本件に関する本格的な議論が再開されることから、フィリピン進出済みの日系企業および進出を検討中の日系企業は、今後の動向を注視する必要がある。

 

   ◆財務省(DOF)との意見交換の様子

                                                      (フィリピン日本人商工会議所 事務局長 杉浦 宏)