経済再生・活性化のための緊急の税制改革に関する要望


平成14年2月27日
日 本 商 工 会 議 所


 わが国経済は、デフレ・スパイラルの様相がますます強まっており、極めて深刻な状況にある。経済を持続的成長軌道に乗せるため、構造改革が不可欠であることは十分認識しているが、景気の悪化が改革の足枷になっており、改革を成功に導くためには、まず経済を安定させることである。
 現下の不況の最大原因は、需要不足である。政府・与党におかれては、税・財政、金融などあらゆる政策を総動員して、総需要を喚起しデフレを阻止することが先決である。とりわけ税制は、新たな消費や投資を呼び起こすために残された極めて有効な手段である。ついては、わが国経済の再生・活性化を図るため、緊急に、下記の税制措置を実現されたい。


T 緊急の景気対策にかかる要望
1.住宅取得・消費促進のための贈与税の活用

 個人金融資産は1,400兆円に及ぶと言われているが、その大部分は高齢者に偏在しており、こうした高齢者層の個人金融資産を若年・中堅層に移転させることによって、雇用を含めて経済波及効果が極めて大きい住宅投資や個人消費の拡大等、大規模な需要創出効果が期待できる。
 また、住宅投資は、そのほとんどが個人の資金であることと、住宅建設によって税収の純増が期待できることも忘れてはならない。

(1)住宅取得資金等の贈与に対する特例の拡充
 現在、住宅取得資金等を贈与する際には、特例として550万円の非課税枠が設けられているが、これを3,000万円まで拡大すべきである。

(2)消費刺激策としての基礎控除額の引き上げ
 上記(1)に加え、時限的な措置として、贈与税の基礎控除額を相続税の法定相続人一人あたりの基礎控除額である1,000万円まで引き上げ、高齢者から若年・中堅世代への資金移転を容易にすべきである(使途は問わない)。なお、この措置の適用を受けた場合には、相続の際の基礎控除額から贈与相当額を減額する。


2.住宅投資減税の拡充

(1)現行住宅ローン税額控除制度の拡充
 現行の住宅ローン税額控除制度について、セカンドハウスを取得する場合や転勤者が再び対象家屋を居住の用に供した場合にも適用すべきである。また、所得要件(現行3,000万円)を撤廃する。あわせて、増改築・リフォームにかかるローン期間要件(現行10年以上)を3年以上に短縮し、良質な住宅ストックの拡充を図るべきである。

(2)住宅ローン利子所得控除制度の創設
 住宅ローンの支払利子を所得から控除する住宅ローン利子の所得控除制度を創設する。控除可能期間は住宅ローン借り入れ期間とする。なお、新制度は現行住宅ローン減税制度との選択適用とする。


3.不動産流動化・都市再生等のための税制措置

 わが国の不動産税制には、バブル期までの一貫した地価上昇を背景に、投資抑制を目的とする税制が依然として残っており、デフレからの脱却を図るためにも、早急な見直しが求められる。また、都市再生を促進する観点から、不動産の有効利用と土地の流動化を図るための税制措置が必要である。

(1)不動産流通税等の見直し
 不動産の流動化等を促進する観点から、以下の税目について、廃止・軽減を図るべきである。
 1) 登録免許税の手数料程度への引き下げ
 2) 不動産取得税の廃止
 3) 特別土地保有税の廃止
 4) 事業所税の廃止

(2)固定資産税の負担水準の適正化
 過度に税負担が重くなっている固定資産税について、評価方法の改善や税率の引き下げ等による抜本的な税負担の軽減措置を構ずるべきである。

(3)土地の有効利用・都市再生のための税制
 土地の有効利用を通じた都市再生に資する税制措置を講ずることが必要である。
 1) 法人の譲渡益課税重課制度(現在課税停止中)の恒久的廃止
 2) 個人の土地の長期譲渡所得課税の税率(国・地方合わせて26%の一律分離課税)の軽減
 3) 事業用資産の買い換え特例の繰延べ割合(現行80%)の100%への引き上げ
 4) 今国会での成立が見込まれている「都市再生特別措置法」に基づき国土交通大臣の認定を受けた「都市再生事業」に対する税制上の特例措置の創設


4.設備投資促進のための税制措置の拡充

 現在、中小企業については、包括的な措置として、「中小企業投資促進税制」があるが、中小企業のさらなる設備投資を促すため、同制度における特別措置(7%税額控除または30%特別償却の選択適用)の税額控除率および特別償却率を引き上げることが必要である。
 また、大企業については、投資額の一定割合を税額控除する制度を創設すべきである。


5.ベンチャー・新規創業支援のための税制措置の拡充

 わが国経済の活力を将来にわたって維持・強化していくためには、ベンチャー・新規創業企業の存在が極めて重要であり、税制面からも支援が必要である。

(1)現行エンジェル税制について、ベンチャー企業への投資ロスと他の所得との損益通算を認めるとともに、繰越控除(現行3年)を5年へ延長する等の措置を講ずるべきである。

(2)ベンチャーキャピタルが創業後一定期間内の企業に対して行う出資額の一定割合について所得控除を認めるべきである。



U 中小企業の活力維持・強化に関する当面の要望
1.法人事業税への外形標準課税導入には絶対反対

 法人事業税への賃金・資本金等を課税標準とする外形標準課税の導入は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐおそれがある。また、担税力のない赤字法人や収益性の低い中小企業への課税強化となるほか、ベンチャー企業等新規開業支援に逆行する。さらには諸外国でも「雇用、競争力に悪影響がある」として廃止の方向にあるものである。こうしたことから、この導入には絶対反対である。
 なお、最近、「税の空洞化」として、あたかも全体の7割を占める赤字法人が税を全く払っていないかのような論調があるが、赤字・黒字関係なく、法人が所得以外の外形的な基準で負担する地方税(法人住民税均等割・固定資産税等)は合計約6兆円にも及んでいることに十分留意すべきである。


2.同族会社の留保金課税制度の全面的廃止

 同族会社の留保金課税制度については、設立後10年以内の中小企業者等に関しては適用停止となっているのに加え、平成14年度改正では、停止対象者の拡大および中小法人に対する課税減額措置の創設といった内容が盛り込まれる予定となっている。
 しかしながら、そもそも留保金課税は、中小企業にとって経営基盤の強化と新規事業展開等、企業活力の再生を図るために必要な内部留保の拡充を阻害するものとなっている。また、法人税率と所得税最高税率との格差が大幅に縮小されている今日、もはや留保金課税の存在意義は失われたと言わざるを得ない。したがって、同制度については全面的に廃止すべきである。


3.抜本的な事業承継税制の確立

 事業承継に関わる税制措置については、近年、累次の改正により改善の方向にある。特に、平成14年度改正では、取引相場のない株式等について、一定の要件のもと、初めて相続税の課税価額の減額措置が講じられることとなったところである。
 しかしながら、中小企業の「事業体」としての継続・発展は、わが国経済の活性化・構造改革の進展のために極めて重要であり、より円滑な事業承継が可能となるよう、抜本的な事業承継税制の確立が必要である。

以 上


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