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【最新海外事情レポート】大統領選挙を終えて(インドネシア)

  インドネシアでは5年に1度の大統領選挙が、20189月から始まり20194月まで続いた。候補者は前回と同様で、ジョコ・ウィドド大統領(現職)陣営とプラボォ陣営。半年以上の選挙期間を経て、2019417日にインドネシア国民の直接投票による大統領選挙が行われた。実は、行われていたのは大統領選だけではなく、同時に議会・首長・地方議会選挙などが実施されており、インドネシア人有権者1.9億もの人が投票する選挙となった。そして、投票日は公休とされ有権者の多くが投票所へ向かった。有権者の数が多い故にその集計は容易ではない。開票作業の過酷さから、過労による死者が出るほどでもあった。

 

最終的には521日に正式な大統領選挙の結果が公表され、ジョコ・ウィドド大統領陣営の勝利が確定した。前日521日未明に選挙管理委員会の公表を受けて、敗者陣営の支持者による暴動がジャカルタ市内で起こり始めた。翌22日には、全国各地から敗者陣営の支持者が集まりデモが行われると報道を受けて、従業員の帰宅を心配する日本企業では、早期退社や翌日の休業、自宅待機など対応に追われた。また、デモ対策としてジャカルタ市内の主要道路は閉鎖され、日本大使館が立地する大通りも閉鎖された。

 

また、521日の選挙結果に不服を持ったプラボォ陣営が524日に憲法裁判所に訴え、その結果が627日に発表されたが、違法では無かったとしてその訴えが却下され、大統領選は幕を閉じたわけである。

 

日本では考えられないような選挙の規模と同時に、インドネシア国民の政治への関心の高さが伺えた一方で、選挙後のデモ・暴動などの行動が、インドネシアの現実を露呈した結果となった。

 

 選挙前の3月末日、日本はインドネシアに大きな貢献を果たしていた。41日にインドネシア初の地下鉄:ジャカルタ都市高速鉄道(MRTMass Rapid TrainMRT)が日本の円借款によって開業した。ジャカルタ市内から南へ約16キロ程度の短い路線。この地下鉄は、工事からシステム・車両が日本製で構成されており、日本の銀座線や丸の内線と同様に、ピーク時には3分~5分の間隔で運行が可能である。既に開業後、2ヶ月が経っており、毎日8万人の利用者がある。世界で最もヒドイといわれるジャカルタの渋滞の解消に期待されているものの、インドネシアの方の居住地域まで線路が延びていない、乗車運賃が公共バスよりも割高であることを理由として、まだまだ渋滞の解消とまではいえない。

 

 ここで、MRTの話しを取り上げたのは、選挙前になんとしても開業させたかった現政権の強い期待があった。選挙前に開通させる意味がここにある。インドネシア政府ならびにジャカルタ特別州にしてみれば、自分たちの力によって、開業させることできたことをPRしたかったのである。小職は3月末日に行われた開業式典に参加した。現職のジョコ・ウィドド大統領やアニス・ジャカルタ特別州知事などが参加して盛大に開催されたが、彼らの挨拶では「日本の協力によって作られた」という言葉は、ほんのわずかだったことからも明らかである。

  インドネシアの経済の発展は目まぐるしく、2045年にはGDPでは日本を抜いて世界第5位に入るとも言われているが、日本企業からの今後の投資有望国調査(JBIC調査)では、2013年には1位だった魅力も、いまや5位にまで落ちている。

 

インドネシアは、資源も多く、経済成長率も堅調に維持しており、政治的な安定性もあるが故に、日本に限らず、アジア・欧米諸国などからも注目を集める国になっている。日本人が持つ奥ゆかしさも必要であるが、インドネシアでの日本ならびに日系企業のプレゼンスを上げていくには、MRTの開業や日系企業が得意とする技術力や人材育成などに加え、約束(工期や納期、品質など)を守るといった独特の強みをPRしていくことの重要性を検討していくことが重要であると考える。

                                                (ジャカルタ・ジャパン・クラブ 事務局長 富澤 陽一)