(日本商工会議所の月刊誌「石垣」99年3月号 より)

  

横浜弘明寺商店街(神奈川県横浜市)
ふれあい商法で地域と生きる門前町の商店街

 

 横浜駅から地下鉄で13分、弘明寺駅を降りると横浜弘明寺商店街の入り口が見える。坂東十四番霊場弘明寺観音の門前町として栄え、築45年のトタン屋根アーケードは、かつて東洋一の長さを誇り、県内で最も古い。この自慢のアーケード改築工事を機に、新たな挑戦を始めた同商店街協同組合の佐野正彦理事長に話を伺った。


▼活発なイベント事業が原動力

 横浜弘明寺商店街―通りの長さ約400m、道幅約8m。商店街の中央を川が流れるという全国でも珍しい立地条件。弘明寺観音の参道に位置し、戦争による被害も少なかったこともあって、昭和50年代までは近隣・地域型商店街として賑わいを見せていた。しかし、近郊の開発が進むにつれて、大型店の集中出店などもあり、賑わいに陰りが出始める。そこで、顧客流出を防ぐために同商店街がとった手段が、今も賑わいの原動力となっている活発なイベント展開だ。今年26年目を迎える春秋恒例の「でっかいバーゲン」、弘明寺観音の花祭りや節分などに対する協賛イベント、毎月の「かんのん楽市楽座」、中元・歳末福引大売出し等、次々にイベントを打ち出した。
 そして、平成
3年、第2の転換期を迎える。隣接する副都心・上大岡地区における巨大商業集積の計画が、新たな事業展開への引き金となる。

▼個店に戦略もたらした「プラスOneカード」

「商店街の顧客固定化を目指して、ポイント・カード事業を始めたわけですが、各個店が自発的に顧客情報を生かした商売戦略を実施して、売上を伸ばしたことが大きな収穫でした」と佐野理事長はポインドカード事業の効果について語る。
 同商店街の「プラス
Oneカード」は100円で1ポイント、300ポイントで500円の市内共通金券に換えることができる。導入から8年目を迎え、会員数35000人。バースデー2倍プレゼント、がんばる弘明寺3倍セール、商品券交換市、クリスマス抽選会、バスツアー等プラスOneカードのイベントも豊富だ。また、カードを通して、買物客と店員の話が弾む。「あと少しで300ポイントですね」「もう○○ポイントですから、△△イベントに参加できますよ」等会話を交わしながら、買物客にいろいろな情報を提供し、顧客のニーズも把握する。「『ふれあい商法』が弘明寺の持ち味です。人情・下町・門前町をキャッチフレーズに、住民の声を大切にしながら、地域といっしょに発展していきたいですね」と指針を語る佐野理事長。
 また、同商店街では、門前の下町ならではの事業もいろいろ行っている。「初春かんのん楽市楽座いろいろ
1年分プレゼント」では、「お米60kg」「節分豆まき式参加券」「マリンカード1000円券12枚」等、商品がジャンボに用意される。節分には、商品引換券入り福豆袋(2500袋用意)を弘明寺観音で盛大にまく。桜の時期は、川岸に沿って7kmの桜並木がある観音橋に夜店を出し、パン屋や菓子店は手の込んだ製品を特別に用意して、客の目を楽しませる。この時期には、バス・ツアーも来るという。また、『弘明寺かわら版』を年4回発行(1万部)し、地下鉄沿線に配布、乗客に商店街の四季折々の情報を提供している。「抽選日やイベント日には、Wチャンス抽選会などを同時開催し、わざわざ足を運んでくれるお客様に、より多く還元したいと思っています」と佐野理事長は下町の心意気を語る。

▼シャッターが閉まった店をつくらないという意識

 いま、全国的に商店街の空き店舗対策が課題となっているが、ここ弘明寺には空き店舗はない。「13年前には、商店街の中心部に、店舗面積が狭い等の理由で長い間空き店舗がありました。中心部にシャッターを閉めたお店があってはと、当時の青年部有志が集まり、商店街になかったクレープ店を始めました」と佐野理事長は、組合員有志で自発的に法人会社を組織した経緯を語る。こうした組合員の意識が、結果的に空き店舗を無くすという状況を生んでいるのだろう。

▼アーケ−ド改装で新たな挑戦はじめる 

 人を呼び寄せた自慢のアーケードも築45年。老朽化から商店街改装の話が持ち上がり、この2月からいよいよ改築工事が始まった。「商店街をモール化する案もでましたが、アーケードの歴史を残したいという地域住民の声を反映させました。そして、バリアフリーで安全性のある商店街づくりを目指しています。工事が進むと足元も悪くなり、夜間工事等で迷惑をかける分、サービスすることでお返ししていきたいと思います」と佐野理事長。
 「山と川があり自然に恵まれた、しかも風情のある弘明寺の街が私は大好きです。商店街が元気に生き残るためにも、商業ベースのことはもちろんですが、『地域と共に生きる商店街』を目指します。組合役員の意見やアドバイスもいろいろありますが、最後は任せてくれるので、その信頼に応じられるよう、これからも一生懸命努力していきます」と佐野理事長は気概を見せた。

 


 



一覧へ戻る一覧へ戻る