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【最新海外事情レポート】 カンボジアは、どこへ向かうのか?(プノンペン)

20176月、地方選挙の結果>

 カンボジアにおいて、64日、地区評議会議員選挙(以下、地方選挙)が実施された。今回の投票率は85.7%であり、前回5年前の65.1%に比べると国民の選挙への関心が深まっていることがうかがえる。現地各紙の報道によると、計1,646の村・地区のうち、与党の人民党が最多得票だったのが1,163、野党の救国党が482、その他の野党が1、という結果となり、約70%を人民党が確保する結果となった。農村部では人民党が圧倒的優勢だったものの、プノンペン、シェムリアップ、コンポンチャムの大都市では救国党の優勢が報じられており、与野党に対する国民の評価が分かれたとみられる。

 

 同日の結果速報を受け、フン・セン首相は自身のフェイスブックページにて「カンボジアの首相として、全国民、そして選挙活動期間から選挙当日まで滞りなく進めてくれた国家選挙管理委員会に感謝を伝えたい」と言及しているが、結果そのものについては触れられていなかった。

 

20178月、ジェトロのセミナーで語る>

 88日、フン・セン首相の訪日を受けジェトロと日本カンボジア協会の主催により、首相をスピーカーとするセミナーが開催された。268名の出席者を前に、フン・セン首相は予定の30分を大幅に上回る1時間近い講演を行い、質疑応答にも自ら応じるなど外資誘致に積極的な姿勢を見せた。

  

 出席者の1名から、「(6月の地方選挙の結果を受け)来年の総選挙に勝つために、どうしますか?」という突拍子もない質問が出されたが、「与党が勝つとか、野党が勝つとかは二の次であり、自身の願いはカンボジアが発展することのみ。」と返すなど、政治家としてのカリスマ性を見せることとなった。

 


ジェトロセミナーで講演するフン・セン首相

 

201710月、最低賃金が170USDへ>

 105日、2018年の最低賃金が170USDとなることが発表された。本最低賃金は、法律上は縫製・製靴業組合加盟事業所において適用されるものとされているが、日系企業においてはその他産業セクターも同決定額をフォローする形での給与支払いをおこなっているのが現状である。

 

 最低賃金は、政府代表者14名、雇用者側代表者7名、労働組合代表者7名の計28名が構成する労働諮問委員会にて9月から討議されてきた。議論の過程において、雇用者代表は161ドル、他方、労働組合代表は176.25ドルを要求、政府は162.67ドルを推奨。同委員会の最終決定は、165ドルとなったが、昨年同様フン・セン首相より5ドル追加の指示があり、着地点は170ドルとなった。

 

若い労働者をねぎらうフン・セン首相 

 

 8月以降、フン・セン首相はプノンペンを中心に「労働者との対話会」を相次いで開催し、特にプノンペンSEZで開催された会合には4,000人近くの労働者が集められた。いずれの場でもフン・セン首相は「2018年の最低賃金は160ドルを最低線。福利厚生に関しては国家社会保障基金の会社負担を100%とし、公共バスの2年間無料利用、国立病院の無料受診、妊婦の産前産後休暇(90日)中の120%の給与保証」を約束している。最低賃金については、この約束を果たしたこととなったが、福利厚生については現時点で負担にかかる詳細は規定されていないものの、実態としては企業側の負担増加が予想されている。

 


若い労働者と一緒にカメラに収まるフン・セン首相

 

<そして、官民合同会議へ>

 6月の地方選挙の結果は与党にとって想定内であったと思われるが、8月の訪日の段階では外資誘致に積極的な姿勢を見せるなどある程度の余裕を見せていた。それが、秋以降には与党に批判的だった大手新聞社の閉鎖(建前的には税金の未納を指摘され、閉鎖に追い込まれたもの)、党首が国家反逆罪で逮捕されたことを受けての第一野党であった救国党の解党(これについてはEUが厳しく非難し、次の選挙支援を行わないことを明言)を続々と行い、ここへ来て選挙対策一辺倒に傾いているように見える。

 

 そのような折、11月末には当地における日系製造業の成功例のひとつとされていた大手かつらメーカーが、カンボジアから撤退した。1,000人近くの従業員を抱えた同社は、撤退の理由を「人件費の急激な上昇を中心とするコスト増に対応しきれなかった」と説明している。これまで、政府は最低賃金を上げても日系企業はコストカットを行い撤退しないと安穏として来た節があるが、実際に企業が撤退したことをどう捉えるであろうか。

 

 2月には、ジェトロが事務局を務めるカンボジア日本人商工会が中心となって日本側の意見を取りまとめ、投資環境の整備等を求めて提言を行う官民合同会議(第16回目)が予定されている。この場で、日本側が出す事実に基づく提言に、カンボジア政府はどのように答えるのであろうか。カンボジアは、どこへ向かうのか?その答えが聞けることを祈念したい。

 

(カンボジア日本人商工会 事務局長 河野将史)