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【海外最新事情レポート】オムニバス法の成立・実行細則の整備(インドネシア)

 インドネシアでは、2020年11月2日にジョコウィ大統領の署名により、既存の70以上もある法律をひとまとめにして、雇用創出を促すための「雇用創出オムニバス法」が成立した。

 インドネシア政府は本来の審議過程から4日前倒しという、半ば強引に同法の審議を終了し可決させた。これに伴い労働団体・学生などが、国会周辺では大規模デモを実施したり、バス停に放火したりするなど一部暴徒化した動きもあったが、街は今、落ち着いた様子を取り戻している。

 同法成立後、3か月以内に実施細則が関係省庁で整備され、運用を開始するとされているが、2021年2月16日時点で、雇用創出法の細則(施行規則)となる政令45本と大統領規定4本の計49本が公布された。残り政令案2本と大統領規定案1本が残っており、今後内容が精査され、他の実行細則との整合が図られる。

 

 同法については、製造業を中心とした日系企業で大きな負担となっていた労働法関連の改善に向けて、弊所としても第2次ジョコウィ政権発足以来、幾度となく政府関係者・関係省庁などと、交渉を重ねてきた。それ故、当地日系企業でも、同法成立は概ね好意的に受け止めており、期待も大きい。

 特に期待が寄せられるのは最低賃金の計算方法。今までの計算方法は、消費者物価指数に加えて経済成長率が加算され、結果的に8%以上の最低賃金が毎年のように上昇した。製造業を中心とする日系企業は、生産性が上がらなくとも最低賃金だけは法律に沿って上がってしまう。今では、ジャカルタ及びその近郊の最低賃金は、タイのバンコクを超えており、明らかに他国に比べれば投資の魅力が劣る部分であった。

 しかし、今回のオムニバス法の成立に伴い、最低賃金をはじめとして、ASEANで最も労働者保護が強いと言われる労働法にメスが入った。最低賃金の見直し、解雇規定の見直し、退職金の算定方法見直し、契約社員・アウトソーシングの規定の見直し、社会保険料の政府負担の新設など、企業側からすると改善が見込まれる。

 

 当然ながら、オムニバス法の成立に伴うビジネス環境改善は、日系企業だけに裨益するものではなく、中国・韓国などの他国企業にも裨益する。

 JBIC発表の投資有望国調査では昨年5位から6位に落ちた。インドネシア投資調整庁が発表する2020年外国投資実績ランクでも、3位から4位にランクが落ちた。

 日系企業から見た際のインドネシアは投資国としての魅力が落ちているものの、2020年10月21日に菅首相が就任後初の外遊先としてベトナムとインドネシアを選んだことも記憶に新しいと思う。それだけ日本にとってインドネシアは戦略的パートナーとしても欠くことのできない存在である。

 

 2021年を迎え、人口が2.7億人を超えたインドネシアが世界からも注目されることは言うまでもない。さらに近い将来では、2022年のG20議長国に加え、2023年にはASEAN議長国となり、世界的に見てもインドネシアが注目を集める機会は多くなる。日本とASEANの関係では、日ASEAN友好協力50周年を迎える記念すべく年をインドネシアは議長国として迎える。

 

 ジャカルタ・ジャパン・クラブとしても、インドネシアの外へオムニバス法を正しく丁寧に発信し、日本企業の進出を後押しするとともに、インドネシア政府・経済界とのさらなる関係構築、関係強化に向けて動きを加速させる。

 

                          (ジャカルタ・ジャパン・クラブ 事務局長 富澤 陽一)