トップページ > 政策提言活動 > 会頭コメント > 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会の公益委員見解について(岡村会頭コメント)

会頭コメント

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会の公益委員見解について(岡村会頭コメント)

 今般、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会において、全国平均で15円、全国の都道府県をA,B,C,Dの4つのランクに分けて、すべてのランクで10円(生活保護との乖離解消分を除く)という最低賃金の大幅な引上げ額の目安が示されたことは、誠に遺憾である。

最低賃金法において、最低賃金は、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払い能力、の3つを考慮して定めなければならないとされている。これに関して、厚生労働省の平成22年賃金改定状況調査によると、賃金上昇率は前年比でマイナスであり、法人企業統計によれば、資本金1億円未満の企業の生産性は、低下もしくは停滞傾向にあって、大幅な引上げはこうした実態とかけ離れている。

一方、日本商工会議所が本年5月~6月に実施した「最低賃金に関するアンケート調査」結果によると、最低賃金近辺で雇用している小規模企業の半数が、「最低賃金が10円程度引き上げられると経営に影響が出る」と回答している。最低賃金の引上げについては、まず、こうした影響が出るという小規模企業に対してどのような対策を取るのかを真剣に議論した上で検討すべきである。

 また、雇用戦略対話における合意では、2020年までの目標として「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円を目指すこと」となったが、この目標は、新成長戦略で掲げている「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」が前提であり、中小企業の生産性向上の取り組みや、中小企業支援などが盛り込まれている。これら前提条件が実現せず、施策の実効性がないまま、最低賃金のみが大幅に引上げられれば、経営に影響し、雇用の喪失につながることを懸念している。

 今後開催される地方最低賃金審議会では、地域の企業や働く方々の実態を十分に精査し、真に、それぞれの地域経済の実態を反映した審議が行われることを強く期待する。

以 上