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【海外最新事情レポート】「はじまり」のはじまり(北京)

 

 上海のロックダウンが始まって約1ヶ月が経ち、北京にもオミクロン株がやってきた。

 

 4月22、23、24日の3日間で有症状の感染者が70人に達し、4月24日に北京市政府は日本人が多く住み多くの日本企業がある朝陽区の住民と勤務者約350万人に4月25日、27日、29日の3回PCR検査を実施すると発表した。

 翌25日になると、朝陽区の南の地域に中・高リスク地域が設定され、日本人駐在員が住むマンションを含む周囲3キロ四方が外出禁止地域になり、知り合いも自宅から出られなくなった。

 

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           ▲外出禁止地域の地図           ▲外出禁止地域の様子

 

 中国日本商会の会合は、まず、昨年11月からホテルの宴会場での会議スタイルではできなくなり、貸し会議室の利用もできなくなったので、中華レストランや居酒屋の部屋を貸し切り、「会食」という名目で会議を行っていた。「会議」がだめで「会食」が認められるのはなんとも不思議だったが、この日の会合は店から利用を断られている。

 

 PCR検査の結果で自分の職場のあるビルや自宅のあるマンションで陽性者が出ると、陽性者本人は連れて行かれ、同じビルの者はその時点から2週間の自宅隔離になる。それを考慮して、この日の夕方、北京市民が買いだめに走った。野菜や卵、牛乳、パンなどの日配品はすべて棚からなくなった。

 上海の知人からは、冷凍野菜を買っておいたほうがよいとか、配給される乾麺は、中華調味料としょうゆでうまい醤油ラーメンになるとかいろいろとアドバイスを貰った。

 

 北京市が2,000万人を対象に他の区でもPCR検査を行うと発表したのはこの日の夜のことだ。PCR検査を行っている期間は、文芸、スポーツ、販売促進などの大規模行事、対面での授業や研修、建設工事が停止となった。日本大使館もメールで在留邦人に対し備蓄を呼びかけはじめた。

 4月26日になり、25日の検査の結果が出た。朝陽区内の陽性者は30名程度、いずれも封鎖されているエリアで感染経路も追えている。その後10日もしないうちに、飲食店での店内飲食の禁止、各室内娯楽施設の営業禁止、一部地下鉄駅の閉鎖、生活維持企業以外の在宅勤務、3回の3日間連続PCR検査、ビル入館時の48時間以内の陰性証明の提示などの方針が矢継ぎ早に出された。

 

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          ▲PCR 検査の風景           ▲青い壁は、住民が外出しないように設けられたもの

 

 何より政治が優先される中国。それは、上海でのコロナ対策を見ても明らかだ。経済的論理よりも、人々の困難、苦労よりも、「ゼロコロナ政策」の遂行の方が優先されている。「ゼロコロナ政策」という手段で、「人民を幸せにする」という「目標」を達成するはずだが、いつの間にか目的が忘れられ手段が目的と化している。「共産党が指導して達成しているゼロコロナすげぇ」。「ゼロコロナ政策ができるのは、世界中で中国共産党だけだ」「中国ワクチンもすげぇ」と喧伝し続けてきたので、いまさら簡単には方針変更もできず、その呪縛からは逃れられていない。

 

 また、国民にも「コロナ怖い」意識が浸透しているので、みんな真面目に防疫対策の指示を守っている。無理難題を課されても、それを守ることで皆で一緒に国家に貢献していると悦に浸っている人も多い、その成果を享受している側にいれば良いが、ひとたび陽性者や、陽性者がいたのと同じところに運悪くいた人になると、周りの人を巻き込み隔離させることにもなるし、自身もたとえ無症状でも即入院措置となる。この生活がいつまで続くのか、先が読めない。

 

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      ▲閉鎖している駅を記した地下鉄路線図             ▲封鎖地域の地図

 

(中国日本商会 事務局長 松岡 鉄也)