(日本商工会議所の月刊誌「石垣」98年10月号 より)
 
福山本通商店街(広島県・福山市)
地域の生活・文化に根差し固定客の獲得目指す


 人口38万人の福山市で最も大きな規模を誇る本通商店街は、江戸時代から福山を代表する商業地として繁栄し続けてきた。駅前や郊外への大型店の進出等により、商店街を取り巻く環境がますます厳しくなる中、地域の生活文化に根差した商店街へと脱皮すべく新たな挑戦を始めた、福山本通商店街振興組合の木村恭之理事長にお話を伺った。

▼危機感の中から生まれた「元旦朝市」
 本通商店街は、広島県東部の商業の中心地・福山を代表する商店街である。福山の街はもともと瀬戸内海の水運により繁栄し、「江戸時代から港に近いこの地区は、福山の商業の中心地でした」と木村理事長は言う。
 しかし新幹線の開通等により臨海工業都市として発展し続ける同市とは逆に、本通には大型店の進出、駅から遠いという立地の悪さから、高度成長期以後、顕著に衰退の兆候が出始めていた。
 そこで、お客を呼び戻すために20年程前からさまざまなイベント事業に取り組んできており、その代表的なものが「元旦朝市」である。これは福山八幡宮の道筋に位置することを生かし、毎年元旦の午前0時〜3時まで商店街の店を開けるもので、初詣の参拝者に大変好評だ。また、6月〜8月の金・土曜日の夜には、午後9時まで店を開け、通りに縁日のような出店を出す「金土夜店」も夏の恒例行事として定着している。
 「さまざまなイベントを通じて商店街が地域のコミュニティの場となるべく取り組んでいます」と木村理事長が言うように、同商店街が福山の顔となるべく積極的なイベント事業を展開している。

▼商店街の固定ファンをつくる
 しかし、このような試みを続けてきても、大型店進出や昨今の不況の影響により、客足の減少傾向は続いている。
 「これまではイベントの効果で流動客を呼び寄せることができたが、集客力では結局のところ大型店にはかなわない」と木村理事長は語る。
 流動客による衝動買いはもはや期待できない。「固定客の獲得に街全体で取り組む必要があります。商店街にある一つひとつの店が個性的なものになって、大型店との差別化を図っていかなければなりません。そのためには『腐っても鯛』の街から、『新鮮な魚の街』へ、古い店も新しい店も一緒になって努力をしなければいけない」。
 現在、本通では商店街の中央部にあるマンションの1階に多目的ホールを建設し、隣接する公園の整備を進めている。これは「街」全体の環境開発に力を入れ、持続可能な"ヨーロッパ型"の町並みを目標とする、個性化への第一歩となるものだ。
 「商店街を人が出会い、憩える『ストリートパーク』にしていこうというコンセプトです。地域の生活文化の発信基地となり、商店街の固定ファンを作りたい」と木村理事長は熱っぽく話す。

▼市民を含めた人的ネットワークの構築へ
 さらに木村理事長は、多目的ホールを利用して、街づくりに市民が参加できる場を商店街で提供したいという。「これからは主婦、サラリーマン、学生といった、市民全体で街づくりを考えなければならない時代です。大型店と違って、商売抜きで市民と融合できる商店街の有利さを生かしたい」。
 市民を含めた人的ネットワークの構築。そして各個店がライフスタイル提案型の専門店になるというのが、木村理事長の描く本通商店街の将来像だ。
 「大きく見れば時代は確実に画一化から個性化に向かっています。現在は大型店に流れが傾いていますが、いずれ人々の思考が落ち着けば、商店街の出番がやってくる。その時までに地域の生活文化に根差した商店街の灯を絶やさないことが、われわれの役目なのです。21世紀は再び商店街が脚光を浴びる時代になると思っています」と木村理事長は強調する。
 同市中心街から2kmのところに新たな大型店が建設中である等、商店街の環境がますます厳しくなっていることは間違いない。しかし、木村理事長の言うように人々のライフスタイルが変化していることも、また確かだ。
 地域の生活文化に根差した商店街を目指す、本通商店街の試みが成功することを期待したい。
 
 



一覧へ戻る一覧へ戻る