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【海外最新事情レポート】香港返還から25年、次期行政長官の目指す先(香港)

 本年7月1日は、中国本土に香港が返還され25年になる。同時に第6代目の行政長官にMr. John Lee K-chie(李家超)が就く。

 

 同氏は、1957年生まれ。学業を終え1977年に香港警察に入り、見習い警部からキャリアをスタート。大学進学(当時は、香港大学と香港中文大学の二校しか大学は無かった。)せず就職したが、在職中に自主学習制度を利用して、オーストラリアの大学で公共政策を学び修士号を得ている。

 同氏は、数々の分野を経験し、2010年に警察のNo.2に昇格(53歳)、2012年に香港政府の保安局のNo.2 (Under Secretary) に、2017年に局長 ( Secretary ) に就いた(60歳)。その後2021年に、香港政府のNo.2の職責である政務長官(Chief Secretary)に登用され(64歳)、本年5月にはついに行政長官に選出された。

 

 当所も席を持つ外国商工会議所と香港政府の協議会の議長でもある同氏と身近に接する機会があるが、それぞれの意見を丁寧に聞き、勿論英語で明快に回答する。香港政府は、地場のみならず、国際ハブのかなめでもある外国商工会議所を重視して、年に何度となく意見を聞く機会を設けてくれる。自身も選挙公約中に言及しているが、香港社会の改善を目指して警察に入り、市民を理解してきた叩き上げで、言わば庶民派である。

 同氏が職に就いた1970年代と言えば、植民地政府マクレホース総督時代で、香港社会の汚職を絶滅しようと「クリーン香港」のキャンペーンが打たれた頃である。現在に続く香港の価値の礎が出来てきた時代である。警察出身とのイメージが同氏には付きまとうが、誠実な人柄である印象を強くしている。

 

 同氏の選挙公約は、4つの柱から構成されている。

 

1. 香港政府の行政において環境の変化に対応するガバナンスを高めて、市民生活の課題への取り組み。結果を出す新政府を目指

   す。

2. より多くの住宅とより良い生活の提供の促進とその手続きの合理化を実行。

3. 香港の競争力全体を強化し、持続可能な発展を目指す。即ちオープンでグローバルな都市として6政策【①国際金融センター

  のさらなる強化、②イノベーションとテクノロジー(I&T)を発展させる、③中国本土と境が近い北部の開発を発展のエンジ

  ンとする、④文化都市として育てる、⑤法の支配(the Rule of Law)を強みとして法律サービスを促進する(注:ビジネスにお

  いて、英国植民地時代から続く国際的な判例法主義即ちコモンローが採用されているので、グローバル企業が拠点を置き易

  い。)、⑥多様で自由度が高い経済の活用】が挙げられている。

4. 市民の福祉を社会の発展の重要目標にしかつ若者の上昇志向に誘う。公約にヘルスケアや高齢者ケアへの注力に対し言及があ

   り、注目されている。

 

 各国商工会議所は、香港を含む華南の発展を担う「大湾区構想」へ期待がかかるが、当所はヘルスケア・メディカル分野、環境分野にも注目して日本企業の新たなビジネスチャンスを追求している。新行政長官の結果を出す姿勢に大いに期待が持たれる香港である。

香港.png

JOHN LEE2022.HKのウェブサイトより

 

(香港日本人商工会議所 事務局長 柳生 政一)