「法人事業税への外形標準課税導入に改めて反対する」

平成12年2月16日
日本商工会議所
全国商工会連合会
全国中小企業団体中央会
全国商店街振興組合連合会


  法人事業税への外形標準課税の導入については、昨年末に発表された政府税制調査会「平成12年度の税制改正に関する答申」において、早期導入を目指す旨が明記された。
  政府税制調査会答申において関係者の活発な議論が求められていることも踏まえ、かねてからその導入に反対を主張していた、われわれ中小企業関係団体としては、従来より一歩踏み込んだ形で導入の方向性に関して記述されたことは極めて遺憾であり、現時点で改めて、下記の理由により、外形標準課税の導入には絶対に反対である旨を表明する。
  また、地方自治体の財政安定化が外形標準課税を導入すべきとする理由の一つにあげられているが、最初に安定化ありきでは地方行政事務の合理化への努力に水を差し、本末転倒となりかねない。まずは納税者が納得できる行財政改革を徹底的に行うことが前提であり、安易に税制の見直しによる税収確保の方策を求めるべきではない。今後、景気回復が確実になった段階で、税の自然増収や行財政改革による経費節減効果を明らかにし、そのうえで、地方分権の推移を見つつ、わが国税制の中長期的課題である直間比率の見直しを含めた税体系の抜本的見直しを行うなかで、国・地方を含めた総合的税体系の再構築を行うべきである。


T 法人事業税へ外形標準課税を導入すること自体による問題点

(1) 制度上の問題点 @  経済のグローバル化の一層の進展によって生じる世界的な大競争時代に対応するためには、「雇用と投資」を拡大させる税制が必要である。賃金、固定資産等を課税標準に採用する外形標準課税は、企業の雇用や投資活動に抑制的に作用し、企業に固定費負担が重くのしかかるため、経済活力を削ぐ恐れがある。
A  国境税調整が難しく、輸入品との価格競争において劣位に置かれてしまうとともに、生産拠点の海外移転などわが国産業の空洞化を一層促進させる。それは、内外の企業にとって活動しやすい事業環境の整備を図ろうとする法人課税改革の基本的理念と矛盾する。
B  外形標準課税は、ドイツやフランスでは企業の雇用や投資活動に抑制的に作用すること等から廃止や見直しの方向にあるとともに、外形標準課税の典型例として頻繁に引用される米国ミシガン州の単一事業税についてさえ、昨年、州知事は廃止法案に署名した。これら諸外国の動向からも外形標準課税の導入は国際的な潮流に反する。
C  賃金や支払利子等の範囲・基準のとり方によっては、課税標準の確定等をめぐって企業と税務当局とのトラブルの発生が予想されるなど、徴税・納税コストが増大する恐れがあるとともに、結果として、企業間で税負担の不公平が生じかねない。
D  原則として所得を課税標準とする現行制度から外形課税標準への切り換えは、業種、企業規模や地域間で税負担の大幅な変動が生じる恐れが極めて大きい。

(2) 赤字法人や中小企業にとっての問題点 @  約160万の赤字法人(うち99%は中小法人)は、既に地方税として法人住民税(均等割)や固定資産税等を負担している。外形標準課税はこれら赤字法人に対し、新たな税負担を生じさせることとなるとともに、収益性の低い多くの中小黒字法人においても増税となる恐れが強く、極めて多くの中小企業にとって課税強化となる。
A  ベンチャー企業など新規創業企業は、設立当初は所得がないのが通常であり、また企業の成長・発展のために資本蓄積を必要としている。外形標準課税はそうした新規創業企業の税負担を増大させ、その成長・発展を阻害しかねない。これは、ベンチャー企業など日本経済をけん引する新規創業企業を支援することで産業再生を図るという政府の方針に逆行する。

(3) 応益課税の観点からの問題点   応益課税としては、既に赤字法人も含めて、法人住民税(均等割)や固定資産税等を負担しており、それらに加えて外形標準課税を課すのは、既存の応益課税との関係から明らかな二重負担となる。

U 「政府税制調査会・地方法人課税小委員会報告」(平成11年7月)の記述内容についての問題点 1.外形基準の4類型について
(1) 事業活動によって生み出された価値(事業活動価値(仮称))
    ※この事業活動価値は、利潤(所得)、給与総額、支払利子および賃借料の合計
@  事業活動価値のかなりの部分を賃金、固定資産等が占めることから、企業の雇用や投資活動に抑制的に作用し、経済活力を削ぐ恐れがある。
A  所得金額の割合では中小企業と大企業が4対6であるのに対して、この事業活動価値では逆に6対4との試算があり、事業活動価値での課税は所得の少ない割に全体の事業活動価値の多い中小企業にとって過重な税負担を強いるものとなる。
B  給与総額、支払利子や賃借料の範囲・基準によっては資料作成が新たに必要となって企業の納税事務負担が増大し、税制が目指す「簡素」に逆行してしまう。

(2) 給与総額 @  人件費抑制に働くことから雇用縮小につながる恐れが強い。また、一般的に労働集約的である中小企業の税負担が大きくなる。
A  社宅等の福利厚生に係る経済的利益(フリンジベネフィット)の扱いをどうするかなど、給与のとり方・定義があいまいであり、課税標準の算定のために企業の納税事務コストが増大することが危惧される。
B  所得金額の割合では中小企業と大企業が4対6であるのに対して、給与額では逆に6対4との試算があり、給与総額での課税は所得の少ない割に全体の給与額の多い中小企業にとって過重な税負担を強いるものとなる。また、売上高に占める人件費の割合は、中小企業では大企業のほぼ2倍となっており、新たな税負担は利益の薄い中小企業の経営を圧迫するものとなる。

(3) 物的基準と人的基準の組合せ(例えば、事業所家屋床面積に給与総額を加えたもの) @  固定資産である事業所家屋の床面積を課税標準とすると、企業の投資活動に抑制的に作用し、経済活力を削ぐ恐れがある。
A  事業所家屋床面積については、業種ごとの差が大きく、税負担の不公平が生じてしまう。
B  給与総額については上記(2)と同様。

(4) 資本等の金額 @  資本金に対する課税は、中小企業の経営基盤の強化のための資本の蓄積を阻害し、中小企業の財務体質の向上にマイナスとなる。
A  ベンチャー企業など新規創業企業は、設立当初は所得がないのが通常であり、また企業の成長・発展のために資本蓄積を必要としているが、そうした新規創業企業の税負担を増大させ、資本蓄積を阻害することとなり、成長・発展にマイナスとなる。

2.「中小法人への配慮」について
 同小委員会報告では、「外形標準課税導入の際には、中小法人に対する一定の配慮を行うことが必要ではないか」として、「所得基準による課税と外形基準による課税とを併用する」ことが例示されている。
 しかし、併用であっても、担税力のない赤字法人等への課税強化は明らかであるほか、「欠損金の繰越控除制度を適用する前のものとするのが適当」としている「所得基準」の算定方法の変更は課税ベース拡大に他ならない。さらに、基準の併用は税制の複雑化をもたらし明らかな事務負担増になるなど、いずれも中小法人への配慮になっていないと言わざるをえない。

以 上


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