(日本商工会議所月刊誌「石垣」99年9月号より)

 

大阪市千林商店街(大阪市旭区)

大阪屈指の庶民派商店街

大阪市千林商店街振興組合
大阪市旭区千林1−5−20
常務理事 田中 治夫 氏

◎ポイント
・徹底したコスト・パフォーマンス
・地域に根ざした地道な活動
・大型店、近隣商店街との連携

 


 自他ともに認める大阪屈指の庶民派商店街千林。近隣商店街と大型店がひしめく、市内でも1、2を争う小売商業の激戦地でもある。ダイエーやニチイ等のスーパー発祥の地としても有名。地域密着を原点にした地道な活動で庶民のハートをとらえて離さない千林商店街振興組合(山本正夫理事長)の田中常務理事に話を伺った。

▼スーパーマーケット発祥の地

 淀川の水運に恵まれ、京街道沿いの交通の要所として古くから栄え、数百年前から古市や定期市も開かれていた千林。戦災を免れたこともあり、戦後復興の中心地としていち早く商業が集積。京阪千林駅から国道1号線までの約660m、カラフルに舗装された道路とア−ケ−ドが続き、衣服・文具・鮮魚・乾物・瀬戸物・飲食店など230を超える店舗がところせましと立ち並んでいる。周辺にもいくつかの商店街が隣接しており、近年出店ラッシュの続く大型店も含め一大商業集積地を形成している。
 1957(昭和32)年、京阪本線千林駅前に「主婦の店ダイエー」がオープン、薬、化粧品、食料品などの徹底した安売りで評判を呼んだ。「多い日には30万人以上の来街者がありました。商店街の他の店も大いに影響を受けています。ダイエーだけでなく千林はどこも安いというイメージが出来たのもその頃からです。定期券を持って買い物に通っていた方もいたと聞いています。」と田中常務。

▼イメージ戦略とメディアへの露出

 「大阪で安いといえば千林」「庶民の強い見方」「大阪市民の台所」などの表現でマスコミ媒体に取り上げられる機会も多く抜群の知名度を誇る千林商店街であるが、発信される情報には、かなり気を配っている。「メディアで取り上げられるための工夫は必要です。例えば、歳末商戦一つとっても、テレビ的に欲しいネタというのがありますから、そのあたりを上手にPRしなければなりません。」と田中常務は語る。数年前、たまたま、テレビの人気バラエティー番組に商店街のテーマ曲が取り上げられ、大きな反響があったこともあり、メディアの影響力の大きさを実感したという。
 商店街青年部が運営しているインターネットのホームページの評判も上々だ。店舗紹介、オンラインショッピング、イベント情報、交流掲示板などの各コーナーは千林商店街ならではのユニークな味つけで、親しみやすい内容となっている。
 千林商店街の魅力は何といっても個店の工夫を凝らした品揃えと安さであり、心のこもった温かい接客であるというイメージが定着している。「想像以上に浸透していますね。せっかくお越しいただいたお客様の期待を裏切りたくないですから、必死です。正直言って苦しいときもあります。」と田中常務は笑う。「安くて何でも揃う親しみやすい商店街」であり続けるための努力と効果的なPRで、若い層にも新たな千林ファンが広がっている。

▼大型店との共存

 千林商店街は大型店との共存共栄を掲げている。商店街には、小売店に混じって、トポスやニチイのほか、第3セクターの「千林くらしエール館」などの大型店が出店しており、にぎわいを見せている。しかし、昨年1年間で、周辺地域に6店舗もの大型店が出店し、かなり影響を受けた。商店街では、これまで年4回行っていたセールを毎月行い、手作りイベントの開催、千林ブランド商品の開発などにも意欲的に取り組んでいる。商店街内の大型店に、チラシ広告を入れるように働きかけることもある。「大型店にも地域への貢献の意識を持ってもらい、大型店の強み、商店街の強み、双方をうまく生かせるような方向に持っていきたい。彼らにもどんどん意見を言います。大型店という概念のない頃からのつきあいですからね。競争の中で自然と共存共栄を図る空気が醸成されました。」と田中常務。

▼古き良き大阪と新しい街づくり

 千林くらしエール館は、大阪市内で初めて「街づくり会社」制度を活用した施設であり、多目的ホールや会議室、研修室を備えている。また、NHK大阪文化センターの千林教室も併設され、地域の文化活動の拠点として住民に活用されている。「商店街だけの発展はあり得ない。エール館設立の推進役となった地域の協議会を、将来的な街づくりの母体としていきたい。」と田中常務は抱負を語る。協議会は隣接する商店街や大型店、金融機関などで構成されており、現在も地域活性化のために活動を続けている。
 戦災を免れた千林周辺は、一歩路地に入れば、昔ながらの木造の家並みが残っており、古き良き大阪の原型を残している数少ない街といえる。市場の活気と露店で賑わう縁日の楽しさを兼ね備えたどこか懐かしい商店街が21世紀の新しい街づくりを先導する。



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