(日本商工会議所月刊誌「石垣」99年6月号より)

 

烏山駅前通り商店街(東京都世田谷区)

スタンプ事業柱に買い物の楽しさを提供

東京都世田谷区南烏山6−3−1
烏山駅前通り商店街振興組合
理事長 桑島 俊彦

◎ポイント
・スタンプに多様な付加価値を持たせる
・ハート・ソフト・ハードの街づくり
・各個店の工夫の積み重ねが街全体の発展に

 


 烏山駅前通り商店街は、東京都世田谷区の西北に位置する千歳烏山駅を中心に面的な広がりを見せる近隣型商店街である。同商店街における1店舗あたりの平均売上高は1億5千万円。全国一の規模を誇り、内外を問わず全国から視察団がやってくる。ここには、空き店舗問題も、後継者問題もない。30年ほど前に導入されたスタンプ制度が、この商店街を大きく変えた。今回は、同商店街振興組合の桑島俊彦理事長にお話を伺った。

▼売上3億円突破したスタンプ事業

 「小銭が落ちていても拾わないが、スタンプなら拾う」。烏山駅前通り商店街にはこんな“伝説”が伝えられている。いかにスタンプ制度が地域の人々に支持されているかを充分に感じさせる話だ。同商店街では、過去30年以上にわたり、消費を刺激するためスタンプ制度を実施してきた。商圏は南北1.5q、東西1qと決して広いとはいえない。しかし「ダイヤスタンプ」事業は、開始から一度も前年の実績を下回ったことがない。平成7年にはスタンプの売上が3億円を突破し、全国で一番の規模を誇る。こうした成功から烏山のスタンプ事業は「烏山方式」と呼ばれている。
 昭和40年、地域内に大型店「西友」が出店したことをきっかけに、事業は開始された。「そのころ商店街の店舗数は現在の半分以下しかなく、その売り場面積の合計と西友の売り場面積はほぼ同じでした。物理的に考えれば、商店街の売上が50%落ち込むことが危惧される状況でした。また、新宿などへの買い物客の流出も進行し始めていましたが、生き残るための安価廉売・叩き売りは避けたかったのです」と、桑島理事長は当時を振り返る。

▼多様化したニーズに対応

 「烏山方式」では、加盟店が振興組合から5000枚単位で1枚2円のスタンプシールを買い、これを店で買い物したお客に100円につき原則として1枚渡す。お客はそれを台紙に貼り、350枚で満貼りの1冊を500円として買い物などに使うことができる。このように、加盟店が700円を負担し、500円を回収した結果、差額の200円が商店街の資金として蓄積される。
 「スタンプを集めていれば、楽しいことに出会えます。顧客のニーズの多様化を謙虚に受けとめることが重要。選択肢の豊かさが、烏山方式の大きな魅力です」と桑島理事長は語る。烏山方式では、集めたスタンプにさまざまな付加価値を付け、工夫を欠かさない。満冊になった台帳は、第2の通貨として、現金の代わりに買い物に使われるほか、地元の金融機関への預金、映画や芝居、コンサ−トなどのチケット、バスや駐輪場、首都高速等の回数券との交換、日帰り旅行、定期的に開催されるイベントへの参加に利用できる。イベントは、各年齢層にふさわしいものに目先を変えて実施し、マンネリ化を避けるよう常に心掛けている。

▼ハート・ソフト・ハードの街づくり

 「街づくりは、ハート・ソフト・ハードのベクトルで成り立っています。ハートは、商店街の運命共同体としての意識、ソフトは共同事業、ハードは環境整備です。ハードだけでは活性化の効果は表れません。まず、ハート・ソフト面を優先し、次にハードの整備を行って販促効果を上げているのが烏山の戦略です」と熱い口調で語る桑島理事長。同商店街では、平成3年にハード面であるショッピングプロムナ−ド整備を完成したが、それ以前においては「ハート」「ソフト」の基盤づくりに重きを置いてきた。まず、地域の意見をまとめる、強力な求心力を持ったリーダーをつくる。これによって、人間関係が円滑になり、共同体意識が生まれ、新事業への取り組みが容易になる。このプロセスを経て、共同事業であるスタンプの発展が成し遂げられた。ソフト面をさらに充実させ、集客を図るため、ポイント、プリペイド、クレジットの機能を備えたICカードのリニューアルも昨年行っている。

▼個店の工夫が商店街の発展に

 同商店街では、売上アップを目指した個店ごとのスタンプ倍出しセールや、街ぐるみのスタンプラリーなど、スタンプを活用した工夫が、結果的に商店街全体の繁栄へと循環している。「今後の烏山駅前通り商店街の方向性を変えていくのは個店の頑張りです。共同事業としてのスタンプを、各々が心を合わせ販促の武器としてどう生かしていくか。これによって運命共同体としての発展へ繋がっていくのではないでしょうか」と桑島理事長は語る。
 「365日、毎日が販促です」。全国一という商店街の頂点に立ちながらも、常に前進し続ける意欲と努力はとどまることがない。



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