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【最新海外事情レポート】新政権の政策と韓国経済(ソウル)

 ▼「雇用」「所得」を増加させ、個人消費を促す

 今年5月、文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党前代表が、第19代大統領に選出された。7月末時点でも支持率は依然として70%を超えており、進歩、中道、保守、いずれの層からも広く支持を集めている。韓国国民の期待を一身に受けて船出したと言えるだろう。

 

(図表1)

共に民主党の文在寅氏が40%を超える票を集め、第19代大統領に選出された

 

 現時点では、報道などから得られる情報がベースになるが、文政権がどういった経済政策を掲げているかを見てみることとしたい。7月に発表された、文政権5年間の国政運営方向を示す設計図である「国政運営5カ年計画」は、「国民の国、正義の大韓民国」という国家ビジョンのもと、5大国政目標、20大戦略、100大国政課題、4大複合・革新課題などで構成されている。これらを見ていくと、現政権は韓国経済が抱える大きな問題を「低成長」「二極化」と分析している。これを克服していくためには「所得」と「雇用」を増加させていくことが必要で、その増加を通じて個人消費を促していくという方向性であり、経済政策も、これに沿ったものになっている。

 

具体的に見てみると、「所得」を増加させる政策では、「2020年までに1時間あたりの最低賃金を1万ウォン(日本円で約1,000円)までの引き上げ」が注目を集めている。ちなみに現在の最低賃金は6,470ウォン(日本円で約647円)である。こうした急激な引き上げは、企業活動への影響も懸念されているところだ。なお、来年度の最低賃金は16.4%増の7,530ウォン(日本円で約750円)に引き上げが決まった。

 

一方、「雇用」の増加に関しては、「公共部門の雇用81万人分の拡大」「非正規社員ゼロ」等の政策が掲げられている。特に後者は注目度が高い。労働分野に関しては、この他にも労働時間の短縮など、法人活動に影響が大きい変更が想定されており、情報収集に追われている企業も少なくない。実際に韓国国内1号上場企業である京紡が最低賃金の急激な上昇を嫌い、工場の一部を海外移転させることを、決めているし、ソウルジャパンクラブ(SJC)の労働関係をテーマにしたセミナーでも、参加する在韓日系企業から「これを本当に全部やるのか」という懸念の声も聞こえてきている。

 

(図表2)

文在寅政権が発表した「国政運営5カ年計画」は5大国政目標20大戦略、

100大国政課題、4大複合・革新課題などで構成されている

 

▼山積する困難な課題

大統領選以前から新政権は「どの候補が当選するにしても、分配に力を入れていくのではないか」との声が聞かれた。実際に打ち出されている政策を見てみると、月10万ウォン(約1万円)の児童手当新設、基礎年金の引き上げなど、「分配」を意識したものが多い。方向性は大方の予想通りと言えるだろう。

 

 ただし、これらの政策を実行していくためには178兆ウォン(約18兆円)が必要になると言われている。財源は税収増や、歳出の見直しで手当てしていく他、大企業や富裕層への増税も検討しているとされるが、財源をどう確保していくかも大きな課題になりそうだ。

 

一方、経済の状況を見てみると46月期の企業業績は過去最高益を更新する企業がある一方で、中国との関係性などから苦戦を強いられている企業も少なくない。中国からの観光客も少ない状態が継続したままだ。また、米韓FTAの再交渉も取り沙汰されているし、依然として北朝鮮のリスクも取り除かれていない。文在寅政権は国民からの圧倒的な支持を受けている一方で、山積する困難な課題への対応が求められている。就任早々から難しい舵取りが求められそうだ。

 

(日本商工会議所 ソウル事務所長 関口 正俊)