平成15年9月17日
一方わが国は、諸外国に例を見ないスピードで少子高齢化が進んでいるが、今後もわが国が活力を維持していくためには、経済社会システム全体の抜本的な変革を行い、少子高齢化がもたらす影響を最小限に抑制しなければならない。そのためには、行財政改革、社会保障制度改革、税制改革を一体として断行していくことが必要となるが、政府においては、それぞれの改革が整合ないままに議論され、また社会保障制度や税制においては、現行制度の維持や財政再建を最優先とした負担増の議論ばかりが先行している。特に、増大が予想されている社会保障給付のための財源として消費税の税率引き上げについての意見が見られるが、今求められているのは、国民が十分納得できるだけの行財政改革や社会保障制度改革を着実に実施し、それによって経済社会の活力を取り戻し、持続的な経済成長を確実なものとすることである。こうした改革を行うことなしに、はじめに消費税の増税ありきとする考え方は、到底認めることはできない。
デフレ克服のためには、国民の消費や企業の投資に対する意欲を引き出すいわば民需喚起の呼び水となる税制改正が必要である。このため、以下の税制措置を緊急に講じるべきである。
1.住宅税制の拡充 1,400兆円近い個人金融資産を有効に活用する観点から、景気波及効果の大きい住宅建設の促進を図るため、次に掲げる措置を講じるべきである。(1)現行の住宅ローン減税の適用期限を延長するとともに、2戸目住宅への適用、対象となるリフォーム工事要件の見直し、所得要件の撤廃等の拡充を図ること。 (2)住宅ローンの支払利子を所得から控除する「住宅ローン利子所得控除制度」を創設すること。 (3)優良賃貸住宅建設や住宅リフォームの場合の税額控除制度など住宅投資促進に係る税制を整備すること。 2.証券税制の拡充 個人の金融資産が貯蓄から投資へ移行することは、証券市場の活性化に寄与するとともに、企業をめぐる金融環境の多様化に対応して間接金融から直接金融への流れを加速させることにつながることから、個人の株式投資促進のため、証券税制をさらに整備することが望まれる。そのため、個人の小口の中長期的な証券投資を促進するために、イギリスの制度にならい、年間一定限度額までの株式投資等についての配当および譲渡益を非課税とする「日本版PEP(個人株式投資プラン)制度」を創設すべきである。 また、株価は一時期よりも上昇しているものの、証券市場の構造改革はいまだ不十分であることから、今後再び株価低迷が起きるようであれば、上場株式等に対する相続税評価の軽減など、個人投資家を証券市場に呼び込む措置の実現も検討されたい。 3.土地税制の拡充 (1)登録免許税について手数料程度へ引き下げること。 (2)不動産取得税、事業所税を廃止すること (3)法人の土地譲渡益重課制度の恒久的廃止を図ること。 (4)個人の土地の長期譲渡所得課税の税率の軽減を図ること。 (5)事業用資産の買換え特例の繰延割合を100%へ引き上げるとともに、土地流動化促進等のための買換え特例の適用期限を延長すること。 4.投資促進、研究開発税制の拡充整備 (1)中小企業の生産性や国際競争力の向上を図る観点から、中小企業投資促進税制の適用期限を延長するとともに、特別償却率および税額控除率を引き上げること。 (2)投資した資金を早期に回収できるようにするため、法定残存価額および償却可能限度額の引き下げ、法定耐用年数の短縮など減価償却制度の見直しを図ること。 (3)試験研究税制については、平成15年度税制改正において大幅に拡充されたが、研究兼務者の人件費が試験研究費として認定されないなど実際の企業の研究開発活動に対応しきれていない面があることから、企業にとって使いやすい制度となるよう見直すこと。あわせて、特許権の取得費用に係る税額控除制度を創設すること。 5.ベンチャー・新規創業支援のための税制措置の拡充 (1)現行のエンジェル税制について、ベンチャー企業への投資ロスと他の所得との損益通算を認めるとともに、繰越控除期間(現行3年)を5年へ延長する等、制度の充実を図ること。また、平成15年度税制改正で講じられた株式譲渡益の範囲で所得税の特例控除を行う制度について、住民税においても導入すること。 (2)投資誘発効果を高めるため、イギリス、フランスなどの制度と同様、ベンチャー企業に対する投資額の20%を税額控除する制度を創設すること。 (3)創業後5年間に生じた欠損金の無期限の繰越控除制度を創設すること。
1.新たな事業承継税制の確立 平成14年度税制改正において取引相場のない株式等についての相続税の課税価格の計算の特例が創設され、平成15年度税制改正においてはその拡充がなされたことは、かねてから商工会議所が主張してきた包括的な事業承継税制の確立へつながるものとして評価するところである。 しかしながら、そもそも事業用資産は、企業が継続的に活動していくための基本的な基盤であり、そこに、一般的な相続財産と同様の担税力を見出して課税することは適当ではない。このため、本来、事業用資産については非課税とするべきであるが、当面、少なくとも欧州諸国の例に見られるように、例えば5年程度の事業の継続を前提に課税対象額の5割を控除するといった制度を創設するなど、抜本的な事業承継税制の確立を図るべきである。 また、相続によらない事業承継の円滑化を図るため、非上場株式を譲渡した場合の譲渡益課税率の10%への軽減、みなし配当課税の見直し等を行うべきである(詳細は別紙「平成16年度事業承継円滑化のための税制措置に関する要望」を参照)。 2.中小企業の活力増進のための税制措置 (1)欠損金の繰越期間の延長および繰戻還付の適用 欠損金の税制上の取扱いについて、課税上の期間損益の通算は企業が中長期的な視点に立った経営を行ううえで極めて重要なことから、欧米諸国に比べて短い欠損金繰越期間を10年間に延長するとともに、一部を除き不適用になっている繰戻還付を認めるべきである。 (2)留保金課税制度の廃止 同族会社の留保金課税は、中小企業にとって経営基盤の強化、新規事業展開など企業活力の増進を図るために必要な内部留保の拡充を阻害するものとなっている。平成15年度税制改正において、平成17年度までの時限措置として資本金1億円以下で自己資本比率50%以下の中小企業については課税停止とする措置が講じられたが、法人税率と所得税最高税率との格差が大幅に縮小されている今日、もはや留保金課税の存在意義は失われており、同制度については直ちに全面的に廃止すべきである。 (3)法人税の中小企業軽減税率の引き下げおよび適用所得金額の引き上げ 法人税の中小企業軽減税率について、税率を引き下げるとともに、昭和56年以来据え置かれている適用所得金額(現行800万円)を引き上げるべきである。 3.法人税率の引き下げ等 また、現下の厳しい経済環境に鑑みると、これ以上の課税ベースの拡大は企業の経営改革の進行を鈍らせ、経済構造改革にもマイナスに働くおそれがあるため容認できない。 4.交際費課税の廃止 5.固定資産税の負担軽減 (1)土地に係る固定資産税の引き下げ 商業地等における固定資産税負担は依然として高水準で推移し、地価水準との大幅な乖離が続いている。現に地価は、平成3年をピークに減少に転じているにもかかわらず、固定資産税の負担額は、近年減収に転じているとはいえ、ここ20年で約2.5倍程度にまで増加している。このため、かつては概ね0.4%程度を上限に推移していた商業地等における実効税率もバブル期以降は一貫して上昇基調にあり、現在では0.6%程度にまで達していることから、実質的な負担をバブル期以前の水準の上限であった0.4%程度に引き下げるべきである。 (2)家屋に係る固定資産税の引き下げ 家屋の評価についても、現行の評価基準は非常に複雑なうえ、法人税法上の法定耐用年数に相当する経過年数が長く設定されている等の問題があり、見直しを図るべきである。 6.法人事業税への外形標準課税の撤廃 外形標準課税はさまざまな問題を抱える税制であり、諸外国においても同様の税制は廃止の方向にあることから産業界はその導入反対を主張してきたが、平成16年度からの導入が決定された。しかしながらわが国だけが外形標準課税の導入を図ることは、産業の国際競争力の低下を招くため、そもそも反対であり撤廃すべきである。ましてや将来、外形標準課税の対象範囲が資本金1億円以下の企業にまで拡大されることは、絶対にあってはならない。 7.金融・証券税制の見直し 平成15年度税制改正により講じられた証券税制は、金融課税の一元化への第一歩として評価するところである。引き続き、金融所得をはじめとする資産性所得を一括して勤労性所得とは切り離し、単一の比例税率で課税する二元的所得税の導入を見据え、配当を損益通算の対象に含めるなど金融課税の一元化をより加速させるべきである。 8.社会保障制度改革の一環としての年金課税の見直しと企業年金に係る税制の拡充 9.地球環境問題への対応 10.国と地方のあり方と税制 11.納税者番号制度の導入 12.電子申告・納税制度の推進と源泉徴収制度の見直し等 13.公益法人課税強化に反対 以 上
1.所得税 (1)住宅建設に関し、以下の税制措置を講じること。 A住宅ローンの支払利子を所得から控除する「住宅ローン利子所得控除制度」を創設する。 B優良賃貸住宅の建設や住宅リフォームの場合の税額控除制度など住宅投資促進に係る税制を整備する。 C特定居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度の適用期限を延長する。 D中古住宅に係る税制上の特例措置の築後経過年数要件について緩和する。 E優良賃貸住宅等の割増償却の適用期限を延長する。 F特定の居住用財産の買換えおよび交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例措置の適用期限を延長する。 G省エネ・環境・防災・バリアフリー住宅等に対する税制措置を講じる。 (2)年間一定限度額までの株式投資等についての配当および譲渡益を非課税とする「日本版PEP(個人株式投資プラン)制度」を創設するなど、個人投資家を証券市場に呼び込むために証券税制のより一層の拡充を図ること。
(3)個人の土地の長期譲渡所得課税の税率の軽減を図ること。 (4)事業用資産の買換え特例の繰延割合を100%へ引き上げるとともに、土地流動化促進等のための買換え特例の適用期限を延長すること。
(5)設備投資促進のため、中小企業投資促進税制の適用期限の延長と内容の拡充を図ること。 (6)減価償却資産の法定残存価額および償却可能限度額の引き下げ、法定耐用年数の短縮、償却方法の見直しなど減価償却制度の改善を図ること。
(7)研究開発促進のため、試験研究税制について研究兼務者の人件費を試験研究費として認定するなど制度の見直しを行うこと。あわせて、特許権の取得費用に係る税額控除制度を創設すること。
2.法人税 (1)住宅投資に関し、以下の措置を講じること。
(2)法人の土地譲渡益重課制度の恒久的廃止を図ること。 (3)事業用資産の買換え特例の繰延割合を100%へ引き上げるとともに、土地流動化促進等のための買換え特例の適用期限を延長すること。
(4)設備投資促進のため、中小企業投資促進税制の適用期限の延長と内容の拡充を図ること。 (5)減価償却資産の法定残存価額および償却可能限度額の引き下げ、法定耐用年数の短縮、償却方法の見直しなど減価償却制度の改善を図ること。
(20)事業再生を促進するため、債務免除等があった場合に繰越控除できる期限切れ欠損金の算出方式を見直すこと。
3.相続税 (1) 円滑な事業の継続・発展のため、以下の税制措置を講じること。
4.その他 (1)
登録免許税の負担を手数料水準にまで引き下げること。
1.住民税 (1)住宅特定居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度の適用期限を延長すること。 (2)年間一定限度額までの株式投資等についての配当および譲渡益を非課税とする「日本版PEP(個人株式投資プラン)制度」を創設するなど、個人投資家を証券市場に呼び込むために証券税制のより一層の拡充を図ること。
(3)個人の土地の長期譲渡所得課税の税率の軽減を図ること。
(4)研究開発促進のため、試験研究税制について、研究兼務者の人件費を試験研究費として認定するなど、制度の見直しを行うこと。
(5)ベンチャー企業の育成・新規創業の促進のため、以下の税制措置を講じること。
2.事業税 (1)法人事業税への外形標準課税を撤廃すること。
3.固定資産税 (1)商業地等における固定資産税負担は依然として高水準で推移し、地価水準との大幅な乖離が続いており、また、家屋についても、評価基準が複雑等の問題があることから、固定資産税の評価方法の改善や税率の引き下げ等による抜本的な税負担の軽減措置を講じること。
4.不動産取得税 (1)不動産取得税を廃止すること。 (2)不動産取得税を廃止できない場合には、住宅および住宅用土地の取得に係る特例措置について、適用期限を延長すること。
5.事業所税 (1)事業所税については、二重課税および都市間の課税の公平上の問題があるため、廃止すること。 (2)事業所税を廃止できない場合には、以下の措置を講じること。
6.特別土地保有税 平成15年度から新規課税が停止中の特別土地保有税について、過去からの徴収猶予分に係る納税義務の免除要件を緩和すること。また、徴収猶予の適用が終了する以下の法律に基づき取得した土地に係る非課税措置の適用期限を延長すること。
7.自動車税 自動車税のグリーン化について、所要の見直しを行ったうえで適用期限を延長すること。 8.自動車取得税 (1)「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づく一定の基準を満たす低燃費車に係る特例措置について、適用期限を延長すること。
1.環境税の導入反対 環境省の中央環境審議会の専門委員会では、先ごろ「温暖化対策税制の具体的な制度の案」を公表したが、地球温暖化対策をはじめとする環境対策については、環境と経済の両立が大前提であり、特に地球温暖化対策は、ステップ・バイ・ステップのアプローチのもとに進められることが決められていることから、税や課徴金は第1ステップの取り組みを評価・見直したうえで、なお目標が達成できない場合に検討されるべき対策のはずである。 2.国と地方のあり方と税制 (1)財政のプライマリーバランスの改善のためには、まずは歳出構造の抜本的見直しを含む行財政改革による徹底した歳出削減や、景気回復による自然増収を図ることが先決である。行財政改革に際しては、国から地方への権限の移譲とともに税源の移譲が必要不可欠であることから、国と地方の役割分担を明確化したうえで、地方が必要とする税財源は、地方の行財政改革の徹底を条件に、基幹税である所得税と消費税の一定割合を国から移譲すべきである。
3.固定資産の減損会計への対応 現在、企業会計基準委員会において固定資産への減損会計適用に向けた準備が進められているが、当所では、デフレが解消されないまま減損会計が予定通り2006年3月期から導入されることになれば、わが国の企業や経済に極めて大きな打撃を与えるおそれが懸念されることから、その導入に関しては慎重かつ多面的な検討を行うよう要望しているところである。その根拠のひとつとして、現行の法人税法においては、原則として固定資産の減損会計の適用による減損損失の損金算入が認められていないという問題がある。企業会計上で減損損失の計上が強制される一方で税負担は軽減されないとなると、税務会計と企業会計との二重計算による過度な実務負担の増加が懸念され、また、固定資産を売却して実現損失として損金算入するほうが税制上有利となるために、各企業は減損対象の固定資産の処分を急ぐことになる。買い手がほとんどいない現状でそのような状況になれば、わが国の不動産市場は機能しなくなるおそれがある。 4.納税者番号制度の導入 経済活動のボーダーレス化、金融資本取引の多様化、電子商取引の拡大や電子申告・納税制度の導入など情報化・電子化の進展、さらには将来の二元的所得税の導入へ向け、適正かつ公平な課税を実現するため、納税者番号制度の導入を検討すべきである。ただしその際は、導入コストの抑制を念頭に置くとともに、個人のプライバシーが漏れることが絶対にないよう情報遺漏防止に万全を図り、目的を逸脱した使用には罰則を科すなどの措置を講じる必要がある。 5.電子申告・納税制度の推進と源泉徴収制度の見直し等 簡便な納税申告制度の確立は、納税者側、徴税側の双方にメリットがあることから、平成16年2月から順次運用が開始される予定の電子申告・納税制度を積極的に推進すべきである。 6.公益法人課税強化に反対 公益法人課税の見直しは、個々の公益法人の活動実態を十分に踏まえて実施する必要があり、商工会議所のような特に公益性の高い法人はその存在意義や役割がむしろ地方自治体や公共法人と同等であるといえるので、現行以上の課税強化は行うべきでない。 7.その他 (1)2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の開催に伴う国有資産等所在市町村交付金の特例措置を創設すること。
以 上 |
別 紙
わが国中小企業は、長引く景気の低迷により厳しい経営環境にさらされ、また経済のグローバル化の進展に伴い、国際競争の中で生き残りを図らなければならない苦しい立場におかれている。日本の企業数の99%以上を占め、雇用の70%を支える中小企業は、まさに日本経済のダイナミズムの源泉であり、これら中小企業の発展なくしてわが国の再生はありえない。そのため、中小企業の活性化を図るための施策の充実は欠かせないが、とりわけ税制は、企業行動に直接的な影響を与えることから、企業活力を創出させ、わが国の国際競争力の強化に資する税制改革が早急に行われる必要がある。 企業は、継続事業体(ゴーイング・コンサーン)として長期にわたり事業活動を行うことが期待されている存在であるが、経営者は自然人であるが故に永遠には存在しえず、事業の継続的な発展の過程で経営に関して後継者への承継が発生することは避けられない。特に中小企業は、その特性として個人事業形態、あるいは法人であっても経営と資本が未分離の場合が多く、また同族的な色彩が強いことから、多くの場合、経営の承継は相続というかたちをとる。その際、経営を引き継ぐ者は、世代交代に伴う対外的信用力の低下や経営に携わった経験の差などから幾多の新たなる困難に直面することになるが、それに加え事業用資産に対して相続税が課税されるため、税制面からも事業継続が困難となっている。 一方、国際競争力の強化の観点からも、相続税制の見直しは喫緊の課題である。海外における相続税の課税状況を見ると、欧州諸国においては、近年、事業の継続性に着目したかたちで相続税制の見直しを行い、事業用資産に対する相続税の軽減措置を講じている。また、アメリカは2010年までに相続税を段階的に廃止する方向にあり、わが国と熾烈な競争を繰り広げているアジア諸国においては、そもそも一部の国を除いて相続税制自体が存在しない。これらに対し、わが国の中小企業は、事業承継にあたり非常に高い相続税を負担させられており、国際競争力の面で不利な状況に立たされている。こうした状況を早急に是正しなければ、厳しい経営環境の中で必死に頑張っている企業の活力を削ぎ、地域産業の空洞化は一層進み、わが国経済社会を安定化させることはますます困難となる。さらには、相続税の課税により企業そのものが存続できなくなる事態になれば、結果的に企業からの税収が落ち込み、わが国財政にも大きな影響を与えることになる。 以上のことから、世代交代が行われても円滑に事業の継続、発展を可能とする事業承継税制の構築を図るため、平成16年度税制改正にあたり、下記事項の実現を要望する。 1.事業用資産に対する包括的な事業承継税制の確立 平成14年度税制改正で取引相場のない株式等についての相続税の課税価格の計算の特例が創設され、平成15年度税制改正においてはその内容が拡充されたことは、かねてから商工会議所が主張してきた包括的な事業承継税制の確立へつながるものとして評価するところである。しかしながら、そもそも事業用資産は、企業が継続的に活動していくための基本的な基盤であり、そこに一般的な相続財産と同様の担税力を見出して課税することは適当ではない。事業の承継とは、継続的に活動している企業の経営そのものを引き継ぐことであり、事業用資産の相続は、一般的な財産の相続とは本質的に意味合いが異なることから、相続税の課税対象とすべきではない。 このため、相続により承継される事業用資産については非課税とすべきである。その実現へ向け、平成16年度税制改正にあたっては、少なくとも欧州諸国の例に見られるように、5年程度の事業継続を前提に課税対象額の5割を控除するといった制度を現行制度との選択制のもとで創設し、過大な相続税負担により事業体を毀損することなく円滑な事業の継続、発展を可能とする税制の構築を図るべきである。 2.非上場株式に係る譲渡益課税の税率の軽減等 事業承継は、継続事業体として成長・発展を続ける企業の経営の継承であることから、中小企業の承継は必ずしも相続によるものばかりとは限らず、第三者が後継者として事業を引き継ぐこともありえる。この場合、事業の承継は、経営権の譲渡、すなわち株式の譲渡によることとなるが、その際、譲渡益が発生する。株式譲渡益課税については、平成15年度税制改正において、上場株式等の税率が縮減されたが、非上場株式については見直しが行われていない。相続によらない中小企業の事業承継の円滑化を図るため、非上場株式の譲渡益課税の税率を10%に軽減すべきである。 あわせて、相続人が相続税の納税資金確保のために会社へ自己株式を売却した場合、現行では、上場株式は譲渡益課税されるのに対し、非上場株式はみなし配当とされて総合課税されており、納税しようとする者に対して過重な税負担となっている。このため、非上場株式の会社への売却について、上場株式と同様に譲渡益課税とすべきである。 3.取引相場のない株式の評価方法の改善 取引相場のない株式については、評価の不安定性の蓋然性の観点から、会社の規模に応じ斟酌率に格差を設けて評価を行っているが、会社の評価に伴う各種のリスクと会社の規模の間には相関性はない。このため、現行では大会社・中会社・小会社ごとに定められている斟酌率を小会社の0.5にあわせるなど、取引相場のない株式の評価のさらなる改善を図るべきである。また、平成13年以降、企業組織再編成に係る税制の見直しが行われてきたが、株式の評価において企業組織を再編成したことが不利にならないよう、評価方式を検討されたい。 以 上 |