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【最新海外事情レポート】ドゥテルテ大統領、コロナ禍で就任以来5回目のSONA(施策方針演説)(フィリピン)

 2016年にロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領に就任してから4年が経過した。憲法規定上、フィリピンの大統領任期は1期6年で再選は認められていないため、2022年5月の任期満了まで残り2年を切っている。ドゥテルテ政権は、大規模なインフラ整備を推進する「Build Build Build(ビルド・ビルド・ビルド)」プログラムをはじめとする「主要社会経済政策10項目」を掲げ、歴代の政権には見られなかったスピード感と強固な姿勢で様々な政策を実行している。また、日本から見ると少し強権的・独善的に映るかもしれないが、麻薬・犯罪・汚職の撲滅といった目に見える形での改革も相まって、フィリピン国民からの高支持率を維持してきた。歴代政権は任期後半に入ると支持率が下がりレイムダック(死に体)と揶揄されてきたが、ドゥテルテ政権はこの状態を維持したまま任期満了を迎えるであろうとの見方が強い。

 

 

 経済については閣僚に一任するスタンスをとり、自身は専ら治安改善・貧困対策に注力している印象のドゥテルテ大統領だが、任期後半の総仕上げに向けたこの重要なタイミングで思わぬ難敵が現れた。新型コロナウイルスである。フィリピンにおいては依然として感染拡大の勢いは止まることを知らず、特に足元では急速に状況が悪化しており、8月10日には1日当たりの感染者増加数は6,958人と過去最多を記録し、累計感染者数は同日現在で136,638人に上っている。フィリピン政府は感染拡大防止の観点から、3月中旬以降、厳格なコミュニティ隔離措置を敢行し、世界最長のロックダウン実施国とも言われるように長期間にわたって人々の移動や企業活動を厳しく制限している。一方で経済とのバランスを考慮する観点から隔離措置は段階的に緩和されつつあったが、足元の感染者急増に伴って医療現場は壊滅的な状況に陥っており、フィリピン政府は8月4日から再びマニラ首都圏等の隔離措置の強化に踏み切った。フィリピン政府は隔離措置によって感染拡大を一定程度抑制することができていると胸を張る一方で、経済への影響は深刻かつ甚大である。2020年1~3月期の国内総生産(GDP)は-0.7%と約20年ぶりのマイナス成長に落ち込み、8月6日に発表された4~6月期のGDP(速報値)は-16.5%と過去最悪のマイナス幅となった。2020年通年でも、政府の担当委員会は成長率予測を-2.0%~-3.4%から-5.5%に引き下げるなど、近年6%程度の成長を維持してきたフィリピン経済にとってその影響は計り知れない。

 

 

 7月27日、ドゥテルテ大統領は就任以来5回目のSONA(The State of the Nation Address)、いわゆる施策方針演説に立った。新型コロナウイルス対策については、コミュニティ隔離措置の迅速な実施や貧困世帯・低所得世帯への支援等、政府がこれまで実施してきた各種施策の成果を強調する一方、今後の具体的な対策については不明確な点が目立った。また、経済活動についてはコロナ以前のような状況に戻す段階にはないと慎重な姿勢を示しつつも、政府が推進する重要なインフラプロジェクトをさらに前進させるとともに、中小零細企業や大きなダメージを受けている観光産業への支援強化等について言及した。さらに、企業の事業環境整備として、日系企業が強い懸念を抱いている税制改革(CREATE法案)についても議会に対して早期通過を要請した。

 

ドゥテルテ.jpg演説するドゥテルテ大統領

(出典:フィリピン大統領府広報室ホームページ)

 

  SONAを皮切りとして第18議会が再開されている。来年に入ると2022年の次期大統領選に向けた動きが一気に加速するため、ドゥテルテ政権にとって政策の実行判断を行える期間はそれほど多く残されているわけではない。新型コロナウイルス対策・経済回復はもちろんのこと、演説で自身も強調したインフラ整備や税制改革、農業振興、人材育成、デジタル化対応、外交(南シナ海問題)等があり、さらに中長期的な視点では、地方経済開発や電源・水源・エネルギー源の拡充・確保、環境対策・自然災害対策など、取り組むべき課題は山積している。本人たちは否定しているが、次期大統領の有力候補として娘のサラ・ドゥテルテ氏(現ダバオ市長)の名前が挙がり、次期政権ではドゥテルテ大統領が副大統領に就任し親子で政権中枢を担うという話も現実的なものとして報道されていたが、これもコロナ・ショック前の話。新型コロナウイルスの感染拡大や景気悪化により、冒頭に書いた支持率も下降気味との見方もある。このコロナ・ショックからの復興においていかにドゥテルテ大統領がリーダーシップを発揮し、経済を成長軌道に戻せるかによって、次期大統領、そしてフィリピンの国の方向性は大きく左右されるであろう。ドゥテルテ大統領もSONAで「これまでの成果が試練にさらされ、試されている」と危機感を語ったが、まさにその手腕が試されることになる。

 

サラ2.jpg次期大統領候補のサラ・ドゥテルテ氏

(2019年2月、筆者撮影)

 

<SONAの内容(大統領府広報部ホームページ)>

https://pcoo.gov.ph/presidential-speech/5th-state-of-the-nation-address-of-rodrigo-roa-duterte-president-of-the-philippines-to-the-congress-of-the-philippines/

 

(フィリピン日本人商工会議所 事務局長 杉浦 宏)