トップページ > ニュースライン > トレンドボックス > 【最新海外事情レポート】韓国の経済・ビジネス環境について(ソウル)

トレンドボックス

【最新海外事情レポート】韓国の経済・ビジネス環境について(ソウル)

▼新長官就任と対韓投資増加策

 

 20161月、韓国の産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)のトップが約3年ぶりに交代となった。就任した周亨煥長官は官庁出身で、前職は企画財政部(日本の財務省に相当)の次官だった人物だ。

 同部は、海外からの投資誘致を担う。2月には新長官主導で、さらなる対韓投資拡大策を決定した。日米欧等の商工会議所との会合を開き、各団体代表らを前に新たな支援を約束。長官、局長級による意見集約の機会を増やし、よりきめ細かい、スピード感のある隘路事項の解消体制の構築や、投資要件の緩和、バイオなどの新産業分野へのR&D支援拡充を行うとしている。

 

 

周 長官と日米欧等の商工会議所との懇談会(2/19ソウル)

 

 

 

▼日系企業従業員、ビザ更新できず

 

  その一方、先日ある時、日系大手メーカーの社長から嘆息まじりの声を聞いた。

 「韓国の入国管理局に従業員のビザの更新申請に行ったら、今後はできないと言われた。このままだと韓国企業との共同プロジェクトが立ち往生してしまう」

 入管側の説明によると、投資ビザの発給基準が昨年から変更され、投資額5千万ウォンにつき駐在員1人を認めることにしたのだという。同社の投資額は10億ウォンなので、最大20人。現在30人いるから10人分は「基準超過」で更新できない、というわけである。韓国の外国人投資促進法では、投資ビザ取得のために必要な最低投資額は1億ウォンである。そして、実際に認められるビザ発給数、つまり駐在員の数は、これまで投資額の多少だけを基準としていなかった。国内にもたらす利益可能性、国内産業の発展への寄与の度合いなどにより、総合的に判断してきたからだ。よって、高度な技術移転等を伴うような投資の場合、エンジニアは投資額にかかわらず、ビザが発給されやすい状況にあった。その方が国益に適うからである。

 

 

▼真正面からの環境整備を

 

 入管は、規則に従って手続きしているにすぎないので、現場の対応としては間違っていないのだろう。規則の変更には理由があり、一部の中国人などが不法就労の隠れ蓑として投資ビザを不正に利用するケースが急増していることが一因とされている。ルールを明確にして厳格な運用と行う、という趣旨だ。しかし、ビジネス環境の観点でみると、首をかしげざるを得ない。なぜなら、先に述べたように、韓国政府は海外からの投資を増やそうと躍起だからである。近年、日本の対韓直接投資額は、申告ベースで、年間約20億ドル台(2012年のみ45.5億ドル)で推移していたが、昨年は約16.7億ドルと一気に減少した。主要因はウォン高に振れた為替だが、上昇を続ける人件費、労使交渉の難しさ、業界を縛る厳しい規制なども投資意欲を阻害しているといわれる。

 

 

 

日本の対韓投資額の推移(単位:億ドル、産業通商資源部)

 

 

 まさかこうした課題を置き去りにして、対韓投資額を増やすために、基準を変えたとは思いたくない。駐在員を増やしたければ増資せよ、というのはあまりにも小手先である。今回のケースは、単に官庁間での擦り合わせ不足の結果だと思われる。先の日系企業では、現在対応策を検討中だが、米国資本大手でも同様のトラブルを招いていると聞く。韓国のライバルはいよいよ成長著しいアジア各国となる。真正面から隘路事項の解決を図り、投資環境の整備を行うことが本筋であろう。

韓国では、4月に4年ぶりの総選挙が行われる。今後、日系企業をはじめとする外国企業の投資環境がどのように改善されてゆくのか、注視される。

ソウルジャパンクラブ 常務理事 松本 憲治