「温暖化対策税制の具体的な制度の案〜国民による検討・議論のための提案」に対する意見

平成15年11月27日
日本商工会議所  


 わが国の地球温暖化対策については、地球温暖化対策推進大綱において、環境と経済の両立を目指して、まずは第1ステップ(2002年〜2004年)の対策を講じ、「第2ステップ及び第3ステップの前に対策・施策の進捗状況・排出状況等を評価し、必要な追加的対策・施策を講じていく」ステップ・バイ・ステップのアプローチで総合的に諸対策を検討していくこととしており、まずは2004年に、これまでの対策を評価することが必要である。第2ステップ以降の対策については、その評価に基づいて検討されるべきであるにもかかわらず、中央環境審議会の専門委員会が環境税の検討を行ってきたことは、地球温暖化対策推進大綱に反するものであり、極めて遺憾である。
 そもそも地球環境問題は、地球規模の生態系に影響を及ぼすおそれのあるとされる全人類共通の課題である。その解決のためには、気候変動メカニズムに関する科学的知見の蓄積と最新のデータに基づき、各国が納得できる目標による公平な枠組みを設定し、そのうえで、できるだけ多くの国々の参加により目標達成の実効性を高めていくことが必要である。
 しかしながら、気候変動メカニズムについては、いまだ科学的な解明がなされておらず、温暖化に関する将来予測も不確定要素に基づいたものとなっている。しかも、先進国に法的拘束力のある義務を課した京都議定書は、世界のCO2排出量の1/4を占める米国が参加していない。また近年、世界全体に占める排出量割合が増加しており、2020年には全世界のCO2排出量の約半分を占めることが予想される発展途上国についても義務付けがなされていない不公平なものとなっている。このため、ロシアをはじめ米国以外の先進諸国の中にも批准を見送る動きが見られるなど、地球温暖化をめぐる世界の状況は大きく変動しており、今や、京都議定書に基づく地球温暖化への取組みはほとんど実効性を持ち得ないどころか、京都議定書の発効自体が危うい状況となっている。さらに、批准した先進国の中でも、わが国の負担はEU等に比べて著しく大きなものであり、京都議定書の批准は、わが国にとって非常に不利な条約によって国際的な削減義務を担い、国民全体に過大な負担を負わせるものとなっている。
 一方、産業界としては、これまで長年にわたり省エネルギー努力や環境対策に関する技術開発等を進めてきた結果、世界最高レベルのエネルギー効率を実現している。また、化石燃料に対してはすでにさまざまな税が課されており、その税収の一部が地球温暖化対策としても活用されるなど、税制面における対応も講じられている。
 こうした状況にもかかわらず、京都議定書の目標を達成するために「温暖化対策税」を課すことは、地球温暖化対策を口実に増税し、新たな財源を作り出すことにほかならない。しかも新たな税の導入は、わが国の国際競争力を低下させ、わが国経済社会の活力を大きく削いで日本経済に致命的な打撃を与えることになり、環境と経済の両立を実現することは不可能となる。  
 以上のことから、日本商工会議所としては、そもそも環境税の検討自体に断固反対であるが、今般、中央環境審議会の専門委員会が「温暖化対策税制の具体的な制度の案」を公表したことから、その内容について、以下のとおり意見する。  

    

1. 地球温暖化対策を実効性あるものとするためには、世界各国の国際的な協調が必要であるが、米国は京都議定書を批准しておらず、またCO2排出量の上位を占める中国やインドなどの発展途上国も削減義務が課されていない。わが国のCO2の排出量は世界全体の5%を占めるに過ぎず、わが国のみが温暖化対策のために新たに税を導入しても、真の地球温暖化の解決にはつながらない。
 わが国だけが環境税を導入した場合には、エネルギーコストの増大を招き、わが国産業の国際競争力を大きく損ない、経済と環境の両立を実現することが困難になるとともに、排出削減義務の課されていない国への事業移転を招き、地球全体としてみれば、かえって排出量を増大させ、地球温暖化を加速させることにもなりかねない。

2. 京都議定書では、2008年から2012年の第1約束期間に1990年比で6%減とする削減目標が設定されているが、これまでのわが国のCO2排出量を部門別にみると、産業部門では一定の成果をあげているのに対し、民生・運輸部門では大幅に増加している。   
 温暖化対策については、産業界としても引き続きCO2排出量の削減努力を行っていくが、民生・運輸部門の対策を講じなければ、わが国全体としてCO2の削減は見込めない。民生・運輸部門におけるCO2排出量の増大を抑制するため、国民各層に対して温暖化対策の必要性について十分な理解と協力を求め、国民的な取り組みを展開することが先決である。

3. 「温暖化対策税制案」では、税の導入に伴う価格インセンティブ効果によってCO2排出量が2%削減され、また税収を補助金等に活用することにより8%の追加削減が行われ、合計でCO2排出量が10%削減すると見込んでいる。   
 これまでわが国は徹底した省エネルギー努力をしてきた結果、GDPあたりCO2排出量は先進国中でもっとも低く、また、一人あたりCO2排出量も世界的に見て極めて低水準となっている。こうした状況のもとでは、省エネルギーは、産業界として引き続き努力を傾注していくものの、企業のみならず、国、自治体、市民といった各層がそれぞれに積極的な取り組みを行わないことには実現できるものではない。また、CO2排出抑制のためには、新エネルギー対策や原子力・燃料転換等、省エネルギー以外の対策もこれまで以上に推進していかなければならない。
 一方、長引く不況で地域経済をめぐる状況は依然として厳しく、仮に温暖化対策税が導入された場合、税を価格転嫁することも困難である。また、仮に転嫁できた場合にも、ガソリンの店頭小売価格が常に変動している中で、ガソリン1リットルあたり2円の課税が消費者にどの程度のインセンティブを与えるかといった点についても検証がされていない。  
 こうした経済社会の現状を踏まえずに、課税による価格インセンティブ効果と1兆円近い税収の活用によってCO2排出量を10%削減できるとしているのは、まさに机上の空論であり、「はじめに環境税ありき」とする本末転倒の議論である。

     
4. 「温暖化対策税制案」では、税収を温暖化対策に充当するとしているが、すでに、平成15年度税制改正において、それまでの石油税を石油石炭税に改組し、この税収の一部をエネルギー対策のみならず環境技術開発、新エネルギーの導入促進といった環境対策に活用することとしている。平成16年度は財源として約3,700億円が見込まれているにもかかわらず、温暖化対策のために新たに追加の財源を確保しなければならない必要性が示されていない。加えて揮発油税等既存のエネルギー関係税制との関係も明確となっておらず、こうした点が不明確なままに「温暖化対策税」を導入すべきとするのは、まったく論外である。

以 上

(参考)「温暖化対策税制の具体的な制度の案〜国民による検討・議論のための提案(報告)


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