平成16年9月15日
もとより、国と地方を合わせた債務残高は700兆円を超える水準となっており、少子高齢化の進展により増大する社会保障費等を考慮すれば、今後の負担増は避けられない状況にある。しかしながら、新たな負担を求めるのであれば、まずは、国および地方が徹底した行財政改革を積極的に推進し、聖域を設けない歳出削減に自ら真剣に取り組まない限り、納税者である国民や企業の理解を得ることは到底できない。
中小企業は、生産活動や雇用維持に大きな役割を果たすなど、わが国経済のダイナミズムの源泉となっている。厳しい経営環境の中にあって、新事業創出、新分野への進出や経営革新に真摯に取り組む意欲的な中小企業の存在は、日本経済の再生、雇用の維持に不可欠なものであると言える。
(1)留保金課税の撤廃 同族会社の留保金課税制度に関しては、累次の税制改正により、法人税率と所得税最高税率との格差は大幅に縮小されており、個人事業者と同族会社との間の負担の公平を図るという留保金課税の存在意義は、もはや失われたものと言える。しかも、もともと自己資本が少なく、資金調達を金融機関に依存している中小企業にとって、経営基盤の強化を図るためには、内部留保の拡充が大変重要であるが、留保金に対する課税は、企業の内部留保の充実を阻害する一因ともなっている。 したがって、留保金課税制度については、直ちに全面的に廃止すべきである。 (2)新たな事業承継税制の確立 わが国の相続税の課税理念には、経営の承継による事業の継続という観点が欠落しており、事業用資産について一般の財産とは区別なく課税が行われる。事業用資産は、企業が継続的に活動していくための基本的な基盤であり、一般の財産とは性格を異にするものである。しかも、事業用資産への課税は、円滑な事業承継を阻害し、長年培われてきた経営ノウハウや技術、さらには雇用機会の喪失を招くなど、わが国経済にとって大きなマイナスである。このため、事業用資産については非課税とすべきであるが、まずは欧州諸国の例に見られるように、5年程度の事業継続を前提に課税対象額の5割を控除するといった制度を創設するなど、包括的な事業承継税制の確立を図るべきである。 あわせて、取引相場のない株式の評価方法の改善、物納基準の緩和を図るなど、事業承継円滑化のための税制措置を講じるべきである(詳細は●別紙「平成17年度事業承継円滑化のための税制措置に関する要望」を参照)。 (3)中小企業に対する法人税の軽減税率の適用金額の引き上げ等 (4)エンジェル税制の拡充 このため、現行のエンジェル税制について、以下の措置を講じることが必要である。 @現行のエンジェル税制について、ベンチャー企業への投資ロスと他の所得との損益通算を 認めるとともに、繰越控除期間を3年から5年へ延長する。 A株式売却時の譲渡所得の圧縮措置について、適用期限の延長を図る。 B創業後5年間に生じた欠損金の無期限の繰越控除を創設する。 C投資誘発効果を高めるため、ベンチャー企業に対する投資額の20%を税額控除する制度 を創設する。 (5)中小企業等基盤強化税制の適用期限の延長等 このため、中小流通・サービス企業者等が行う設備投資に関して特別償却または税額控除を認める中小企業等基盤強化税制について、適用期限の延長を図ることが必要である。また、中小小売業の活性化を図るため、「中小小売商業振興法」に基づき整備される商業施設等の特別償却等を延長すべきである。 (6)非上場株式を含めた金融所得課税一元化の推進 これまでのところ、非上場株式を金融所得課税の一元化に含めない方向で議論がなされているが、その場合、ベンチャー企業等が発行する株式への投資が、上場株式をはじめ他の金融商品と比べて不利となり、これらの企業への円滑な資金供給が阻害されるおそれがある。 このため、非上場株式を含め、金融所得課税の一元化を早期かつ確実に実施し、税制面から多様な資金の供給を後押しする措置を講じることが必要である。
景気の先行きに不安定要素を抱える中で、景気回復を確実なものとするとともに、わが国経済が競争力を維持・強化し、激しいグローバル経済の中で勝ち残るためには、法人課税の改革を進めていくことが肝要である。今次の年金制度改正により、社会保険料の負担が増大していく中にあって、引き続き、企業活力を高め、産業競争力の強化に資する法人課税の実現が求められている。
(1)人材投資促進税制の創設 経済のグローバル化、技術やノウハウの高度化、従業員の高齢化など、企業経営をめぐる環境変化に適確に対応し、生産性の向上や競争力の強化を図っていくためには、企業の経営資源である人材の育成・強化が不可欠である。バブル経済の崩壊以降、企業はリストラを余儀なくされ、労働費用に占める教育訓練費の割合が低下するとともに、雇用の流動化の進展などもあり、積極的な人材投資を行うことは困難な状況となっている。人材投資の縮小は長期的にわが国の競争力の低下をもたらしかねないため、研修など企業が行う人材育成費用について税額控除措置を講じ、企業における人材投資の活性化を促進させる必要がある。(2)法人税率の見直し等 わが国の法人所得課税の実効税率は欧米ならびにアジア諸国と比べると依然高い状況にあり、国際競争力の確保の観点から、法人課税については国際情勢を十分踏まえた見直しが常に必要である。なお、これまで法人税率の引き下げにあわせ、その見返りとして課税ベースの拡大が行われてきたが、これ以上の課税ベースの拡大は、企業の経営改革の進行を鈍らせ、競争力の弱体化を招きかねない。このため、これ以上の課税ベースの拡大は行うべきではない。 (3)減価償却制度の見直し等 このため、減価償却制度について、法定耐用年数の短縮化、法定残存価額および償却可能限度額の見直しなどを行うことが重要である。 あわせて、知的財産の積極的な活用を促進するため、特許権の取得費用にかかる税額控除制度を創設することが必要である。 (4)欠損金制度の見直し (5)外形標準課税の撤廃
わが国の地価動向を見ると、一部大都市部において下げ止まりの傾向が見られるものの、全国的には地価は引き続き下落しており、土地の需要は冷えこんだままとなっている。特に地方都市の中心商業地においては、依然として地価の下落幅は大きくなっており、このことが、資産デフレによる中心市街地の衰退を招き、地域経済に大きな影響を与えている。
(1)固定資産税の負担軽減 商業地等における固定資産税の負担は依然として高水準で推移し、地価水準との乖離が続いている。現に地価は、平成3年をピークに減少に転じているにもかかわらず、固定資産税の負担額は、近年減少に転じているとはいえ、地価の下落幅とは乖離した水準で推移している。平成16年度税制改正において、負担水準の高い商業地等について、条例により、一律に税額を減額できる制度が創設されたところであるが、実際に条例を制定した地方自治体はわずか数ヶ所に止まっており、実効ある仕組みとは言えない。このため、産業競争力の強化、地域経済の活力増進の観点から、固定資産税の評価方法の改善や税率引き下げ等による抜本的な税負担の軽減措置を講じるべきである。 なお、固定資産税に関しては、建物に係る課税について、現行の建物の評価基準が非常に複雑化しており、また法人税法上の法定耐用年数に相当する経過年数が長く設定されている等の問題があることから、見直しが必要である。 (2)不動産の流動化促進・都市再生に資する税制措置の実現 土地税制については、近年の税制改正において一定の進展が見られているものの、依然としてバブル期までの地価上昇を背景に、投資抑制を目的とする税制措置が残っている。資産デフレを解消し、土地の有効利用を通じて地域経済の活性化を図るため、次の税制措置を講じることが必要である。@登録免許税について、手数料程度へ引き下げる。 A不動産取得税を廃止する。 B法人の土地譲渡益重課制度の恒久的廃止を図る。 C事業用資産の買換え特例の繰延割合を100%へ引き上げる。 D都市再生特別措置法に基づく認定民間都市再生事業に係る割増償却等の特例措置の適用期限の延長を図る。
加えて、政府は、地方分権を推進するとともに、危機的な地方財政の中で効率的な行政運営を行うため、市町村合併を推進しているが、合併により、新しい自治体の人口が30万人を超えることが見込める地域においては、新たに事業所税の課税が可能となる。合併特例法により、合併後5年間は課税を行わないことが措置されてはいるものの、その期間が過ぎれば結局は課税されることとなるため、市町村合併を阻害する要因になっている。市町村合併を推進する一方で、こうした税制を残しておくことは、国の施策として一貫性を欠いたものと言える。 このため、事業所税については、早急に撤廃すべきである。
このため、住宅ローンの支払利子を所得から控除する住宅ローン利子所得控除制度の創設、住宅ローン税額控除制度等における所得要件の緩和や築後経過年数要件の撤廃、優良賃貸住宅の建設や住宅リフォームの場合の税額控除制度の創設、省エネ・防災・バリアフリー住宅等の普及促進のための税制措置の構築など、住宅税制の一層の拡充が必要である。
政府税制調査会では、個人所得課税について国民の負担増を示しているが、社会保険料などを含めた総合的な負担のあり方について十分検討がなされるべきであり、単に税収確保の観点から制度の見直しがなされることがないよう、留意が必要である。 (1)扶養控除の拡充等 わが国が抱える最大の課題は、出生率の低下による人口の減少問題である。このまま十分な対策を講じずに、出生率の低下に歯止めがかからなければ、人口の減少と年齢構成のゆがみから、経済の縮小や社会保障制度の崩壊のみならず、地域社会の衰退を招来して、わが国の経済社会全体に未曾有のインパクトを与えることになる。少子化問題の解決は、わが国の将来を決定づける最重要課題であると認識し、また、その解決には非常に長い時間がかかることから、国を挙げて、あらゆる対策を直ちに講じることが必要である。もとより、少子化問題の解決のためには、労働政策、教育政策等、現在の経済・社会システムについて多面的な見地からのアプローチが必要であるが、経済的負担の軽減の観点からは、保育所の整備、児童手当や奨学金制度の充実などに力を入れるのに加え、税制面においても、扶養控除の拡充やN分N乗方式の導入などにより、子供を産み、育てやすい環境整備を図るべきである。 (2)定率減税とその他諸控除の見直し わが国経済は、景気に明るさが広がりつつあるものの、未だデフレからの脱却は実現できていない。そうした中で、今後、年金保険料の引き上げや住宅ローン減税の縮小など、個人消費に影響を及ぼす可能性のある制度改正が予定されている。景気回復感が広がりつつある今こそ、個人の消費意欲を喚起し、景気回復を確実なものとする絶好の機会であり、個人消費に水を差すような政策はとるべきではない。このため、定率減税の縮減、廃止は行うべきではなく、また、各種控除制度の縮減についても、経済社会の構造変化のみならず、経済情勢にも十分配慮するとともに、現在の納税者が増税とならないよう、累進税率構造のフラット化とあわせて実施することが必要である。
しかしながら、地球温暖化問題は、まさに地球規模で解決しなければならない課題であり、その対策を実効あるものとするためには、世界各国の国際的な協調が不可欠である。それにもかかわらず、世界最大のCO2排出国である米国は京都議定書から離脱し、また、同じくCO2排出量の上位を占める中国やインドなどの発展途上国は、そもそも削減義務が課されていない。CO2排出量において世界全体の5%を占めるに過ぎないわが国が、温暖化対策のために新たに税を導入しても、地球温暖化問題の真の解決にはつながらない。 しかも、新税の導入はわが国におけるエネルギーコストの増大を招き、経済に致命的な打撃を与え、地球温暖化対策推進大綱に定める「環境と経済の両立」は困難となる。また、厳しい経営環境の中でコスト転嫁が困難な中小企業は、大きな負担のしわ寄せを余儀なくされ、地域経済や雇用に多大な影響を与えることが懸念される。 むしろ温暖化防止のためには、温室効果ガス排出量の増大が顕著な民生・運輸部門における削減を図るための国民的取り組みの展開や、温室効果ガス排出量の大きい米国等の積極的な参画を促す方が効果的であり、「環境税」の安易な導入には断固反対である。 なお、森林整備に係る財源の確保のため、一部に「森林環境・水源税」導入の議論があるが、そもそも、森林や河川の保全による利益は広く国民一般に及ぶものであることから、引き続き一般財源で対応することが適当である。また、森林や河川整備については、税を創設せず、基金を創設して対応することですでに決着済みの問題である。
平成16年度税制改正において、確定拠出年金の拠出限度額の引き上げや中途引き出し要件の緩和が盛り込まれるなど、一定の制度改善が図られたことは評価するが、制度間の移行や自由な給付設計面等の手当てについては、いまだ十分とは言い難い。 このため、企業年金制度を利用しやすいものとする観点から、以下の措置を講じる必要がある。 @年金積立金の運用段階を対象とした特別法人税を直ちに撤廃する。 A中小企業の選択肢を拡大する観点から、適格退職年金の移行対象に「特定退職金共済制度」を認める。 B確定拠出年金のマッチング拠出を認める。 C確定拠出年金における拠出限度額の一段の引き上げおよび中途引き出し要件の一層の緩和を図る。
三位一体改革については、平成18年度までに3兆円の国庫補助負担金削減・税源移譲が予定されているが、地方向け補助金約20兆円すべてを削減対象とし、地方に任せた方が効率的かつ地方の活性化につながるものについては、地方の行財政改革の徹底を条件に国から地方に所要の税源移譲を行うべきである。税源移譲については、税収中立を前提として、基幹税である所得税と消費税の一定割合を地方税に切り替え、結果として国と地方の税収比率が逆転するようにすべきである。地方交付税も抜本的な見直しが必要であるが、地域間の財政格差の調整のため、現行の地方交付税に替わる地方の個性ある活性化が図られるための新たな調整の枠組みが必要である。 また、これらの改革に加え、地方債についても公募地方債の市場整備や公正な評価メカニズムの構築とあわせ、地方が自己責任の下で自由に発行できるようにすべきである。 なお、地方の課税自主権の拡充に関し、全国の地方自治体で独自課税の動きが広がっているが、まずは行財政改革を徹底して行うとともに、国・地方を通じた税制の抜本的な改革を実施し、その上で必要があれば、住民の利益と負担の選択のもとに地域住民全体を対象とした独自課税を実施すべきであり、「取りやすいところから取る」といった法人への安易な課税による税収確保は行うべきではない。
(1)納税者番号制度の導入 経済活動のボーダーレス化、金融資本取引の多様化、電子商取引の拡大や電子申告・納税制度の導入などIT化の進展の中で、適正かつ公正な課税の実現を図るため、納税者番号制度の導入を検討すべきである。ただしその際は、導入コストの抑制を念頭に置くとともに、個人のプライバシーが漏れることが絶対にないよう情報遺漏防止に万全を図り、目的を逸脱した使用には罰則を科すなどの措置を講じる必要がある。(2)電子申告・納税の推進と税務書類の電子保存範囲の拡大 本年2月から電子申告・納税制度がスタートしているが、添付書類について電子的に提出できないものがあるなど、利用者にとって使いづらい点が見受けられる。納税者の負担軽減を図り、電子申告・納税の一層の普及を図るため、より使いやすい制度となるよう、改善を図られたい。また、電子的に保存が認められる税務書類の範囲が拡大することは、企業における帳簿の保管コストの軽減につながることから、決算関係書類や帳簿、領収書など、電子保存の対象をできるだけ幅広く認めるよう、関係法令の整備を早期に行うことが必要である。 (3)源泉徴収制度の見直し 現行の源泉徴収制度については、本来税務当局が行うべき徴税業務を企業が肩代わりしているものであり、給与所得者の納税意識と税への関心を希薄化させる一因にもなっていることから、見直すべきである。その際、あわせて特定支出控除の拡充を行うなど、納税申告を促進させるための環境整備を通じて、納税による社会への参画意識を高めていくことも重要である。(4)税と社会保険料の徴収一元化 年金保険料の未納問題を受け、今回の年金制度改正において、国民年金保険料の徴収対策の強化の一環として、市町村からの税務情報の取得の容易化が盛り込まれた。政府は、単に徴収率向上を図るだけでなく、これを機に、保険料は社会保険庁、税金は国税庁や地方自治体という徴収体制を見直すべきである。納税者の負担軽減と徴税・徴収事務の効率化による行政コストの削減の観点に立ち、現在、国税と地方税、税と社会保険料に分かれている徴収体制の一元化を進めることが必要である。
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