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【海外最新事情レポート】国交樹立50年を迎える両国関係と経済協力(ハノイ)

◆日越外交関係樹立50周年を迎える二国間関係

 来年2023年はベトナムとの外交関係を樹立して半世紀の節目を迎える。在ベトナム日本大使館が中心となり、ベトナム日本商工会議所(JCCI)、ホーチミン日本商工会議所(JCCH)でも委員会を設置して、記念行事への協力と周年事業の機運を高めている。

 日本の大型連休中、岸田総理大臣がASEANの戦略的パートナーであるインドネシア、ベトナム、タイを訪問した。ベトナム滞在は24時間未満という超過密スケジュールの中、ファン・ミン・チン首相はじめ4トップとの会談を実現し、経済協力や安全保障、外交関係樹立50周年への協力など、多岐にわたる関係強化を働きかけた。

 これに呼応して、ベトナム政府側も各省庁に対して日越50周年の機会をとらえた両国関係強化を指示しているようだ。各地方省では日系企業向けの投資促進セミナーなどが複数開催されている他、社会保障などおよそ外交関係とは縁遠い省庁でさえも、50周年にかけて外国人向けの社会保障加入イベントの企画や、日越社会保障協定の予備協議の動きなども見られる。

 

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▲岸田総理訪越時のMOU(※)署名式

※交換文書については、下記参照

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100338943.pdf

 

◆日越共同イニシアティブ第8フェーズ

 経済協力の面で言えば、2003年より始動している投資環境整備の政府間協議「日越共同イニシアティブ」に取り組んでいる。2年ごとにフェーズを区切って進捗状況を評価し、現在では第8フェーズが進行している。

 元来、日系企業が投資環境上改善してほしい分野について、ベトナム側関連省庁と日系企業とがワーキングチーム(WT)を組成して課題を共有し、その原因を解きほぐして、両者が協力して解決を図るというユニークな取り組みである。

 しかし、本協議も第8フェーズに至り、日本側の要望だけでなくベトナム側の政策目標に対して日本側の協力を求められるようになった。特に、先般の岸田総理大臣の訪越の際にもテーマに上がった「脱炭素化に向けたエネルギー移転」「サプライチェーンの多元化」「技術革新」がそれである。

 第8フェーズでは、ベトナムの電源ベストミックスを志向する施策実現(WT6)や、裾野産業育成(WT9)・高度産業人材育成(WT11)、イノベーション促進の国策実現(WT10)といった新しいテーマが加わっている。新分野のためベトナム側の思い描く目標が正しく共有されていなかったり、目標へのアプローチが不明確だったりと、必ずしも順調に進んでいるとは言えないが、このような密接な対話を重ねることで日越間の一層の理解が深まるものと期待している。

 

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▲日越共同イニシアティブ第8フェーズ中間評価会合

 

◆互恵関係の発展に向けて

 7月5日、日越共同イニシアティブ第8フェーズの中間評価会合が計画投資省で開催された。冒頭、共同議長の計画投資省外国投資庁のホアン長官より「新型コロナでは全ての活動が一時的に停止したが、日本からもワクチンや医療機器の提供など多大な支援があり、生産活動も安定してきている。感染状況を抑制しつつ経済成長も実現できたのも、日系企業の貢献が大きい。日越共同イニシアティブを通じて投資環境の課題を指摘し、運用の改善に導いてきたことは大きな成果である」と評価を得た。

 来年の日越外交関係樹立50周年に向けて、両者の協力関係は成熟してきており、今後もこの互恵的関係をさらに発展して後世にバトンを引き継ぐのが我々の使命である。

 

 (ベトナム日本商工会議所 事務局長 吉田 晋)