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【最新海外事情レポート】マレーシアにおけるハラル事情(マレーシア)

  1964年以来2回目となる東京でのオリンピック開催が来年に迫っている中、会期中には世界各国からの日本への訪問者増が期待されている。

  中でも、世界中に16億人以上いるといわれているイスラム教徒(ムスリム)を呼び込むべく、日本でもハラルビジネスへの注目度が高まっていることと思われる。

  この流れを受け、ムスリム向けの食材店や、ハラルフードを提供するレストランも日本で徐々に増えているようだが、まだまだ日本ではムスリムが安心して口にできるものは多くない。

  マレーシアのムスリムに聞くと、日本では中近東料理の店くらいでしか食べることはできないとの声もあり、日本国内での更なるハラル浸透が望まれている。

 

  それでは、参考までに当地マレーシアでのハラル事情について触れていきたい。

  マレーシアは日本の約9割の面積を持つ一方、人口は日本の四分の一程度の約3,200万人しかいないが、その6割強はムスリムである。

  マレー系に加え、中華系、インド系など多民族国家であるがゆえに宗教も様々ではあるものの、国の宗教としてはイスラム教になる。

  スーパーマーケット等では、ムスリムへの配慮として、豚肉やアルコールなどのノンハラル製品の売り場は隔離されており、レジも別に設けられている。

 

  ただ、マレーシアのムスリムはその個人により宗教の厳格さも異なり、レストランや食品に「Pork Free」、「Alcohol Free」の表示があれば安心して食べられる人もいれば、毎年ラマダンと呼ばれる1か月間の断食月に、断食時間中は自分の唾液すら飲み込むことを良しとしない厳格な人もいる。

  当然、厳格なムスリムにとっては、ハラル認証のされたものでなければ飲料水ですら口にはできない。

 

  マレーシアは先述の通り人口は多くないものの、一人当たりの名目GDP1万米ドル超と高いこともあり、ムスリム向けの市場としても期待されている。

  ハラルには食品のみならず、化粧品、オーラルケアなどの消費財から、物流、金融などまで幅広くあり、マレーシア政府も「世界のハラルハブ」を目指している。

 

  ハラル認証は原材料や加工・保管等の各段階でもハラルの基準を満たしていることの証明であるため、当然、不純物の入る余地はなく、言い換えれば、ムスリム以外にとっても、その製品が衛生面・健康面で安心であることの証明にもなり得る。

  ハラルについては世界共通の認証があるわけではないが、マレーシアにおいては、唯一の公式ハラル認証機関として、マレーシア・イスラム開発局(Jabatan Kemajuan Islam MalaysiaJAKIM)がある。

 


  飲食店の入り口に掲示されているJAKIMのハラル認証マーク

 

   JAKIMのハラル認証は条件が厳しいことで有名であり、その結果として他国においても信頼性が高いため、JAKIM認証を取得した日本企業が、マレーシアをハブとして他のイスラム諸国に製品やサービスを展開する例も見られる。

   なお、日本の認証機関にもJAKIMと相互認証が認められている機関(下記参照)があり、日本でハラル認証を取得してからマレーシアに進出することも可能である。

 

日本のJAKIM相互認証機関一覧                              20194月現在

名称 英文名称
日本ムスリム協会 Japan Muslim Association (JMA)
日本ハラール協会 Japan Halal Association(JHA)
日本ハラールユニット協会 Japan Halal Unit Association (JHUA)
日本イスラーム文化センター Japan Islamic Trust (JIT)
ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会 Muslim Professional Japan Association (MPJA)
日本アジアハラール協会 Nippon Asia Halal Association (NAHA) 
ジャパン・ハラール・ファンデーション Japan Halal Foundation (JHF)

 

JAKIM相互認証リスト(ハラル産業開発公社(HDC)):http://www.hdcglobal.com/publisher/bhihc_rec_int_bod

 

ちなみに、日本食はマレーシア国内でも人気が高く、201711月には日本からマレーシアへのハラル牛肉の輸入が解禁された。

20194月現在、日本にはマレーシアのハラル認定を受けた屠畜場が2つあり、そこでイスラム法に則った屠殺法で処理された牛肉は、「ハラル和牛」としてマレーシアに輸入され、ムスリムの高所得層の間で人気となっている。

残念ながら、マレーシアで「WAGYU」と言えば、国民の間ではオーストラリア産の牛肉がすぐに思い浮かばれる実情があったが、今後、ハラルを通じて日本製品のブランド力がさらに高まり、本物の「和牛」などの日本の誇れる高品質製品が、マレーシアをはじめとしたイスラム諸国でもより広く認知されることを願っている。

 

 


   スーパーのハラル和牛特設コーナー

(マレーシア日本人商工会議所 事務局長 木本 和紀)