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第17代 日本商工会議所会頭 山口 信夫
「健康な日本」のさらなる飛躍に向けて
  
〜自助・自立の精神で、勇気と積極性をもとう〜

(会頭再任にあたっての所信) 


INDEX 1.はじめに  2.スローガン  3.基本理念  4.これからの取り組みにあたって

 1.はじめに
 平成13年7月、私は日本商工会議所の会頭に就任するにあたり、「『健康な日本』の創造」を提唱いたしました。その中で、私は、わが国が直面している様々な困難や課題を乗り越え、希望に満ちた日本を築いていくこと、そして、大企業は言うまでもなく、多くの人々の仕事と暮らしを支える中小企業が本来の力を発揮していただくことが重要であると訴え、そのために、最大限の努力をする決意を表明しました。
 当時は、折りしも政府が、小泉内閣の下で経済構造改革をスタートさせた年でありました。経済構造改革は、強い日本経済の枠組みをつくり、新たな発展を遂げていくためには避けて通れないことではあります。しかしながら、変革には摩擦が伴うのが常であり、それを急ぐあまり地域経済や中小企業に過度のダメージを与えてしまっては意味がなく、国益にも合致しません。従って、構造改革を成功させるためにも、そして将来を支える有望な中小企業の成長の芽を摘まないためにも、私は会頭として、政府・与党に対して機動的な経済運営と、改革に伴う痛みを必要最小限にとどめる措置(セーフティネット)の整備を、強く主張してまいりました。

 今、就任後3年4ヶ月が過ぎようとしています。最近になってようやく景気は回復基調にあるとはいえ、依然としてデフレから脱却しておらず、回復の広がりが地域経済や中小企業にあまねく及んでいる状況にはありません。しかも原油価格の高騰に加え、米国や中国の海外景気も先行き不透明感を増しています。さらには、年金保険料の負担増や増税などから消費の落ち込みが懸念されます。
 一方、社会に目を転じますと、少子高齢化の急速な進展の中で、国民の多くは社会保障など将来に対して大きな不安を抱いているとともに、日本人本来の価値観が失われつつあります。特に、教育の荒廃、犯罪の多発、それに我々が何よりも大事にしなくてはならない家族愛と地域愛の希薄化、伝統文化の寂れなどの現象もあらわれています。

 そこで改めて強調したいのは、全企業数の99.7%、雇用者数の70%を占める中小企業の健全な発展なくして、わが国経済の自律的な成長と社会の安定はありえないということであります。大企業の存在も中小企業によって支えられています。従って、会員の大多数が中小企業で占められる我々商工会議所の大きな使命は、中小企業の体質強化とその成長のための環境整備であることを、肝に銘じなければなりません。 
 我々を取り巻く環境にはまだまだ厳しいものがあります。しかし、中小企業の持つダイナミズムとバイタリティーが存分に発揮されれば、私の提唱する「健康な日本」の実現は可能であると確信しています。そのために、私としては引き続き政府・与党に対して、景気対策を含め国が取り組むべき施策を提言し、強力に要望活動を行っていく所存であります。しかし、要望するだけでなく、我々自らが自助・自立の精神で、勇気と積極性をもって行動していくことが前提であることは当然であります。


 2.スローガン
 私はこれまでのスローガンをさらに一歩進め、次のとおりといたします。

「健康な日本」のさらなる飛躍に向けて

〜自助・自立の精神で、勇気と積極性をもとう


 3.基本理念
 私が提唱する「健康な日本」のキーワードは、次の言葉によって集約されます。

 @だれもが安心して、心豊かに暮らせる社会
 Aよく働き、よく生きることが評価される社会
 B中小企業が元気で、まちに活気があふれている社会
 C美しい文化・風土のなかで、人びとが信頼し合える社会
 Dそこに生きてよかったと思える、誇りの持てる社会

 
 この5つの「社会」は「健康な日本」の原点でもあります。
 そこで、そのために、次のように行動します。

 @中小企業の強みを活かし、知恵と力の連携が生きる、「健康な経済」を創る。
 A郷土の夢を育て、だれもが参加できる、「健康な地域」を創る。
 B自在に発想し、果敢に挑戦し続ける、「健康な人材」を創る。
 C豊かな自然を愛し、文化を語り継げる、「健康な環境」を創る。
 D隣人が信頼でき、ともに助け合える、「健康な社会」を創る。


 4.これからの取り組みにあたって
 これからも激しく変化する国際経済社会の中で、「健康な日本」のさらなる飛躍に向けて取り組むにあたり、その基本的な考え方は特に次の4つであります。

 第1は、人口減少に歯止めをかけたいということです。人口が減少して栄えた国はありません。
 日本商工会議所は、この問題を今年の夏季政策アピールで提起したところ、大きな反響を得ました。そこで「健康な日本」をめざす具体策の第1として、この問題に真正面から取り組み、単に政策提言するだけでなく、出産・子育てにやさしい経済社会をつくることを、我々の運動として積極的に進めていくこととしました。また、企業としてできることを自ら実行していくことは、企業の社会的責任でもあると言えましょう。
 若者たちが安心して子供をつくり、その子供たちをたくましく育て、この国の新たな担い手とすることに誇りを持つような国にしていくことが何よりも重要であります。

 第2は、活力があり、誇りをもてるようなまちづくりを進めるということであります。
 今、国と地方の役割が見直されていますが、これを契機に、それぞれの地域がユニークで、独自の個性を持つようになることが求められています。しかし、現状は中心市街地の空洞化問題や地場産業の低迷などの難問が山積しています。
 そのためにはまず、事業を相続する若者が希望をもてるような事業承継税制の確立や、大型店との共生問題などを解決し、さらには他地域に出た若者も戻ってきて親のつくった事業を受け継ぎ、自らの力で事業をさらに発展させ、その地域に住む人が誇りをもてるようなまちづくりを積極的に推進していきたいと思っています。
 これによって、地域の大事な文化や歴史が守られ、高齢者にもやさしい街に戻り、「健康な日本」の裾野が次々と広がるきっかけになるでしょう。

 第3は、勇気をもって創業や企業革新を志すビジネスリーダーを積極的に発掘・支援していくということであります。
 日本経済の活性化のためには、企業再生だけでなく、一方で新たな産業や新たな市場をつくり出すことが不可欠であることは言うまでもありません。
 日本商工会議所では、各地商工会議所との共催により、創業塾や、経営革新・新事業展開を支援する第二創業セミナーを全国で実施しておりますが、引き続き強力に支援してまいります。また、既に一部の商工会議所では、勇気をもって事業の創造を実現している中小企業経営者を顕彰しています。このような取り組みが全国に広がって、革新的でスピードを重視するビジネスリーダーの多くの発掘につながり、その人たちが核になって、「健康な日本」の担い手となってもらうことが重要であると考えます。

 第4は、商工会議所のさらなる活性化と、組織・財政基盤の強化であります。
 率直に申し上げて、いま、商工会議所は長い歴史に安住して改革の気概を失っている部分があるのではないかという危惧を覚えます。そこで、「健康な日本」をさらに飛躍させる中心的な存在になるために、商工会議所はどうすればいいのか、ということを原点に立ち返って再確認し、行動に移していかなければなりません。
 私は就任以来、できる限り全国各地を訪問するとともに、会頭・ 副会頭会議や議員総会の活性化、他団体との連携強化などをはかってまいりました。今後は、さらにまちづくりや中小企業施策をはじめとする政策提言力とその実現力を高めていきたいと思います。
 そして、これらを実効あらしめるためには、組織の強化・拡大と、財政基盤の確立が大事であります。そのため、私は皆さんとともに力を合わせ、魅力ある商工会議所づくりに励み、なお一層信頼される日本商工会議所となるよう全力をあげて努力する所存であります。

以 上

平成16年11月18日
山 口 信 夫


「健康な日本」の創造〜行動しよう、乗り越えよう、明るい未来へ〜
(会頭就任にあたっての所信)
日本商工会議所

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