トップページ > 国際関連情報(中小企業国際化支援ナビゲーター) > 【海外最新事情レポート】韓国新政権発足から半年(ソウル)

国際関連情報(中小企業国際化支援ナビゲーター)

【海外最新事情レポート】韓国新政権発足から半年(ソウル)

  2022年3月9日、韓国において第20代大統領選挙が実施され、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長が、革新系与党「共に民主党」の李在明前京畿道知事との大激戦を制した。今回の選挙は投票時間を1時間半延長、事前投票率は過去最高の39.93%、ポイント差0.73%(24万7,077票差)という「史上最少の得票差」による勝利、また、国会議員の経験がない人物が大統領に初当選するなど、異例ずくめの選挙であった。

 

ソウルpic1.jpg

▲第20代韓国大統領選で当選した尹錫悦大統領(大韓民国政府HPより)

 

 韓国では、1987年6月29日の民主化宣言以降、大統領直接選挙制が導入され、1988年からの10年間は保守系の大統領(廬泰愚、金泳三)が執権し、1998年からの10年間は進歩系の大統領(金大中、廬武鉉)が執権するという、10年サイクルで政権が交代した。その後、李明博、朴槿恵と、保守系の大統領が続くこととなるが、朴槿恵元大統領の罷免により、このサイクルは崩れることになり、2017年には進歩系の文在寅前大統領が当選、そして、2022年の大統領選挙では保守系の尹錫悦大統領が当選と、2度続けて政権が交代することとなった。

 

 文在寅前政権の政策は、①所得主導成長、②革新成長、③構成経済、が掲げられ、政策の中に支持層に対する見返りを含んでいたのに対し、尹錫悦大統領は検察官出身で法を重んじる考え方を持っており、支持層に対する見返りという考え方は薄いと見られている。2022年5月10日に発足した尹錫悦新政権の方向性としては、①法治主義、②専門家尊重、③民間主導、④外交保安重視、が挙げられ、特に外交では日米との関係改善を掲げている点が、前政権とは異なる部分である。

 

ソウルpic2.jpg

▲大統領就任式に臨む尹錫悦大統領(大韓民国政府HPより)

 

 2022年3月の大統領選挙は、①韓国社会を二分する激戦となったため政権発足当初から半分程度の国民の支持しか得られない点と、②政権と国会がねじれ状態にある点(169/229=56.5%)から、尹錫悦政権は厳しい政治環境におかれているといえる。経済的に見ても①新型コロナウイルスの蔓延、②ロシアによるウクライナ侵攻とこれに伴う供給網の混乱と物価上昇、③米国の金利引き上げ、と悪材料が多い状況にある。

 

 経済活動は、政治家が作った政治環境の下で行われるものであるため、必然的にその制約を受けることになるが、尹錫悦政権は、専門家尊重、民間主導という柱があるため、ビジネスにとっては歓迎すべき状況と言える。日韓間には課題もあるが、コロナによる規制が大幅に緩和されたことに伴い両国間の往来も回復しつつある中で、一番近い隣国の友人として経済面では積極的に協力関係を築いていくことが必要である。

 

(ソウルジャパンクラブ 常務理事 大里 徹平)