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【海外最新事情レポート】タイにおけるBCG (Bio-Circular-Green)経済モデルと バンコク日本人商工会議所の対応(バンコク)

 

 タイでは、地元新聞紙面上にて毎日のようにタイ政府が主導する「BCG経済モデル」に関する記事が掲載されている。ただ、タイ人はもちろん、在タイ駐在員にとっては余程に関心の高い人でない限り、その内容を理解している人は少ないように思う。

 

 この「BCG経済モデル」とは、「バイオ(Bio)」「循環(Circular)」「グリーン(Green)」といった分野において、タイの強みを生かしながら、産業の高度化と環境対応を実現しようとするもの。「バイオ」は生物資源を活用して経済活動を後押しするもので、例えば、豊富にとれるサトウキビの搾りカスをつかったバイオ燃料の生成などがあてはまる。「循環」とは、文字通り「資源の再利用」や「リサイクル」の推進。「グリーン」とは環境対策などがあてはまる。こういった取り組みは、世界的な環境対応への関心の高まりに伴い、総論として非常に重要で、また企業にとっても、今後のビジネス活動において無視できない必須の課題となっている。

 

 本政策の一般への訴求度合いはともかく、本年度APEC議長国を務めるタイでは、政府が一丸となってこの政策を進めており、またAPEC諸国に対しても、開催される多くの議論の中でも積極的に採り上げ、推進しようとしている。しかしながら、現状において、この「BCG経済モデル」をビジネスベースにのせようとしても、コスト面や技術面での課題、また排出権取引などの制度整備もまだまだ未成熟であり、日系企業が本気で参入するにはかなりハードルが高い。

 

 こういった背景を受けて我々、バンコク日本人商工会議所では、2021年10月に「BCGビジネス委員会」を新設し、BCG経済モデルに関する情報収集と会員企業への情報展開、さらには在タイ日系企業がBCG関連分野に進出する際、どういった支援が有効か、持続性の高いビジネスモデルは作れそうなのか等について議論を行っている。具体的には、BCG経済モデルを推進している政府機関「タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)」や「高等教育科学イノベーション省」などと緊密に連携し、情報収集に努めるとともに、在タイ経済団体との協働体制も模索している。他方で、こういったBCGの各分野において優れた技術力を持つタイ企業や在タイ日系スタートアップの企業との協働も検討している。

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▲BCGビジネス委員会でのNSTDAとの意見交換

 

 世界的な環境対応への関心が高まる中、タイの打ち出したこの政策は、タイの産業高度化と環境対策を進める上で、非常に時宜を得たアイデアだと思われる。文字通り「一寸先が闇」になるほどの大気汚染、運河の水質汚濁など、タイには非常に厳しい社会課題が山積みである。我々在タイ日系企業としても、日本国内での各種公害対策のノウハウや知見等を活かし、BCG経済推進の名のもとに、積極的に協力事業を進めていきたい。

 

(バンコク日本人商工会議所 事務局長 石井 信行)