(日本商工会議所月刊誌「石垣」97年5月号より)

 

東和銀座商店街(東京都足立区)

地域密着作戦でお客のハートをつかむ

東和銀座商店街振興組合
東京都足立区東和2−17−2
理事長 田中 武夫

◎ポイント・商店街で(株)アモール・トーワを経営
病院のレストランや売店、近隣の小・中学校の給食、空き店舗での鮮魚店・惣菜店、一人暮らしの老人向け宅配サービス、ビルメンテナンスなどを実施。商店関係者に副業の道を開き、廃業を防ぐ
・アンテナショップとして全国の特産品を集めた「アモールふるさと館」を駅の食品街に開店

 


 東京の下町にある東和銀座商店街は、JR常磐線亀有駅から徒歩10分、約500mのところにある商店街だ。この商店街では、振興組合で会社組織をつくり、商店街活動を補完している。駅前に大型スーパーや、他の商店街がある中で、高齢化社会に向け「商店街は、全体で大きなコンビニエンスストア」と言う田中武夫理事長に話を聞いた。

▼みんなで助け合う商店街

 「皆様に親しまれるアモール・トーワ……」のテープが音楽とともにモールに流れる。突然、テープが中断され春のイベントのアナウンスに切り替わる。「問い合わせが殺到しております“たまごっち”があたるビンゴゲームは、親水公園で3時から…」。駅からは徒歩10分、住宅街に立地する東和銀座商店街は、地域に根付いた活動を模索している。商店街では、株式会社アモールトーワを経営して、地元の公立病院のレストランや売店の経営、近隣の小・中学校への給食の配給、空き店舗での鮮魚店・惣菜店の経営、一人暮らしの老人向け給食宅配サービス、ビルメンテナンスほか、駅の食品街に漬物屋「アモールふるさと館」を出店している。この会社の株主は組合員のみ。商店街振興組合ができない事業を補完している。
 「商店街は、ある程度の業種構成をして活動していないと認知されない。だからみんなで株式会社をつくって生き残ろう」という考え方があった。レストランの食材は、全部商店街から入っている。商店街から魚屋が欠けると商店街として致命的という理由で、鮮魚店の経営も始めた。ビルの清掃は、売上げが落ち込んで困ったときに、商店主がよそに勤めなくても、アルバイト的に自分で仕事を見つけられるようにということで始めた。
 「自分たちがつくった会社のためにみんなが一生懸命働くから、やりがいを持って何でもできるのです。仕事は、閉店後の夜8時ごろから始めることが多いです」と田中理事長。アモールトーワの従業員は約80人。病院のレストランでは、70歳のおばあちゃんが皿洗いをして月14〜7万円稼いでいる。「『他では雇ってもらえないがアモールトーワだから働かせてもらえた』と言っていました。いろんな形で組合員が助け合えます。店を続けながら、経済的にも仕事の面でも、さらに街を残すということでも補完できるのです」。
 しかし、老人向け宅配事業は赤字だという。「商店街の地域社会における役割を考えたら、街で商売させてもらっているのだから、儲からないからやりませんというのは違うと思います」と田中理事長が言う。地域貢献という発想が常に事業の根幹にあるのだ。

▼人のつながりが大切

 「なぜ、コンビニエンスストアが増えたのか? それは、昔は近くて便利な商店街だったのが、休日を増やしたり、営業時間を短くしたりと、商店街がコンビニの機能を自ら捨てたからではないでしょうか。裏を返せば、商店街が近くて便利な存在となれば必ず活性化していけるのです。特に、高齢化社会を考えると、商店街は絶対必要です。そのためには、みんなで力を合わせ、支え合うことが必要なのです」と、田中理事長は、人のつながりが商店街には大切だと強調する。「商店街ほどの運命共同体はないのです。仲間は親族と一緒。人は人、オレはオレという考え方ではだめなのです。これからは、特徴のある店しか生き残れないのは確かですが、商店街は支え合うことが前提です。商店街をあてにしている人がいる限りがんばらなければならない」。
 この商店街では、立ち話をしている光景をよく見かける。お客さん同士、商店主とお客さんなど。長話になっているところも多い。商店主同士も、仕事の合間に行き来している。
 自転車に乗ったまま鞄を眺める女子学生がいた。子供が騒いでいる声が聞こえた。これが商店街だと思った。



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