(日本商工会議所月刊誌「石垣」99年10月号より)

 

彦根・夢京橋キャッスルロード(滋賀県彦根市)

OLD NEW TOWN・商店街づくりは人づくり

彦根市本町1−7−39
彦根夢京橋商店街振興組合
理事長 水野 義博

◎ポイント
・江戸時代の街並みを再現
・観光客を取り込もう
・街づくりは人づくりから


 国宝「彦根城」の京橋口で石垣にさえぎられた角を曲がると、江戸時代の城下町が目に飛び込んでくる。白壁と黒格子で統一された350mの街並みは、映画村のような光景だ。名前は「夢京橋キャッスルロード」。街路整備の実施を契機に伝統的な街並みを再生し、商店街の活性化をはかっている。「街並みは整備されましたが、商店街、街の活性化はこれからです」と語る水野義博理事長にお話を伺った。

▼江戸時代の城下町を再現

 街並み整備以前の1985(昭和60)年当時は、道幅も6メートルと1603(慶長8)年の彦根城築城に伴って城下町が建設された当時のもので、現在の交通事情にそぐわないものとなっていた。街路整備事業を実施するにあたり、地権者の約80人は2年にわたる議論を重ねた。当時は民家と商店の割合が8:2という状況、住民の「自分たちの地域は自らの力で創り、次世代へ引き継ぐ」という理解を得るには多くの時間を要した。「江戸時代には間口の広さで徴税していたこともあり、通りに面している幅は狭いが後背地は広いという土地が多く、旧店舗で営業しながら、店舗の裏で新店舗を建築するという方法で、整備自体は滞りなく進みました」と水野理事長は当時を語る。「当時リーダーシップをとったのは小児科の診療所を開業していたお医者さんで、直接的な利害関係がないので“うってつけ”でした。この人なくしては夢京橋も実現しませんでした」。こうして「夢京橋キャッスルロード」は整備された。

▼ゆとりある街並み整備

 夢京橋の道路幅は18mで、セットバックを含めると約20mとなる。片側一車線は変わらないが、車道片側3mに対し、歩道3m、植栽1.5m、駐車帯1.5mとゆとりある整備がなされた。車道部は土のイメージの脱色アスファルト、歩道部は石畳の雰囲気のさび入り御影石を使用するなど、街並みへの配慮がここにもなされている。電線は地中化し、照明器具にも黒を基調とした落ち着いた雰囲気のものを使用している。ポケットパーク、公衆トイレ、ベンチ・スツール(休養のために歩道に設置されたベンチ)なども整備された。「これだけ整備しても、住民の自己負担金はほとんどありません」と水野理事長。「彦根市が都市景観行政を推進していることによる補助金、都市計画道路拡張に伴う立退き料などがあり、資金的にはずいぶん助かりました」という。「ただ、資金は援助してもらいましたが、行政が指導するという従来の形ではなく、住民主導での街づくりを行った点は今後の夢京橋発展へ向けて大きかったと思います」。

▼観光客を取り込む

 「現在、彦根城には年間約70万人の観光客が集まりますが、今まではこの貴重な観光資源を生かしきれていませんでした。彦根城を訪れた観光客に夢京橋にも来ていただき、彦根の地場産品、文化、街を知ってもらいたいのです。現在、彦根の伝統産業である“和ろうそく”を扱った“夢あかり館”を開設しており、彦根と招き猫を紹介する“招福本舗”のオープンも決まっています」と観光客の誘致にも力を注いでいる。「彦根城から夢京橋を訪れた観光客が、市場商店街、銀座商店街、中央商店街、京町商店街…へと回遊すれば、彦根市の活性化にもつながります」。事実、夢京橋の街並み整備が観光客の増加に貢献し始めており、彦根市のほかの商店街が夢京橋に追随して活性化事業に取り組むなど、良い効果をもたらしている。その意味でも今後の夢京橋の活性化に街の期待がかかっているが「すばらしい街並みが整備され、これから徐々にソフト面での充実をはかりたいと考えています。“ゆかた祭り”などのイベント事業、“夢あかり館”などの産業紹介などに力を入れていきます。活性化のために話題づくりは大切なのです」という。

▼商店街づくりは人づくり

 「商店街づくりは人づくりからという言葉をよく耳にしますが、まさにその通りです。勉強会などを開催して意識の統一、向上をはかっていますが、街づくりを“楽しい”と感じることは重要です。一人ひとりの意識向上が各個店の魅力アップにもつながるでしょう」。商店街の組織を強化するため、これまで任意組織だったものを商店街振興組合として立ち上げた。水野理事長は成功のポイントについて「論より実践です。ただし意思疎通がないのは論外です。われわれには小児科のお医者さんがいたように、街づくりにはリーダーが必要です。これはわれわれにも言えることですが、常に努力することが大切でしょう。良い時も悪い時も前向きな努力を怠らない姿勢が求められています」。“OLD NEW TOWN”このコンセプトが示す古き良さを生かして新しい活気のみなぎる街となる努力はまだまだ続く。



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