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【海外最新事情レポート】インドネシアのコロナ対応術と、経済発展との深~い関係(インドネシア)

1.コロナ禍のインドネシアでの影響

 世界各国でコロナウィルスが猛威を振るっているが、ここインドネシアでは2021年6~8月にデルタ株の感染拡大があり、ピーク時の1日あたりの新規感染者数は5万5千人に達し、在留邦人を含め多くの方が亡くなった。関係者にお悔やみを申し上げる。

 この時期、筆者自身は着任早々に感染したものの、幸い軽症で済んだ。一方、多くの日本人駐在員と家族が予防接種のため日本に一時帰国し、経済活動は停滞した。その後落ち着いたが、今年(2022年)に入りオミクロン株の波が来て、執筆時点(2月上旬)で感染者は1日に3万人を超えているが、今回は重症者、死亡者が前回より格段に少ない。

 ジャカルタジャパンクラブ(以下、JJC)は、インドネシア最大の日系コミュニティであり、商工会議所としての機能を持つ法人部会と、在留邦人のための日本人会としての性質を持つ個人部会から構成される。法人部会はコロナ前後で会員数に変動はなく、現在694社である。一方で、個人部会の会員数は、コロナ前の約2,500人から一時約4分の1にまで減少したが、現在は1,200人まで戻った。日本人駐在員の帰国は進んだものの、未だ日本にいる帯同家族も多い。

 

2.インドネシア流のコロナ対応術と経済との関係

(1)インドネシア政府のコロナへの対応

 インドネシア政府のコロナ対応体制は、海洋投資調整大臣をトップに、保健大臣などが参加するコロナ対策タスクフォースが、医療・国民生活・企業の感染対策・出入国管理などについて矢継ぎ早に対策を打ち出している。

 その特徴は、一言でいうと、「ガツンと素早いトップダウンと、そこそこ柔軟な現場」である。感染状況によって、ある日突然入国に必要な書類が増えたり、隔離の日数が増減したり、国境が閉じられてしまったりということが起きた。また、個人の感染状況やワクチン接種状況を把握する政府の保健アプリを使わなければ、ビルや工場、商業施設への立ち入りを禁止する政策が導入された。突然の発表なので、国民はもちろん、政府の役人もアプリも準備ができておらず、エラーが続出して当初は機能しない。ショッピングモールの入口は長蛇の列ができる。

 ところが、そんな時もインドネシア人は慌てず騒がず、例えば警備員が紙など別の方法で接種状況を確認して通してくれたりと、現場は比較的柔軟な対応をしてくれる。そうこうしているうちに、何度もアプリのアップデートが行われ、1か月ほどでエラーが解消されていく。

 これが日本であれば、事前に非常に細やかな準備がされるはずだ。システムエラーのバグ取りはもちろん、制度も様々な状況を想定して詳細・例外規定を作り、予想されるクレームにも予め対応するなど、非常に用意周到であるが、とかく時間がかかる点で対照的である。

 

(2)コロナだけではないインドネシア流

 インドネシアは、とにかくトップが決めたら、準備は後回しにしても、その日から新制度を実施する。不具合や一部の人の不利益は二の次で、現場は何とか対応していく。

 これが悪い方に出れば、昨年の医療機器国産化促進のための輸入品政府調達の変化、輸入規則の改定と新システム導入、日本でも報道された石炭輸出の一時停止など、ビジネスの予見可能性に悪影響を及ぼしかねない事件となってしまう。もちろんJJC・日本大使館から企業の予見可能性を確保するための周知期間の確保・周知活動の実施などは申し入れている。

 一方で、新ビジネスの分野ではこのスピード感が良い方向に作用する。今回のコロナの健康アプリに限らず、民間の配車・移動サービスアプリ、eマネーなどの新しい技術をあっという間に導入し普及させていく。このスピード感には日本人として目を見張るものがあり、また、今後の日本からの投資も、こうしたスピード感で動く人たちを相手にしなければならないのだと感じる。

 

3.2022年、インドネシアのチャンス

 2億8千万人の人口を抱えるインドネシアは、今年、新興国として初めてG20の議長国となるほか、2023年にはアセアン議長国、日アセアン50周年、日インドネシア65周年の節目を迎える。地域での存在感・発言力が高まる中で、昨年のCOP26では2060年代のカーボンニュートラルを宣言し、今年は新首都への移転計画も決めるなど、意気込みは非常に強い。

 日本として、企業として、こうした動きをどう成長に取り込んでいけるか、我々JJCとしても当地でのプレゼンスを高めながら、しっかり取り組んでいきたいと考えている。 

 

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▲変貌するジャカルタの街並み

 

(ジャカルタジャパンクラブ 事務局長 小倉 政則)