平成10年度の景気情勢を概観すると、LOBO調査の全産業業況DI(前年同月比ベース)は、4、5月期は、数字上、若干好転したが、総体的に悪化のトレンドは変わらず、8月に調査開始以来の最低値を記録するに至った。その後、徐々にではあるが、政府の経済対策による公共工事の増加に伴う建設業業況DIの改善。また、いわゆる消費税還元セールや地域振興券の配布等による卸売業、小売業DIの小幅な改善等により、全産業業況DIは、平成11年3月まで7ヵ月連続で改善し、下げ止まりの兆しが見られた。以下では、平成10年度景況感の流れを四半期毎に回顧することにする。
@−円安による景況の悪化−(10年4月〜6月期) 全産業業況DIは、9年12月から4ヶ月連続で調査開始以来の最低値を更新していたが、4月、5月と2ヵ月続けて数字上好転した。しかし、これは、小売業、卸売業のDI値を算出する際に前年度の消費税引き上げ直後の反動減があった状況と比較したためであり、6月には円安の影響もあり、再び調査開始以来の最低値を更新した。
建設業では、4月に業況DIが調査開始以来の最低値を更新。公共工事について、年度替りで少ないのはわかるが、今年は例年より少ないとの声などが多く寄せられたほか、住宅建設等における受注件数の減少と価格競争激化に伴う採算の悪化など極めて厳しい状況を訴える声が多く寄せられた。製造業では、アジア向け輸出の低迷が続いたのに加え、円安の影響による輸入材料の値上げ圧力などの影響により、業況はさらに悪化した。卸売業では、受注の減少をはじめ、資金繰りの悪化や採算の減少などを訴える声が多く寄せられたほか、円安や天候不順による仕入単価の上昇とする声もあった。小売業では、消費マインドの冷え込みに伴う売上の低迷や円安に伴う輸入品、輸入ブランド品の値上げを懸念する声が多く寄せられた。
全産業の業況DIは、8月に調査開始以来の最低値を更新した。その後、政府の経済対策による公共工事が序々に出始めて建設業の業況DIが回復したこともあり、9月の全産業業況DIは若干改善したが、製造業、卸売業DIは調査開始以来の最低水準となるなど、中小企業の景況は危機的状況にあった。
建設業では、公共工事が序々に出ているとの声が寄せられたものの、中小零細まで仕事がまわっていないとの声や、民間工事の低迷を指摘する声が多く寄せられた。製造業では、電子部品、造船、輸送用機械など一部の業種から受注増との声も寄せられたが、業況DIが2ヵ月連続で最低値を更新するなど、極めて厳しい状況となった。卸売業でも、9月に調査開始以来の最低値を更新するなど、消費の低迷による業況の悪化や卸先の転廃業による売上減、天候不順による青果などの仕入単価の上昇が指摘する声が寄せられた。小売業では、長引く消費の冷え込みによる客単価下落を指摘する声が引き続き多く寄せられ、また、毒物混入事件の影響による飲料の売上減も指摘された。サービス業では、旅館から相次いだ台風の影響による客数の減少を訴える声が多く、地域によってはキャンセルが2,000件を超えたところもあったとの声が寄せられた。
政府の経済対策による公共事業が本格的に出始め、建設業の業況が改善し、また、いわゆる消費税還元セールの影響により、卸売業、小売業のDIが若干好転したことから、全産業の業況DIの悪化度合いは弱まり、徐々にではあるが回復に転じた。
建設業では、公共工事の前倒しにより発注は増加しているとの声が多く寄せられたものの、裾野の広がりに欠け、前倒しの効果は零細企業にはほとんど及んでいないとの指摘が寄せられた。製造業では、住宅関連資材・商品の販売の低迷、自動車販売などの低迷による受注減や業況悪化を指摘する声が引き続き多く寄せられた。卸売業では、農産物関係卸から台風の影響により野菜などが単価高で売上増との声があったものの、繊維、衣料、家具卸などからは、業況は相変わらず厳しいとの声が寄せられた。小売業では、大型店から消費税還元セールにより、採算的に厳しいが売上増との声が多く寄せられ、また、大型店に近接する商店街からは消費税還元セールの影響で客足が増えたとの声が寄せられた。サービス業では、飲食関係より忘年会の予約が減っているとの声が多く、旅館からも年末年始の予約が低調との声が寄せられ、12月に業況DIは調査開始以来の最低値を更新した。
全産業業況DIは、8月に最低値を更新した後、3月まで7ヵ月連続でマイナス幅の縮小し、中小企業の景況に下げ止まりの兆しが見られた。これは、政府の経済対策による公共工事の大幅な増加や住宅取得促進税制の創設等による建設業DIの大幅な改善やいわゆる消費税還元セールや地域振興券の配布に伴う卸売業、小売業DIの若干の改善等による。
建設業では、公共工事が増加しているという声に加え、低迷している民間工事においても、一部からではあるが「住宅金融公庫の申し込みも増えており、住宅メーカーには久々の追い風」「住宅着工件数は喜ぶほどではないが増加している」といった声が寄せられた。製造業では、「白物家電に若干の動き」、「軽自動車の規格拡大により軽自動車関連に動きがある」等の声も寄せられたものの、需要の低迷や決算前の在庫調整による受注の減少など業況の低迷を訴える声が多く寄せられた。卸売業、小売業からは、個人消費の低迷による業況の悪化という声が多く寄せられたものの、地域振興券に期待するコメントが多く寄せられた。なお、地域振興券配布に伴う結果についての声としては、「効果あり」との声と「効果は薄い」との声が相半ばとなっており評価は分かれた形となった。サービス業では旅館、飲食関係からは引き続き客数の減少や客単価の下落を指摘する声が多く寄せられた。