<会議所ニュース特集:平成13年1月1号>

 

ITテコに地域活性化

〜人材育成がポイント〜

 


 日本商工会議所は平成12年11月30日、12月1日の2日間にわたり、都内で地域振興セミナー「ITをテコにした地域おこし」を開催した。同セミナーは、全国各地で活発化しているITを活用した地域振興策などを探ることを目的としたもので、商工会議所、地方自治体、民間企業の役職員など46人が参加した。
 以下では、セミナーで事例研究を行った(財)ソフトピアジャパン、京都リサーチパーク(株)、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)集積として注目されている三鷹市の取り組みを紹介する。

 

<取り組み事例>

○地域へ絶大な波及効果:(財)ソフトピアジャパン(岐阜県大垣市)

○「創造する街」を目指す:京都リサーチパーク(株)(京都府京都市)

○SOHOで地域おこし:鰍ワちづくり三鷹(東京都三鷹市)

 

<問い合わせ先>
 日本商工会議所 流通・地域振興部
TEL: 03-3283-7839
FAX: 03-3211-4859
  E-mail:ryutsu@jcci.or.jp

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○地域へ絶大な波及効果:(財)ソフトピアジャパン (岐阜県大垣市)

 岐阜県は、次世代基幹産業としてマルチメディアを据え、産業育成に取り組んでいる。ソフトピアは、人・知恵・情報の絡み合う、21世紀の情報価値生産の現場(=情場)として、大垣市に誕生した「高度情報基地ぎふ」作りの中核拠点である。国際的なソフトウエアの開発、マルチメディア・ネットワーク・ビジネス、また、県民生活全体につながる地域情報化の拠点を目指しており、 21世紀の情報型都市作りのモデルとなっている。
 1996年にオープンしたソフトピアでは、情報通信インフラの整備はもちろんのこと、マルチメディアソフト制作の人材養成などを目的とした大学院レベルの教育機関である県立国際情報科学芸術アカデミーや、慶應義塾大学をはじめ日本を代表する大学との交流協定締結などの知的インフラの整備など、産・学・官が三位一体となって取り組んでいる。
 施設は大垣市の中心部から車で約10分の場所にあり、13階建てのセンタービルを中心に、国際インキュベートセンターなどがある「ドリーム・コア」、アネックス棟にはオフィススペースとしてインキュベートルームと技術開発室を備えている。その他にも各種会議室、研修施設、セミナーホール、情報ライブラリーなどが完備されて、周辺には企業向け分譲地が整備されている。

・技術者間で活発な交流

 現在、ソフトピア全体で135の企業が進出、そのうち約80社はベンチャー企業である。約1600人の人々が働いており、入居、立地企業の技術者同士の交流が活発に行われていることも大きな特徴だ。
 ソフトピアジャパンのユニークなベンチャー企業支卵にインキュベート援策の一つに、起業家のルームを3年間使用料無料で提供していることがある。

 また、ベンチャー企業に対し、経営コンサルティング、情報提供、ビジネスマッチングなどの支援をすべて無料で行っている。こうした取り組みがベンチャー企業進出促進に役立っている。
 また、人材育成の一環として、企業や県民向けのマルチメディア研修の実施や、国際情報科学芸術アカデミーとの協力体制を築いている。このアカデミーは、メディアクリエーターの育成のため、県立専修学校として設立され、卒業生がインキュベートルームに入居するなど、ビジネスに直結する技術を保有した人材を輩出している。

・海外との連携強化

 さらに、海外の大学、研究機関、企業とのネットワークを構築し、技術開発やビジネス機会の足がかりを積極的に構築しており、設立以来多くの産学共同研究に取り組んできた。積極的な海外提携の背景には、県知事自らが海外へ赴き、ソフトピアのアピールを行うとともに、ニューヨーク、上海など世界11都市に駐在員事務所を置き、現地で情報収集や提携機関との交流にあたるなどの活動に負うところが大きい。
 地域経済への波及効果について、安藤副理事長は、「税収増、雇用創出とともにソフトピア関係者向けのコンビニエンスストアやレストランなどアメニティ施設が増えている。さらに、周辺地域におけるパソコンの普及率の上昇、海外企業の進出などによって外国人の数が増え、地域の国際化などの副次的な効果が表れている」と指摘する。
 こうした岐阜県の先進的な取り組みは、フロントランナーとして全国各地の目標とされている。地域間競争の激化が予想される中、ソフトピアジャパンの優位性をどのように維持していくのか、今後の岐阜県の取り組みに注目が集まっている。
 安藤副理事長は「コアカンパニーを育て、官主導から民間エネルギーを活用した民主導への移行をはかること、“情場”を作り上げることが大事だ。実現のためには、どれだけ良い人材を集められるかが重要なポイント」と強調する。従来にない新しい手法で国際的なソフトウェアの開発拠点となることを目指しているソフトピアから目が離せない。

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○「創造する街」を目指す:京都リサーチパーク(株) (京都府京都市)

 「おかげさま1996年に単年度黒字転換、99年度には累積損失を一掃しました」数少ない民間リサーチパークの成功事例として注目を集める京都リサーチパーク(株)の大野企画開発部長の声が弾む。同社のベンチャー育成への取り組みが、徐々に実を結んでいる。
 京都リサーチパーク株式会社(KRP)は、89年に資本金1億円で創業。ベンチャー企業にテナントを提供し、育成、指導を行っているインキュベーター企業だ。第三セクターでこうした施設は多いが、民間施設として成功例を収めている数少ない事例だ。

 米国でリサーチパークを運営していたUCSUという機関に指導を受け、都市型リサーチパークとして誕生したKRPは、関連会社に関西TLOがあり、大学の研究成果を特許に申請し、一般企業との橋渡しをする事業も行っている。8つの公的なベンチャー支援機関が入居しており、これらの機関と連携してベンチャー企業向けにさまざまな支援機能を提供している。  

 現在は、マルチメディア関連を中心に136社が入居しており、そのうち約100社がベンチャー企業である。昼間の人口は約2,100人。施設は大阪ガスの工場跡地を活用し、東・西地区の施設に分れている。入居企業の業種で一番多いのは、情報・ソフト開発関連で、次に営業・サービス業などの拠点事務所などになっている。

・公的支援機関と連携

 KRPの構内には、エレクトロニクス関連の技術開発をサポートする京都産業技術振興財団(ASTEM)、応用技術開発を手がける京都市工業試験場、中小企業の総合相談窓口である京都府中小企業総合センター、ベンチャー企業への投融資を行う京都産業技術振興財団、発明協会などの中小・ベンチャー企業を支援する公的機関が集中し、ベンチャーの育成や新産業創出のためのインフラを構成している。
 ソフト面のインフラでもいくつかの貴重なネットワークづくりが行われている。産学交流事業のほか、大学の研究者のネットワーク、知名度や信用力の不足するベンチャー企業に代わって、KRP自身が受注活動を行うマルチメディアよろず相談事業、国内外のリサーチパークとのネットワークによる最新情報の収集提供事業などである。
 テナント企業のKRPへの入居メリットは多い。施設内で開催される年間約1,000件のコンベンションは、入居テナントに知的な刺激を与え、また、テナント間での交流や事業提携も活発に行われている。

・先行メリットを生かす

 「IT革命が進展する中で先行メリットを生かし、他との差別化を図ることで、大きな成果を上げることができた。引き続き、ベンチャー育成に努力したい」大野企画開発部長は気を引き締める。KRPでは、これまで開業希望者向けの起業家塾の開講、ベンチャーキャピタルの紹介、創業期に必要な小スペースの提供、取引関係の構築などの各種支援策を講じているが、今後、創業から企業成長、株式公開に至る一貫したベンチャー育成事業を行う計画となっている。
 次期施設の建設もすでに始まり、情報インフラの整備にも余念がない。具体的には「京都ONE」事業として、データセンターとIX(インターネット上の相互接続ポイント)の構築を手掛けている。KRPは今後も、大学や研究施設、ベンチャーキャピタルなどとの連携を深め、ビジネス・アクセラレーター(成長加速器)としての役割の強化をはかり、デジタル産業振興の拠点として更なる飛躍を目指している。

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○SOHOで地域おこし:(株)まちづくり三鷹(東京都三鷹市)

 SOHOとは、「Small Office Home Office」の略で小さい事業所や自宅を仕事場としている人々を指す。この新しい業態が脚光を浴びている。三鷹市では、いち早くこのSOHOに注目し、SOHOを育成・集積させることによって新たな産業振興を目指そうと「SOHO CITY三鷹構想」を提唱し、実践している。

・商工業では勝負できない

 三鷹市は、宅地化が進み、空いている土地は少ない。また、吉祥寺や新宿が近いため、工業や商業では勝負できない。「少子高齢化時代の到来で、このままでは、市の負担は増すばかり。そこで、目をつけたのがSOHOだったのです。電話帳で三鷹市内のそれらしい企業・事業所に片っ端から電話して彼らのニーズを調査しました」と(株)まちづくり三鷹の関事業課長は語る。
 インターネットの普及で在宅ワーカーも急増している。日本テレワーク協会の平成12年の調査によると在宅勤務、サテライトオフィス勤務などの企業内テレワーカー人口は推計246万人、2005年には445万人になると予測している。
 「IT革命とアウトソーシングが進展する中でタイミングが良かったと思います」と関課長。三鷹市の構想が発表され、パイロットオフィスへの募集を始めると予想をはるかに上回る反響があった。

 三鷹市の構想は、派手なハード先行型の構想ではない。市内に敷設された光ファイバー網を情報インフラとして活用し、企業・大学・行政の緊密な協力体制を構築し、三鷹産業プラザ、三立SOHOセンター、三鷹市SOHOパイロットオフイスといった市内の産業拠点を生かし、新たな創業形態であるSO(small office)の集積を推進し、併せて、在宅勤務となるHO(home office)の育成をはかるものだ。

・マッチング機能を重視

 具体的には、まず推進主体として「『SOHO CITYみたか』推進協議会」を設立し、協議会には、SOHOを応援する情報通信関連企業、大手地元企業、大学や個人の弁護士、会計士などの専門家に参加し、SOHOが抱えるさまざまなハードルを越えるため技術、専門知識、人脈、仕事などをフルに活用し、効果的に提供をしている。三鷹市の調査では、SOHOで働く人々の多くが起業化、仕事の斡旋が最大の懸案事項という結果が出ており、このビジネスマッチング機能が重要な役割を果している。
 実際にSOHOの集積を促すオフィスでは10u程度のブースを設置し、秘書サービス(電話、配達の取次など)、オフィス機器や会議室、共有サロンなどを提供している。
 現在SOHOの施設は3カ所で50を超える企業・事業所が入居している。SOHOは24時間その街で働き、生活するという職住接近の働き方ということで生活環境の整備は重要となる。工業型、商業型の街づくりをしている地域に比べ、三鷹市は住宅都市として長年培ったノウハウがあり、快適な住環境の提供という点で、現在のアドバンテージにつながっている。
 三鷹市では、今後のリーディング産業として期待されるIT分野の都市型産業を育成・誘致することで、財政基盤の整備とまちの活性化につなげていきたいと考えている。
 関課長は「三鷹の取り組みはハードにあまり金をかけていない。最も大切なのはノウハウではなく『
know who』である。誰を知っているか。事業と事業、人と人をコーディネイトできる人材をいかに地域で育成していくかということが今後の課題」と意気込みを語る。三鷹市の「実験」はまだ緒についたばかりだが、着実に人的なネットワークが広がっており、今後の動向が注目される。

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