当面のデフレ対策等に関する要望


平成14年6月12日

日本商工会議所                        
会 頭 山 口 信 夫
全国商工会連合会                     
会 長 萩 原 善之助
全国中小企業団体中央会           
会 長 大河内 信 行
全国商店街振興組合連合会        
理事長 小野寺 一 夫


 わが国経済について、政府は、5月の月例経済報告で景気が底入れしているとの判断を示しているが、企業の設備投資や個人消費は依然として冷え込んでおり、足元の景況は、引き続き大変厳しく、底入れして上昇に転じる状況ではない。特に、中小企業は、デフレ経済の進展や、地域産業の空洞化などに直面し、努力の限界を超えた非常に厳しい経営を余儀なくされており、底入れを実感するには至っておらず、まさに危機的状況が続いている。

 中小企業がその活力を十分に発揮し、わが国経済が内需中心に持続的な発展を遂げるためには、まずは、本格的な景気回復を図ることが必要である。政府・与党においては、6月中旬を目途に、第二次デフレ対策をまとめるとのことであるが、景気回復を図るためには今が正念場であることから、景気の底入れ感に安心することなく、直ちにデフレ克服のための措置を講じ、下記の要望事項の実現に取り組まれるよう、強く要望する。




1.デフレ克服のための柔軟かつ大胆な経済運営と税制上の緊急特別措置の実現について

 現在のデフレの最大の原因は需要不足にあることから、税・財政、金融などあらゆる政策を総動員して消費や投資を刺激し、総需要を喚起するための措置を講じることが必要である。特に税制は、新たな消費や投資を呼び起こすための重要な手段である。政府・与党においては、現在、税制抜本改革に関する議論を進めているが、現下の厳しいわが国経済を立て直すためには、税制面からの支援が欠かせない。このため、抜本改革に先立ち、以下の税制措置を緊急に講じるとともに、財政についても、国債30兆円枠にとらわれることなく、追加の財政支出も視野にいれた柔軟かつ大胆な経済運営を図られたい(税制上の緊急特別措置の詳細は、別紙1「デフレ克服のための税制上の緊急特別措置について」を参照)。

(1)住宅取得・消費促進のための贈与税の活用
(2)住宅投資減税の拡充
(3)不動産流動化・都市再生等のための税制措置
(4)設備投資・研究開発促進のための税制措置の拡充等
(5)ベンチャー・新規創業支援のための税制措置の拡充
(6)交際費の損金算入枠の拡大

2.法人事業税への外形標準課税の導入には絶対反対

 法人事業税への賃金・資本金等を課税標準とする外形標準課税の導入は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐため、諸外国でも廃止の方向にある。また国際競争力上大きなマイナスになるため、生産拠点の海外移転などわが国産業の空洞化を一層促進させることになる。さらに、担税力が低く、日々の資金繰りすら困難な、中小企業の7割を超える欠損法人に対して、到底負担できないような重税が課され、加えて、黒字中小企業であっても、そのほとんどは大幅増税となる。こうしたことから、この導入には絶対反対である。

 また、地方自治体の財政安定化が外形標準課税を導入すべき理由にあげられているが、法人事業税は長年にわたり、所得を課税標準とする応能税であったにもかかわらず、税収が景気変動に左右される状況を背景に、応益の観点から法人事業税に外形標準課税を導入すべきであると主張することは理解できない。地方自治体の行財政改革が徹底されているとは到底言い難い状況にあって、最初に財政安定化ありきでは納税者として納得できるものではない。

 さらに、最近「税の空洞化」として、あたかも全体の7割を占める赤字法人が税を全く払っていないかのような論調があるが、地方税において、法人が行政サービスの対価として負担する所得外課税(法人住民税均等割・固定資産税等)6.4兆円のうち、赤字法人の負担はすでに4.5兆円にも達している。つまり、問題は、むしろ都道府県と市町村の間の法人課税の税源配分の偏りにある。したがって、都道府県と市町村の、さらには国と地方の財源配分を変えるなど、国・地方を通じた税体系を見直すことが先決である。

 まずは、納税者が納得できる行財政改革を徹底的に行うことが前提であり、安易な税制の見直しによる税収確保に方策を求めるべきではない。

3.消費税の免税点制度および簡易課税制度の維持存続について

 消費税が導入される際に、年間課税売上高3,000万円以下の事業者は、免税事業者とされ、消費税を納める義務が免除されている。その理由は、そもそも中小事業者、なかんずく小規模零細事業者は消費税の価格への転嫁が困難であること、それに加えて事務負担の軽減や徴税コストの観点から設けられたものである。また、あわせて、事業者の事務負担を軽減するために、仕入れに係る消費税額の控除について、課税売上高の一定の比率を仕入れとみなしての控除を選択的に認める簡易課税制度が導入された。

 免税点制度および簡易課税制度について、対象事業者にあたかも多額の「益税」が発生しているのではないかとの観点から、制度を縮小・廃止すべきであるとの考え方がある。しかし、「益税」が発生しているというのは実態から遊離した誤解に基づく主張である。デフレ経済が進展し、価格競争が激化している中にあって、小規模零細事業者である免税事業者は、仕入れに係る消費税分の価格転嫁がより困難になっており、いわゆる「益税」どころか、むしろ「損税」となっている。また、簡易課税制度について、これまでの二度にわたる見直しの結果、みなし仕入れ率は細分化され、ほぼ実態にあったものとなっている。

 したがって、小規模零細事業者等の経営に重大な悪影響を及ぼすことから、現行の免税点制度および簡易課税制度は、維持存続すべきである(別紙2「消費税の免税点制度および簡易課税制度の維持存続について」を参照)。

4.政府系中小企業金融機関の改革論議の当面凍結について

 民間金融機関の不良債権処理に伴い、中小企業に対する「貸し渋り」、「貸し剥がし」が強まり、中小企業を取り巻く金融環境は非常に厳しくなっている。中小企業が現下の厳しい経営環境を克服するためには、円滑な資金調達の実現が必要不可欠であり、今こそ、金融セーフティネット機能の整備が大いに求められるところである。このため、経済財政諮問会議等において行われている政府系中小企業金融機関の改革論議は、当面、凍結すべきである。

以 上


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