政府の総合デフレ対策に関する緊急要望
   

平成14年10月31日
日本商工会議所


 小泉総理が推進されている構造改革路線は、長期的には日本経済を再び持続的成長軌道に乗せるために避けて通れないものである。しかしながら、改革を成功に導くためにも、まずは当面のデフレスパイラルを断ち切り、経済を安定化させることが何よりも重要であることを認識すべきである。そのためにも、現下のわが国経済が非常事態にあることを認識し、需要創出のために財政・税制・金融のあらゆる手段を総動員して景気を回復軌道に乗せることを目指すべきである。それが構造改革を成功に導く近道である。
 したがって、政府・与党におかれては、政治の強力なリーダーシップのもとに、早急に本年度補正予算の編成に着手するとともに、需要喚起に役立つ十分な規模の政策減税を早期に決定・実施するなど下記事項について実現を図るべきである。政府・与党の英断を強く期待する。


1.思い切ったデフレ対策を
(1)少なくとも5兆円規模のデフレ対策を
 経済財政諮問会議においても「15年度においては、公共投資の抑制、社会保障負担増・給付減により公共部門がGDP1%以上のマイナス効果を及ぼすことが予想される。さらに、不良債権処理が加速されることにより、一時的に経済への下振れ圧力が強まる可能性がある」との指摘がなされ、その対策が重要課題となっている。
 このため、早急に財政再建優先型の経済運営を改め、国債30兆円枠にとらわれることなく、補正予算をはじめ政府支出・減税などにより少なくとも5兆円規模のデフレ対策を早期に講じられたい。補正予算の編成に際しては、わが国の産業競争力の強化に直結する先端分野における研究開発プロジェクト、地方の個性ある活性化や都市再生に資する投資効果の高い社会資本の整備および電子政府の実現に向けての集中的な投資等、構造改革を加速するものに十分な予算配分を行われたい。あわせて、日本銀行は、政府と連携して一段の金融緩和に取り組まれたい。
 なお、十分な需要喚起策を含めたデフレ対策が実施されなければ、景気は回復せず、過去1年間に不良債権額が約10兆円も増加しているように、景気低迷のままでは不良債権処理問題は終息しない。


(2)需要創出・消費喚起のための思い切った先行減税の実施を
 今回、研究開発投資など政策減税を中心とする先行減税や、証券税制、土地関連税制の改革が実施されることになったことは評価するが、これだけでは十分ではない。住宅取得資金等の贈与に対する非課税枠の拡大(3,000万円)や住宅投資減税の拡充など、大規模な需要創出・消費喚起の効果が期待され、かつ、景気に即効性のある措置について早期実現を図り、思い切った先行減税を行われたい。


2.万全な中小企業対策を
 中小企業は、全企業の99.7%、従業者数の70%を占め、日本経済のダイナミズムの源泉であると同時に、雇用の維持・創出や文化・伝統等を通じて地域社会の安定に大きく貢献している。しかしながら、現在、中心市街地や地域製造業の空洞化等により地域経済社会は疲弊し、中小企業は経営努力の限界を超えた苦境に立たされている。わが国経済の大宗を占める中小企業の活性化なくして日本経済が蘇ることはありえない。それにもかかわらず、この厳しい経済環境の中で、外形標準課税の導入問題や消費税の免税点制度の見直しなどに代表されるように、まさに経済社会の安定要因として頑張っている中小企業の経営を脅かし、犠牲にするような方向での措置が検討されているのは、誠に遺憾であり、断固反対である。


(1)中小企業金融セーフティネットに万全を期すること
 すでに、デフレの深刻化と貸し渋りにより、意欲と能力のある中小企業すら、危殆に瀕している。このままでは、日本の産業基盤は崩壊し、経済の空洞化は不可避である。加えて、今後、不良債権処理を加速化させ、抜本的な金融改革を実現する過程においては、貸し渋り・貸し剥しなど銀行の中小企業に対する貸し出し姿勢のさらなる悪化が予想されるため、政府は信用保証制度の拡充など万全な金融セーフティネットを講じるべきである。セーフティネット構築のために必要な資金については、早急に補正予算を編成して手当てされたい。
 なお、現下の厳しい経済環境において、中小企業に対する金融セーフティネット機能を有する政府系中小企業金融機関の必要性は、一層高まってきている。したがって、これら金融機関についての改革の論議は、当面の間、凍結されたい。


(2)中小企業いじめともいえる税制改正は絶対に行わないこと
 @法人事業税への外形標準課税導入は絶対反対
 法人事業税への外形標準課税の導入が強行されれば、担税力が低く、日々の資金繰りすら困難な、中小企業の7割を超える欠損法人に対して、到底負担できないような重税が課される。加えて、黒字中小企業であっても、その多くは大幅増税となる。ほとんどの中小企業に新たに重税を課す外形標準課税の導入には絶対反対である。多くの中小企業が苦境にある今、何故との疑問を禁じえない。さらに、特に中小企業は、この厳しい経済状況の中で、必死になって雇用の維持に努めている。それにもかかわらず、賃金等を課税標準とする外形標準課税が導入されようとしていることは、雇用の維持をさらに困難に追い込むものであり、到底容認できない。


 A消費税の免税点制度見直しおよび簡易課税制度の廃止は断固反対
 消費税の免税点制度については、デフレの進展により価格競争が激化している中、小規模零細事業者である免税事業者は、仕入れに係る消費税分の価格転嫁すら、より困難になっており、いわゆる「益税」どころか、むしろ多くの事業者は「損税」となっている。また、簡易課税制度は事業者の納税事務負担を軽減するために設けられた制度であり、消費税の定着、円滑な実施に寄与している。したがって、小規模零細事業者等の経営に重大な悪影響を及ぼす免税点制度の見直しおよび簡易課税制度の廃止には断固反対である。


 (3)活力ある中小企業の経営基盤を強化するための中小企業税制を確立すること
 中小企業の事業用資産に関する新たな事業承継税制の確立や、同族会社の留保金課税制度の全面的廃止など中小企業の活力を生み出す税制について早急に拡充・是正されたい。


以 上


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