衆議院議員選挙結果について

 1.選挙前の内閣支持率が低下していたことを考えれば、自民党がややのび悩んだのは残念だがやむを得ない。むしろよく善戦したとも言えるだろう。与党3党にとっても厳しい結果となったが、3党連立の枠組みは辛うじて信任されたとみるべきだろう。
 ただ、今回の総選挙が政権の枠組みを問う選挙であったことを考えれば、有権者が政治の現状には必ずしも満足していないという点は認めるべきではないか。3年ぶりに経済をプラスに転換させたのは連立与党の成果として評価すべきだが、一方で反省を求められた選挙だったということである。
 しかしながら、野党も新たな政権の枠組みを明確に示せなかったのだから、与党への批判票の受け皿にはなったが、必ずしも政策が信任されたとは言い切れない。
 いずれにしても、21世紀初頭における日本の国の形と方向を決める大事な局面を迎えているだけに、政治の停滞は許されない。いたずらに党利党略に傾斜することは慎むべきであり、自民党も党内の結束を固めるべきである。政治は国難に臨む決意を示してもらいたい。

 2.新政権には、まず経済がまだ自律的な回復軌道に乗るに至っていない現状を直視して もらいたい。国民の将来への不安が解消しない限り、消費の拡大は望めないだろう。財政の悪化は将来の国民負担として跳ね返ってくることを国民は見通しているからである。 大変難しい舵取りだが、景気回復や経済の再生をどうすすめるのか、財政改革のためにどんなビジョンを描くのか、永続性ある社会保障制度をどう構築していくのかなど、山積する問題を着実に解決に導く政治のリーダーシップが問われる重要な局面である。景気浮揚と併せ、いずれ財政再建に着手しなければならないことがはっきりしている以上、我々は強力な安定した政権を強く望んでいる。また、20世紀最後のサミットに議長国として臨む責任も重い。

 3.なお、今回の選挙戦を通じて感じた点の一つが選挙制度である。小選挙区制度は基本 的に政権交代可能な2大政党政治をめざすものであったはずだが、比例代表制と並立さ せたために小政党も生き残ることになった。また、政策を選択する制度をめざしているにもかかわらず、現在の政党をみると、同じ党内に異なる理念が混在し、政党間の対立軸や争点が明確に浮き彫りにされない印象が残った。今後、衆院の選挙制度のあり方を議論する必要があると同時に、最大2.47倍にまで拡大している1票の格差是正の問題にも民主主義の重要なテーマとして取り組んでもらいたい。
 また、いわゆる二世議員の中にも政治家として立派な方々が数多くいるのは承知して いるが、与野党を通じて議席が世襲される傾向が近年特に高まっているのもやや気にな る傾向である。

                                 

以 上
                                 



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