トップページ > 国際関連情報(中小企業国際化支援ナビゲーター) > 海外情報レポート > 【最新海外事情レポート】 なぜ上海の変化は早いのか?(上海)

海外情報レポート

【最新海外事情レポート】 なぜ上海の変化は早いのか?(上海)

  上海で生活を始めて早くも2年半、最も印象的なのは、上海の変化の速さだ。

 市内を東西に貫く幹線道路「延安路」を走る電動バス、街中の至るところに駐輪されているシェア自転車、公共の場での全面禁煙の導入、交通違反の取締り強化など、いずれも着任当時は全くその予兆すらなかったものばかり。数年ぶりに当地を訪れた元駐在員も、「久しぶりの上海、だいぶ変わりましたね。」と口を揃えて言う。なぜ上海の変化が速いのか。その理由を考えてみた。

 


 

 

 

 

 

 

         

         延安路を走る電動バス

 

 第1に政府の強力なイニシアティブ。5年に一度の共産党大会で国の基本方針が示され、それをもとに中央政府、地方政府が具体的な政策を実行していく。社会主義のもと政府の権限はかなり強い。飲食店が立ち並ぶ繁華街が短期間に立ち退きを命じられ沿道は長い塀で目隠しされ、工事のため車の流れも規制される。これは最近地下鉄工事が始まった地域の話。住民の立ち退き問題で何十年も着工できないということはあり得ない。今年3月から施行された禁煙条例もあっと言う間に社会に浸透した。いまや上海市内のオフィスや飲食店など室内で喫煙する人は殆どいなくなった。違反すると喫煙者は50200元、施設管理者は2,0003万元の罰金が科されるということが大きい。このような「強引さ」の背景にあるのは、各地方政府が共産党の書記の指導のもとお互いに実績を競い合う、いわば競争原理が働いているということも見逃せない。競争を勝ちぬいた書記はやがて中央政府へと抜擢されていく。

 


 

 

 

 

 

 

    

     いつの間にか多くの飲食店が移転(古羊路)

 

 第2に「石橋を叩いて渡る」よりも「走りながら考える」国民性。現在、街中にあふれるシェア自転車を上海市内で見かけるようになったのは昨年の後半頃、それからあっという間に増殖し、いまでは海外にも輸出される中国発のビジネスモデルにまで成長した。小回りの利く庶民の足としてはこれまでタクシーや電動バイクが主流だったが、スマホにアプリをダウンロードし登録手続きをすれば、誰でも1時間わずか1元で利用でき、好きな場所で乗り捨てられる安さ、手軽さが決め手となった。使用料を不当に課金されないか、個人情報を悪用されないか心配する人は殆どいない。政府も導入当初は様子を見守り、問題が生じれば、その都度、是正していくという対応だ。生活を豊かにするもの、便利なもの、に対する社会全体の受容度はかなり高いのではないかと感じる。

 

 第3に「だれもが老板を目指す」マインドである。中国は社会主義国なので中国人は個人行動よりも集団行動が得意な国民だと読者は考えているかもしれない。しかし実際には「いつか自分が総経理になってやる」と考えている平社員や「絶対に自分のお店を持つぞ」と闘志を燃やす飲食店員は決して少なくない。彼らは人に使われるよりも人を使う立場になりたいと考えている。一人っ子政策が続いてきたとは言え、小さなころから激しい競争社会のなかで育ってきた人たちはチームプレーよりもむしろ個人競技の方が得意なようだ。このような人たちは、仲間同士で資金を出し合って起業したり、時には投資家の支援を受けることもある。上海の繁華街に立ち並ぶお店の移り変わりがとても速いのは、このような背景があるものと思う。上海の変化の底辺には個々人の旺盛な起業家精神もあるように思う。

 

                               (上海日本商工クラブ 事務局長 小林 英文)