02.10.30 政府の総合デフレ対策に対するコメント


   
 1. 現在のわが国の重要な政策目標は経済の再生・再建である。不良債権処理やその他の構造改革は、この目標を達成する上で必要な手段の一つである。従って、不良債権処理の加速ばかりを先行させ、その結果、貸し渋りや貸し剥しを助長して中小企業の倒産や失業を増やし、一層デフレを促進して景気をさらに悪化させないよう万全の対策を準備していただきたい。何よりも景気が回復しなければ、不良債権は減るどころか新たに発生し、結果として処理の実効が上がらないことになる。従って直接の目的である金融システムの安定化も実現しない。その意味で今回、金融・産業再生策とデフレ対策が一体的にとりまとめられたこと自体は評価できる。「産業再生機構」の創設も企業の再建に有力な手段になるだろう。
   また、日銀が同時に追加的な金融緩和に踏み切ったことを歓迎する。

2. ただ、デフレ対策の中味をみると、総需要を喚起するには、総じて力不足の感は否めない。我々が何度も指摘しているように、いまの不況の主たる原因は需要不足にある。民間需要の盛り上がりが期待できない現状では、政府支出すなわち財政が経済を支えていく以外に方法がない。

3. また、とりわけ不良債権処理を加速する局面では、民間金融機関の融資態度が慎重にならざるを得ないので、特に中小企業や雇用の面では格別の配慮が必要である。このため、必要な補正予算措置を伴った金融面、雇用面のセーフティーネットの整備に万全を期してもらいたい。将来の日本を支え、生き延びるべき健全な中小企業が犠牲を強いられるのを座視できない。

4. もとより構造改革が将来の日本にとって不可欠の課題であることは、誰しも否定しない。ただ、実行すべき政策の順序に誤りなきを期してもらいたい。いま大事なのは、経済が非常事態にあるという認識を政府・日銀が共有し、需要創出のために財政、税制、金融のあらゆる政策手段を総動員してデフレスパイラルを断ち切り、なんとしても景気を自律的な回復軌道に乗せることである。それが構造改革を成功に導く近道である。

5. 従って政府としては、先行減税の前倒し実施と相当踏み込んだ補正予算の編成など、小出しにすることなく、真に総合的な思い切ったデフレ対策を至急実行してもらいたい。日本経済が置かれた現状では、もはや国債発行30兆円の枠に固執する意味はない。総理の英断を強く期待する。
 

以上



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