(日本商工会議所月刊誌「石垣」97年4月号より)

 

静岡呉服町名店街(静岡県静岡市)

「一店逸品運動」が個店の個性を生む

商店街振興組合 静岡呉服町名店街
静岡市呉服町2−2
理事長 森 恵一 

◎ポイント
・各個店がオリジナル商品を作る一店逸品運動
・百貨店と共同で折り込みチラシを作成
・若い執行部と全店あげての商店街活動
・モール・アーケードの設置

 


 静岡市の中心地区に位置する呉服町名店街の歴史は古く、徳川家康の時代までさかのぼる。各個店が個性的で、活気あふれる。この呉服町名店街では、各店ごとにオリジナル商品を持つという「一店逸品運動」を展開、大きな成果をあげている。また、商店街内にある百貨店・静岡伊勢丹と共同で30万枚のチラシを配布、街を売り込んでいる。商店街で洋品店「ふしみや」を経営する静岡呉服町名店街前理事長の大村吉俊氏に話を聞いた。

▼若返りが成功の秘訣

 「私は、9年前、理事に就任したのを機に、商店街の活動に関わりはじめました。このときに、先代の理事長が就任したのですが、当時、彼は48歳でした。副理事長も40歳前後と若返りました。後で考えると、これが一番大きかったと思います」。呉服町をどうするのかという全体像を考えようと、平成2年にコミュニティーマート構想策定事業に取り組んだ。そこで、モール・アーケード整備事業などのハード整備と、CI事業、サイン看板整備事業、イベントの実施、平成あきんど塾、一店逸品運動などのソフト事業が提案された。
 このうち、モール・アーケードの整備は、平成8年3月に完成している。
 「歩道とアーケードで約8億円、車道まで含めると約10億円かかりました。車道部分については、全て市が整備してくれました。歩道とアーケードは、国と県が50%、市が35%、商店街が15%の割合で負担しました。商店街負担分は、高度化資金でまかないましたが、無利子で15年払いですので、返済の面に関して文句を言う人はいませんでした。時期が良かったと思っています」。
 商店街活動の成功の秘訣は、商店街を構成する店舗すべてが組合活動に参加することだと言う。クリスマスの飾りなどを行った営業委員会や一店逸品委員会の委員は、商店街の理事や役員ではなく、一般の組合員が中心となって活動を行っている。

▼100年後も生き残るために

 呉服町の一店逸品運動は、平成5年から始まり、毎年春に「逸品フェア」として実施している。これまでに、22件のオリジナル商品が生まれた。平成7年からは、継続的に商品を販売していることをアピールするため、和染めのエンブレムを店頭に置いている。大村氏は、一店逸品運動の成功は、専門家の指導と、県の好意的バックアップがあったことが大きいと語る。
 「コンサルタントの先生には、マスコミへのPRの方法や、チラシの作り方などをアドバイス頂きました。チラシには、ほぼ全店の商品を載せたのですが、先生の眼鏡に適ったものしか載せていません。また、県にはいろいろアドバイスいただいたうえに、一店逸品という、当時はまだ、はなはだ不透明な事業に対して、750万円もの補助金を頂きました」。
 今では、県から「あの補助金交付は正解だった」と言われる。また、静岡市も商店街の一店逸品運動に補助金を出し、市内の他の商店街にも運動は広がっている。
 一店逸品運動は、初年度から、マスコミにも大きく取り上げられた。これがきっかけで、いままで興味を持ってくれなかった組合員も商店街の活動に参加するようになり、全店参加の商店街になった。7年3月からは、商店街の中にある百貨店伊勢丹との共同広告に取り組んだ。地域としての呉服町のPRだ。新聞の見開き大のチラシに、伊勢丹は独自のオリジナル商品を、商店街は、各商店の逸品を商店街の地図とあわせて「保存版」として、近隣の30万世帯に配布した。
 「呉服町では、他では売っていない物を売っている、という商店街にしたいと思います。一店逸品の最大の目的は、呉服町は車で来るには不便なところであっても、お客さんに来てもらえるようにすること。これは、駐車場整備ができない商店街の郊外店対策でもあるんです。お客は、良い商品を提供できる店にきてくれるものです」と話す大村氏。呉服町にしか売っていない商品を持つことで、他の商売にも好影響が期待できるという考え方だ。
 「我々は、100年委員会を設け、100年後にも生き残れる商店街を模索しています」と語る大村氏。常に先を見据えた活動が、着実に商店街に活力を生んでいる。



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