立地地域の活性化策を探る
(日本商工会議所機関紙「会議所ニュース」平成13年12月11日号、電源立地特集)
全国の電源立地地域(建設中および計画地点を含む)の関係者が一同に集まり、電源立地を生かした地域の活性化や人材育成などについてさまざまな角度から検討する「エネルギープラザ」((財)電源地域振興センター等の主催)。16回目を迎える今年は、「神話と新話が息づく、潮と緑の鹿島町。」を副題に島根県鹿島町で10月24〜26日に開催された。本特集では、この「エネルギープラザ鹿島2001」の模様と「電源立地を活用した地域おこし(下)」と題した青森商工会議所・細井常務理事からの寄稿、そして原子力緊急対策拠点となる「オフサイトセンター」について掲載する。
・特別シンポジウム〜「電気の生産地と消費地の交流を考える」〜
青森商工会議所 常務理事 細井 仁 氏
| エネルギープラザ鹿島2001 |
今回の「エネルギープラザ」は、「人の力・地域の活力」をテーマとして、島根県八束郡鹿島町にて開催された。主催は、鹿島町、財団法人電源地域振興センター。
1日目は、狂言師・総合芸術家の野村万之丞氏を講師に迎え、「21世紀は文化産業の時代」と題して、伝統芸能を通じた「人の育成」や「人の連携」の重要性についての講演が行われた。
2日目は、「電気の生産地と消費地の交流を考える」をテーマとした特別シンポジウムと「まちづくり検討会」が開催された。「まちづくり検討会」は、@地域産業活性化部会・観光産業振興部会・環境部会と部会ごとの事例検討コース、Aプレゼンテーションコース、Bワークショップコースの3コースとに分かれ開催された。
また、3日目の「施設見学会」では、「島根原子力発電所」、「クリーンセンター鹿島」などの施設を見学した。
| <鹿島町の概要> 開催地である島根県八束郡鹿島町は、島根半島のほぼ中央部に位置しており、松江市から約10kmの日本海に面した町である。また、島根半島随一の施設を持つ恵曇(えとも)漁港があり、国産第1号として運転を開始した島根原子力発電所が設置されている町である。 |
| 特別シンポジウム 〜「電気の生産地と消費地の交流を考える」 |
特別シンポジウム(参加者603人)は、「電気の生産地と消費地の交流を考える」をテーマに開催された。パネリストに財団法人日本消費者協会理事・長見萬里野(まりの)氏、法政大学教授・岡崎昌之氏、広島商工会議所工業振興委員会委員長筒井數三(かずそう)氏((株)シンコー取締役社長)、コーディネーターに財団法人電力中央研究所研究顧問・中村政雄氏、オブザーバーに経済産業省大臣官房参事官・江越博昭氏を迎えて、河川における水源地と下流地域との交流や、都市部の女性団体による立地地域との交流活動の事例紹介。パネルディスカッションを通じて、電気の生産地と消費地の相互理解のための交流活動について検討した。

<「電気の生産地と消費地の交流」について議論が行われた「特別シンポジウム」>
| まちづくり検討会 〜「地域産業活性化部会」事例発表〜 |
地域産業活性化部会(参加者185人)では、地域の豊かな資源を「地域ブランド」として確立することに焦点をあて、地域内の連携による商品開発の事例や、人材の活用による地場産業の活性化事例を検討した。
事例発表者に島根県八束郡鹿島町恵曇漁協婦人部部長・青山幸子氏、沖縄県工業・工芸振興課課長・古波蔵(こはぐら)保雄氏、コーディネーターに島根大学法文学部助教授・野田哲夫氏、オブザーバーに経済産業省資源エネルギー庁電源立地対策室室長補佐・左近裕之氏を迎えて行われた。
<各地の事例について活発な討議が行われた「地域産業活性化部会」>
◆「未利用資源を有効活用」 恵曇漁協婦人部部長 青山幸子 氏
漁村の子どもたちの歯の質が低下していることを知り、大量に地元で水揚げされるイワシなど、新鮮な小魚をもっと家庭や地域で食べてもらい、地域の健康づくりに役立ちたいという婦人部員たちの願いから活動を始めた。
これを契機に婦人部では、魚食普及のための魚料理の講習会を開催したり、農村や消費者グループとの交流からアイデアを得た地域の未利用資源を活用した新製品の開発など積極的な活動を行っている。
◆「『かりゆしウェア』の誕生」 沖縄県工業・工芸振興課長 古波蔵保雄 氏
ハワイのアロハシャツのように、沖縄独自のシャツを作ろうという発想から昭和45年に沖縄のリゾートウェアが誕生した。しかし、素材が限定されており、デザインの種類が少ないため、ファッションを楽しみたい若者層に広がらなかった。平成2年にネーミングを公募し「かりゆしウェア」(かりゆし=沖縄の方言で、めでたいことや縁起がいいことの意味)と名付け、平成12年にはウェアの素材やデザインの見直しを行い、バリエーションが一気に拡大した。そして、九州・沖縄サミットを機に県内外でのかりゆしウェアの認知度が高まり、8年の観光関連意識調査では「着用している」が8.3%であったのに対し、12年には54.5%に増加した。また、県ではデザイン開発事業のほか、展示会やショーを開催している。かりゆしウェアは沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合やハイサイかりゆし愛好会など地元の団体や住民に支えられ、沖縄の地域ブランドとして確立された。
| 施設見学会 |
◆島根原子力発電所
島根原子力発電所は、島根県鹿島町の北部に日本で5番目のサイトとして建設された。1号機(出力46万キロワット)は昭和49年3月に営業運転を開始、2号機(出力82万キロワット)は平成元年2月に運転を開始しており、現在、3号機(出力137.3万キロワット)が平成22年3月の運転開始に向けて、建設準備中である。西日本で初めて運転を開始した1号機は、国内メーカーの開発による国産第1号の原子力発電所である。
原子力発電所の敷地面積は約170万平方メートルあり、敷地内では温排水を利用したアワビの養殖も行っている。
計画されている3号機は、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で、原子炉内蔵型再循環ポンプ、改良型制御棒駆動機構、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器、運転操作・監視のしやすい中央制御盤など最新の技術を採用する。
<島根原子力発電所>
◆クリーンセンター鹿島
「クリーンセンター鹿島」は、日本で初めてのトンネル方式の「クリーン・カプセル処理場」を採用した下水処理施設である。この方式の特徴は、下水処理のすべてをトンネル内で密閉して行うために悪臭が漏れないという環境や外観上で優れている点と、水処理方式に「酸素活性汚泥法」と「オゾンによる滅菌消毒」を採用し、処理水を車の洗車や公園の散水などに再利用できる点である。
<「クリーンセンター鹿島」の内部>
| 【寄稿】電源立地を活用した地域おこし(下) 青森商工会議所 常務理事 細 井 仁 |
東通(ひがしどおり)村(青森県)は、本州最北東端に位置し、村の約80%が山林や原野であることから山海の幸に大変恵まれており、また、下北半島国定公園の一部をなす大自然を満喫させる景観が多く点在する村である。その中でも最果ての景勝地「尻屋崎(しりやざき)」は海の難所として知られており、光度200万カンデラと日本最大を誇る「海の女神・白亜の灯台」は、明治9年以来現在まで船舶の安全を見守り続けている。また、尻屋崎周辺の広い草地には、牛馬が放牧されており、その中で目を引くのが通年放牧されている「寒立馬(かんだちめ)」で、粗食に耐え、厳寒の中を力強く立ちつくす姿は、命の尊さと自然の躍動を感じさせてくれる。
この東通村は明治22年の町村制が施行された際に発足したが、村の面積が広大で集落が点在していたために、役場庁舎を隣接する田名部町(現在のむつ市)に置いていた。それから約100年もの間、役場庁舎を村内に置くことができなかったが、昭和63年に庁舎を村内に移転したことを契機に、庁舎を中心とした整備をはかり、交流センターや健康管理センターなどを建設する新しい村づくりがスタートした。その後、中心地整備事業としてふるさと広場、体育館が竣工され、近代的・文化的な地域形成への取り組みが着実に進展している。
東通村開発の進展には、電源立地地域への電源三法交付金の活用が大変重要になっている。現在進行中の東通原子力発電所建設には、約150社の企業が携わり、1日の平均労働者数は1,400人、県内企業の割合は40%、労働者数の割合は70%を占めることから、県全体の地域振興にも大きく寄与している。
しかし、忘れてならないのは建設工事が終了した後の対応である。東通村では平成7年に策定した「東通村新総合開発振興計画」に基づいて各方面から注目を集める街並み、街づくり計画が進められている。同村では新しい街(愛称:ひとみの里)をつくろうという計画が進んでおり、これは、村役場庁舎の向かい側の約20ヘクタールに120区画の分譲地と30戸の公営住宅を建設する計画で、敷地内には「せせらぎ」や「公園」もつくられ、街全体が緑で覆われているのが特徴である。今年度には一部分譲も開始することになっており、造成中の分譲地には、600人の定住者が入ることが想定されている。公園をはじめとする環境整備まで含めると、原子力発電所が操業する1年前の平成16年度には、全国から注目される新市街地が完成する予定となっている。
東通村には国の重要無形民族文化財指定の「能舞(のうまい)」など、先人が築いてきた伝統の財産がある。それに加え、東通原子力発電所建設では、地域に親しまれる発電所づくりを目指して広報誌「つちおと」を発行したり、「発電所建設所長杯」を競う「ゲートボール大会」を開催している。同大会は、村全域から多くの村民が参加するもので、村に欠かせないイベントとなっている。
また、電力施設を設置している東北電力株式会社や東京電力株式会社の社員との交流として、「協働」で東通村独自の文化の創造をはかろうと高知県の「よさこい踊り」と下北の方言「かさまい」を掛け合わせた村の一大イベント「来(か)さまいフェスタ〜ひがしどおりよさまい踊り〜」を実施している。このイベントには両電力の社員など100名が参加し、村民との交流をはかっている。今後も住環境の整備を積極的に進め、一人でも多くの人がこの村に居住することが最大の地域振興につながるのではないかと考えられる。
<東通村と電力会社の交流をはかる「来さまいフェスタ」>
| 原子力緊急対策拠点「オフサイトセンター」 |
平成11年9月に発生したウラン加工施設の臨界事故を教訓として、原子力施設立地地点に、原子力緊急事態の応急対策拠点としてオフサイトセンターが、全国で21カ所(経済産業省管轄:19カ所、文部科学省管轄:2カ所)で本年度の完成を目指して、建設・整備されている。オフサイトセンターは原子力災害対策特別措置法に基づいて設置されるもので、原子力災害が起きた場合に関係者が対策にあたるための拠点となる場所。国の原子力災害現地対策本部が置かれるとともに、国と地方自治体、事業者による原子力災害合同対策協議会が置かれる。オフサイトセンターの機能については、下図のとおり。