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【最新海外事情レポート】初の政権交代後のマレーシア(マレーシア)

 

20185月、連邦下院総選挙の結果>

  本年59日に行われたマレーシアの第14回総選挙にて、元首相(第4代)のマハティール氏が率いる希望連盟(PH:Pakatan Harapan)が与党連合(当時)の国民戦線(BN:Barisan Nasional)に勝利し、マレーシア史上初めての政権交代が実現した。

 

92歳で首相に返り咲き、世界最高齢の指導者となったマハティール氏は、第4代首相を務めた頃にルックイースト政策(東方政策)を開始するなど、日本にとっても馴染み深い方であり、6月には初の外遊先として日本を訪問するなど、その一挙手一投足が日本でも注目されていることと思われる。

 

 マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)にとっても、35年前の1983年、中曽根首相(当時)とのトップ会談において設立の許可をいただいている経緯もあり、これまで節目で開催してきたJACTIMの周年事業にもご臨席いただくなど、縁の深い方である。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

      JACTIM30周年記念式典で登壇された様子(2013年当時)

 

14 回総選挙の投票率は 82.32%と、1957 年の独立以後、過去2番目に高い数字となったことがマレーシアの選挙委員会により発表された。

 

選挙前には今回も旧与党連合BNが勝利するであろうと予想していた関係者も多かったが、蓋を開けてみれば、下院定数222議席のうち、旧野党連合PHが過半数の113議席を獲得し、対する旧与党連合BN79議席、その他が30議席にとどまり、大逆転の結果となった。開票は深夜にまで及び、開票結果を固唾を飲んで見守っていた関係者も多かったはずである。

 

<政権交代後の動向>

マレーシアでは、1957年のマラヤ連邦としての独立以来、60年以上も統一マレー国民組織(UMNO:United Malays National Organization)が与党第一党として君臨し、その党首がマレーシア首相として政権を握っていた。一方で、初の政権交代を成しえた新与党連合PHの各党は長らく野党の立場であったがゆえに、政権に携わった経験を持つ人材が不足していた。

 

それでも初の政権交代による混乱を最小限とすることができたのは、マハティール首相の豊富な経験に加え、選挙後まもなく、新政権下での政策懸案に関する検討と助言を行う組織として、旧マハティール政権時代の各界キーパーソンを布陣した政府諮問会議の新設を発表し、経験不足への不安払拭に努めた結果ではないかと考える。

 

また、新与党連合PHの各党党首を平等に要職に付ける一方で、経済相にはモハマド・アズミン・アリ前セランゴール州首相、財務相にはリム・グアン・エン前ペナン州首相など、要所に実績を持つ人材を配置し、マレーシア国民および産業界からの信頼を得ることに成功している。

 

新政権が選挙前から公開していた公約は3部構成となっている。第一部が新政権誕生から100日以内に達成すべき公約、第二部は次回総選挙までの5間での実現を目標とする公約、そして第三部は若者や女性など特定の層への特別なコミットメントとなっており、新政権がこの公約に則って着実に政策実現をしていこうという意思が感じられる。

 

公約の中にはマレーシアの消費税にあたるGSTGoods & Service Tax)の廃止(61日より0%に変更済み)とそれに伴うSSTSales and Service tax)の復活(9月導入予定)や、最低賃金の引き上げ、外国人労働者の削減などが盛り込まれており、影響が懸念される点も多々あるが、「透明性」を謳う内容が多く、これまでの腐敗政治への決別の強い意思を感じさせる。

 

<日本からマレーシアへの投資の現状と今後>

 JACTIM法人会員企業を対象とした調査JACTIMJETRO共同実施)では、例年「国民の英語力」や「親日的」、「少ない自然災害」などが投資環境として評価されており、MIDA(マレーシア投資開発庁)によると、国別の累積外国直接投資額で、日本は隣国シンガポールに次ぐ第2位、製造業に限っては第1位を誇る。

 

  反面、日本からアセアン主要国への直接投資残高の推移(下図参照)を見てみると、他国への直接投資残高が右肩上がりに推移している一方で、マレーシアだけが2012年以降伸び悩んでおり、2016年にはベトナムやフィリピンにも追い抜かれてしまっている。これは前政権下での急な政策変更や新政策導入などの影響で、投資の見通しが立てられなかったことも大きく影響していると考えられる。

 

6月にマハティール首相が来日した際には、他国との近距離外交を強調しつつも、ルックイースト政策の深化などを表明し、さらなる日本からの投資を直接呼びかけており、帰国後も外国投資の促進に向けて10年以上の減税措置の実施を示唆するなど、投資呼び込みに積極的な姿勢を見せている。

 

選挙前に実施した先述の調査においても、回答した企業の約4割が当地での投資拡大の意向を示していることもあり、新政権下において、日本からマレーシアへの投資拡大が加速していくことを期待したい

 

今、マレーシアという国が大きく変わろうとしている。1兆リンギを超える債務を抱えるなど課題は山積みの状態ではあるが、マレーシアの今日までの発展を必死に支えてきた在マレーシア日系企業の先達の意思を引継ぎ、当地での経済活動を通じて新生マレーシアのさらなる発展を支えていきたい。

 

                <日本からアセアン主要国への直接投資残高の推移>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                              

                                                                                         

 

 

 

 

 

 

 

 

(マレーシア日本人商工会議所 事務局長 木本 和紀)