(日本商工会議所の機関紙「会議所ニュース」99年1月21日号より)
 
天神橋筋商店街:「町街トラスト進行中」

 
 昨年春、大阪の中心部に位置する全長約2.5キロ、日本一長いとされる天神橋筋商店街にファン組織が結成された。その名も町街(まちがいい)トラスト「天神天満計画」。
 この天神橋筋商店街は大阪天満宮の表参道として古くから栄えた芸能、文化の活気にあふれた街で、吉本興業発祥の地としても知られる。
 商店街界隈を丁寧に歩くと大阪の人でも意外と気付かない歴史的な場所に出くわすことがある。そんな町並みになにわ商人がしっかりと生きている。ここは日本三大祭りのひとつ天神祭の氏地であり、夏に入ると商店街の人々は祭りの重要な裏方となり、主役となる。
 こんな事実を実際に目の前で見ていると、この街は単なる商店街の域を越えた「大阪の歴史、文化を守り育てている文化的ネットーワーク」であることに気付く。まさにこれが町街トラスト「天神天満計画」のテーマである。
 トラストの対象は天神天満の街の自然、町並みを含めたものである。天神天満の地の有形無形の財産を守り、育てたい。この地域で働き、遊び、住む人々にとってもっと心地良い街にしたい。そんな思いから街おこしがスタートした。
 発起人はこの地域を愛する一般の人々、サラリーマン、企業人、そして商店街の人々、中には著名な文化人や芸能人もいる。その数約70人。
 これまでの街おこしは、当事者か利害関係者が仕掛けるものだった。しかし、このケースは明らかに違う。街を愛する人々、すなわち必ずしもこの地域で生活しているわけではない人々が、この天神天満の街を応援しようというものである。まさに街のファンクラブである。
 運営についてはサポーター制度を採用、一般の皆様とのネットワークを広げている。会費は1年に千円以上の寄付を募り、そのお返しに天神天満の商人(あきんど)は、サポーターが特典を受けられる「おかげさん店制度」をスタート。サポーターカード(寄付をすれば各自に送付される)を該当店舗で見せれば各店独自の特典が受けられる。
 また商店街の各所には昔ながらの高札(告知板)が設置されイベントの告知や街の情報、祭りの日には道案内として活躍。1枚1枚が街を愛する人々からの寄付によって作られた。これも町街トラストの心地良い街づくり活動の一例である。
 現在、このほかにもさまざまな事業が進行中で、「お願い茅(ち)の輪」もそのひとつ。神事において身を清める際に使われる茅の輪を、天神天満の縁起物として企画、販売。これは良い縁と出会い、悪い縁から遠ざけるとされている。
 昨年の大晦日には、大阪天満宮に大きなお願い茅の輪が現れた。これには「もういりまへん不景気風」と書かれた。天神橋筋商店街の人々、そして町街トラスト「天神天満計画」の世話人からの願いである。今後は、この街の資料、写真の収集分析および集大成化、大阪弁教室の開設、天神天満の商店街ツアーなどを予定。大阪の観光スポットとして展開できないかというのも今後の課題である。
 「いかにこの街をおもろくするか」そして「自ら参加し、楽しめる街生かしを行う」。これが活動の基本である。最後に町街トラスト「天神天満計画」では、「街おこし」という概念から「街生かし」という概念ですべてを考える。私たちにとってこれは非常に重要なキーワードである。

町街トラスト「天神天満計画」幹事・ワーキンググループ代表 中倉 篤


 



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