大規模小売店舗立地法指針見直し問題に関する意見

 

平成16年10月5日

日本商工会議所

 

「まちづくり3法」(大店立地法・中心市街地活性化法・改正都市計画法)の制定時の期待に反し、全国の中心市街地は衰退の傾向を強めている。大規模な農地転用や無秩序な郊外開発によって、大型店などの大規模集客施設の郊外立地が進み、これらは、空き店舗の増加といった空洞化問題のみならず、コミュニテイの衰退、伝統・文化の継承の困難、青少年問題の深刻化、高齢者の生活の不便増大など、社会問題をもたらす大きな要因の一つと考えられる。

 

先般、当所を含む中小企業4団体(日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会)が取りまとめた「まちづくりに関する要望」(平成16年7月26日)において指摘したように、急速な少子高齢化の中でまちづくりを進めるためには、大規模集客施設の立地に関する広域調整の仕組みの創設や、タテ割り行政を排した、都市と農村を通じて公共的見地に立ったゾーニングが可能となる計画的な土地利用制度の確立など、現行3法の総合的・抜本的な見直しが最大の課題であり、早急な対応が必要になっている。

 

3法の一つの大店立地法に基づく指針問題は、見直し期限が定まっているものだが、技術的な問題への対応のみに止まったり、肝心の3法の総合的・抜本的な見直しがおざなりになるようなことは絶対に回避すべきである。今般、当所は各地商工会議所からの要望を踏まえて大店立地法指針見直し問題に関する意見を下記の通り取りまとめた。産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会商業部会合同会議において、本意見を踏まえた審議が行われるよう求めるとともに、上記抜本問題の検討の重要性について留意されるよう改めて訴える。

 

なお、当所としては、本指針見直し問題、及びまちづくり3法の総合的・抜本的見直し問題に関し、今後とも必要に応じ、追加的に意見を述べていく予定であることを申し添える。

 

 

T.指針に新たに追加すべき事項 

 

<「一 大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき基本的な事項」について>

 

1.「生活環境」の概念の拡大

法第4条に基づき、経済産業大臣が、周辺地域の「生活環境」の保持を通じた小売業の健全な発達を図る観点から、設置者が配慮すべき事項として定めた指針の内容は、駐車需要の充足や騒音の発生防止など極めて限定されたものとなっている。

しかし現実には、大型店の郊外立地の影響により中心市街地が衰退し、これに伴い、コミュニティが失われ、伝統・文化の継承が困難となったり、治安や青少年問題が深刻化し、また、高齢者が日常生活の不便を強いられる等、様々な社会問題が増大している。また、都市機能のスプロール化により既成市街地への官民投資が無駄になったり、大規模な農地転用や無秩序な郊外開発によって、良好な農地や田園景観が失われつつある。さらに、競争激化を背景とした店舗の大型化は、市町村域や県をまたいで広範な地域に同様の影響を与えている。

他方、大型店が撤退すれば、中心市街地でも郊外でも地域住民の購買活動に支障をきたすとともに、雇用や税収も喪失する等、やはり社会問題を引き起こしている。

このため、本来であれば、法第4条を改正し、「生活環境」の内容を実態に合わせたものとすべきであるが、当面の措置として、まちづくりと生活者の利益の視点から、指針における生活環境の概念を実態に即して見直し、拡大すべきである。

 

2.「地域づくり・街づくりに関する各種公的な計画・事業」の内容の明確化

平成11年5月の産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会流通小委員会合同会議答申において、「『地域づくり・街づくり』のビジョンを公定力をもった規範として作用させるためには、都市計画法等のいわゆるゾーニング的手法を活用することが不可欠である」との認識が示されているところである。

しかしながら、近年の大型店の出店構想をみると、都市計画区域外農地、市街化調整区域内農地、工場団地、工場跡地、土地区画整理事業区域内高度医療拠点地区など、都市計画法や都市計画マスタープランなどが本来意図しない地域への無秩序な立地が数多く行われている。また、これら大型店の立地による影響は、当該市町村に止まらず、周辺市町村のまちづくりにも大きな影響を与える。

このため、「立地地点周辺の状況、地域づくり・街づくりに関する各種公的な計画・事業」には、立地地域はもとより影響が及ぶと考えられる地域の中心市街地活性化法に基づく基本計画・TMO構想、都市計画法に基づく都道府県・市町村マスタープラン、まちづくり条例などが含まれることを明記すべきである。また、現在、全国的に見られる無秩序な立地や周辺市町村のまちづくりに大きな影響を与える立地が行われないようにする仕組みを、大店立地法にも設けるべきである。

 

3.「地域との共生によるまちづくり」の明記

コミュニティの再生を図るためには、住民、事業者、行政などが連携・協力し、それぞれの立場で社会的責任を果たすことが不可欠である。このため、「大型店と地域との共生によるまちづくり」への配慮に関する項目を新設し、設置者に対して、まちづくりを進める商工会議所、TMO等の組織への加入や、地域におけるインフラ整備、防犯・防災活動、歴史的・文化的なイベントなどのまちづくり活動に積極的に参加・協力するとともに、地域社会と共生しながら、地域の慣習、伝統・文化に沿った形でビジネスを行うことを求めるべきである。

このため、大型店の社会的責任を担保する仕組みとして、設置者に対し、出店計画の概要等と併せて、マニフェスト(地域貢献や退店の影響を緩和する措置を含む各種対策の内容を記した資料)を作成するとともに、出店後のその達成状況を公表するよう求めるべきである。また、マニフェストの内容や出店後の達成状況について、都道府県や商工会議所等がまちづくりの視点から意見を表明できるようにすべきである。

 

4.「設置者の商工会議所等への事前出店説明等」の明記

設置者は、商工会議所など地域のまちづくり組織に対し、大店立地法上の届出前に、出店計画の概要等を説明するよう求めるべきである。また、退店の場合も、まちづくり組織に対して相当程度の時間的ゆとりを持って事前に説明するよう求めるべきである。

 

<「二 大規模小売店舗の施設の配置及び運営方法に関する事項」について>

 

1.地域事情に配慮した指針の適用除外規定の創設

指針では、地域の実情を考慮する観点から、駐車場の必要台数について地域特性別の算定基準を設けているが、全国一律の基準であることに変わりはなく、必ずしも現在の交通事情からして現実的ではない。また、こうした駐車場や騒音などの生活環境規制が大型店の中心市街地への立地を困難にする要因のひとつとなり、郊外出店が促進されるなど、まちづくり3法の目的に反する結果となっている。

このため、中心市街地活性化法に基づく基本計画で定められた中心市街地において商工会議所・TMO等が活性化事業に取り組んでいる場合であって、地域住民・議会等のコンセンサスによって大型店が中心市街地に立地する場合は、各自治体の裁量により本指針の適用を全て除外するなど、地域事情に配慮した運用規定を設けるべきである。

 

2.深夜・早朝営業、24時間営業の場合の防犯対策への配慮

深夜・早朝や24時間営業によって増加が懸念される青少年の徘徊、非行、犯罪などの防止対策として、「私設交番の設置」の検討などを求めるべきである。また、駐車場の位置および構造については、渋滞回避の観点に加え、犯罪防止の観点からの配慮(照明の明るさ、警備員の適正配置等)を求めるべきである。

 

3.省エネルギー対策への配慮

地球環境問題に対応し、設置者の省エネルギー対策として、節電の取り組みや省エネに配慮した冷暖房温度の設定などを求めるべきである。

 

 

U.指針の見直しを行うべき事項

 

<「一 大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき基本的な事項」について>

 

1.地域住民への説明会の改善

法第7条により設置者に義務付けられている地域住民への説明会について、地域住民の理解が十分得られるよう、より効果的な開催方法(平日夜間、土曜、日曜、休日の開催など)や説明の仕方を求めるべきである。また、説明会終了後は、説明会に関するより詳細な報告書の提出を求めるべきである。

さらに、開店および施設変更後の店舗周辺の生活環境の変化については、出店前には把握できない点も多いことから、設置者による出店後の生活環境調査の実施や、都道府県・市町村に対する報告、住民等に対する説明会の開催を求めるべきである。

 

<「二 大規模小売店舗の施設の配置及び運営方法に関する事項」について>

 

1.駐車需要の充足その他による大規模小売店舗の周辺の地域の住民の利便及び商業その他の業務の利便の確保のために配慮すべき事項

 

(1)駐車需要の充足等交通に係る事項    

@駐車場の必要台数の確保

公共交通機関が充実している中心市街地や高密度な商業集積地については、地域の実情や営業形態(深夜・早朝営業など)などの実態に合わせて、必要台数を緩和すべきである。

 

A駐車場の位置及び構造等

分散駐車場については、適当と考えられる店舗と駐車場の距離を明らかにするとともに、経路案内板の設置など、交通安全のための措置を求めるべきである。

    

(2)歩行者の通行の利便の確保等

特に店舗の周辺の道路が通学路となっている場合は、商品の搬出入や来店者の車等による事故を防止するための十分な安全対策を求めるべきである。

 

(3)廃棄物減量化及びリサイクルについての配慮

廃棄物の減量化およびリサイクル活動については、リサイクル運動の実施やリサイクル箱の設置など、より積極的な対応を求めるべきである。

 

2.騒音の発生その他による大規模小売店舗の周辺の地域の生活環境の悪化の防

止のために配慮すべき事項

 

(1)騒音の発生に係る事項

@騒音問題に対応するための対応策について

誘導員・監視員の設置や来店者への呼びかけなどを通じ、施設内の騒音対策だけでなく、運搬車両や来店者の車が通る周辺道路沿いの住民に対する配慮も求めるべきである。

 

A騒音の予測・評価について

夜間の騒音は、「騒音規制法における夜間の規制基準値」を適用しているが、病院などと隣接して設置される場合は、より厳しい基準を求めるべきである。

  

(2)街並みづくり等への配慮等

「街並みづくりへの配慮」だけでなく、建物の色、看板、明るさなど、より広い意味の「景観への配慮」を求めるべきである。

 

 

V.その他大規模小売店舗立地法に関する事項

 

1.「基本的な事項」に関する意見の受け付けについて

法第8条に基づき、商工会議所等がその周辺地域の生活環境に配慮すべき事項について、意見書の提出により意見を述べる場合、「指針一 大規模小売店 舗を設置する者が配慮すべき基本的な事項」についての意見を、一部の都道府 県が「商業調整に関する事項は対象外」として受け付けない場合があるため、国はその是正を行うべきである。

 

2.店舗面積の定義の見直し

法第2条により「店舗面積」は小売業(飲食店業を除くものとし、物品加工修理業を含む)を行うための店舗に供される床面積とされているが、エンターテイメント機能の付加など大型店の複合化に対応し、小売業に併設する業態(飲食店、一部販売を行うビデオレンタル店、ゲームセンターなど)も含めた「大規模集客施設」全体の面積とすべきである。

 

3.届出事項の追加

法第5条の届出事項に、景観への配慮や緑地設置など、「街並みづくり・景観への配慮」を追加すべきである。

 

4. 届出事項、指針等の遵守状況のチェック

周辺地域の生活環境を保持するため、設置者の出店後における法第5条の届出事項、法第4条に基づく指針、都道府県の意見・勧告の遵守状況について、都道府県、または商工会議所等がチェックする制度を創設すべきである。

 

以 上

 


ホームページ