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【最新海外事情レポート】いま商工会議所がやらなければならないこと(マレーシア)

 新型コロナウイルスの感染拡大はとどまるところを知らない。11月20日時点では、全世界累計で感染者5,675万人、死者は135万人を上回った(Johns Hopkins University発表)。一方、足許のアセアン地域においては、タイ、ベトナム、シンガポールで概ね収束、フィリピンでは後退、インドネシア、ミャンマーでは横ばいという状況であるが、わが国マレーシアにおいては、一日あたり1,000人前後の新規感染者が続き、累計感染者は51,680人に上り「大きく疲弊はしているが国民が一丸とならなければ拡大を防ぎようがない、リーダーを信頼している。(スタッフ談)」という状況である。上述の後退に向かっているインドネシアでは食品製造業等指定業種の就業人数制限を撤廃、フィリピンではサービス業の同じく人数制限を撤廃、ミャンマーでは縫製業や中小企業の営業再開を認めるなど経済活動再開の動きがみられるものの、マレーシアにおいては活動制限令の地域拡大が続く。ただし、マレーシア政府は地域間の移動、外出を制限する一方、標準作業手順書(SOP)順守と厳しい罰則を条件に、企業活動の継続が許可されていることは評価できる。

 

 これらの感染拡大は経済活動に大きな影響を与え、結果、国としての通信簿である2020年末経済成長率(Bloomberg発表)では、11月20日時点では、ベトナム+2.7%、インドネシア-1.3%という状況であるが、マレーシアは-4.9%という状況である。マレーシアの経済成長率を産業毎にみると、情報通信や建設の分野は元気がある一方、石油、流通、食品の落ち込みが激しい。

 

 マレーシア日本人商工会議所の会員企業においても、特に個人消費に頼る小売店や飲食店の経営環境は厳しく、アセアンの中で複数店舗を経営する日系飲食店は、タイ、ベトナムで黒字転換を果たせているがマレーシアはもう少し時間がかかると話していた。また流通の中でも物流企業は、2020年末経済成長率+2.1%と強権的な感染対策と財政の集中投下により経済回復で先行する中国から全世界に向けての貨物が爆増し、マレーシアに貨物船が寄港しない(スキップする)もしくは寄港してもコンテナ用スペースが少ないなど甚大な影響が出ているとも話していた。

 

 マクロ分野において他アセアン地域から遅れを取るとともに、様々な規制が強まるマレーシアであるが、マレーシア日本人商工会議所の会員である日系企業は依然元気である。マレーシアに限らずアセアン全域において同様であると推察されるが、業の種類や大小に関わらず、マクロ外部環境の脅威に対し、自分の周辺で起こっていることへの「観察力」、情報を組み合わせ構築する「仮説力」、脅威課題そのものを取り除こうとする「行動力」など内部環境の強みは逞しいものがある。先進的な取り組みや政府の動きにどん欲な会員企業も多く、集めた情報を基に新しい会議所の事業を提案する会員企業も多い。特に直近の政府への提言においては、日常的に各省庁の大臣や次官とホットラインを持ちマレーシアに所在する欧米等他国の商工会議所と連携し、例えば、外国人入国時のビジネス事前検査不要(空港到着時のみ)、国際運転免許書の期限延長(自動延長)、外国籍企業への融資制度(個別対応を可能に)、駐在員交代の緩和(ローカル募集ルールの延期)、入国手続き窓口の簡素化(ワンストップセンター創設)、再投資控除の期限延長など、マレーシア日本人商工会議所を通じて規制緩和を実現したものも多い。また、声を大にして経済活動は止めてはならないことを訴え続け、結果、感染拡大の中、いまも一定の条件で経済活動は行えていることは大きい成果であろう。

 

 こういった状況下で商工会議所は、よりその重要性を増し、さらに言えばだからこそ会員を増やしていく余地が十分にある。有事のなかでの商工会議所の役割を再定義すると「集合知」ではないかと考えている。集合知としての機能を強化するためには、商工会議所が得た情報を会員に出す(情報発信スピードの強化)、情報が行き交う環境をつくる(情報発信量の強化)、情報キュレーションにより職員を成長させる(情報発信品質の強化)のステップをふまえ、勝手に情報が交流する仕組みを作っていくことが重要であろう。集合知の実現に向けて商工会議所という個性を活かし特に経営層においては「枠を外す」ということも重要であると考える。日本国内の商工会議所ではあまり経験することがなかった内から外を見る、外の目線で内を見るという行動がマレーシアでは求められる。異文化がマレーシア国内でもアセアンという枠組みでもあまりに近接した環境にあるため常に外を観察し、どう関係していくのかを考えなければならない。新型コロナウイルス感染者数を、国家としてのストレスチェックの対比表として観察しパートナーとしての妥当性を測ると言った会員企業もいた。多くの人間が枠を超えてヒト、モノ、カネを見ているなか、枠の向こうにある資源を繋げていくのは商工会議所が得意とする分野である。国を超えて情報を交換し課題やソリューションをつなげギンギラギンを作っていくことは難しくない。混ざり合いのなかで見える混沌は誰しも好きな筈である。

 

2020年11月20日執筆

 (マレーシア日本人商工会議所 事務局長 田中 大輔)