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【最新海外事情レポート】 フィリピンの雇用事情(マニラ)

 フィリピンは労働人口が約4,000万人であるが、国内に職が少なく、高収入を求めて、そのうち約1,000万人が海外へ出稼ぎに行っている。英語がほぼ公用語ともいえ、タクシードライバーも普通に英語を話す。失業率は約5.5%(2016年)で、ワーカークラスの労働者は工業団地の入り口で募集するとたくさん集まってくる。労働者が豊富なため、ジェトロの「2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果によれば、日系企業のフィリピンでの賃金昇給率は約5%程度と低めに推移している。(表1) また、年間賃金ベースで見ても他のASEAN諸国や中国、インドと比べても十分に競争力があるといえる。(表2) なお、2016年通年の消費者物価指数(CPI)の伸び率は全国平均で前年比1.8%、マニラ首都圏のCPI上昇率は2.7%だった。

 


 企業にとっては気になる労働組合の存在だが、フィリピン日本人商工会議所が年1回会員企業を対象として実施している賃金調査の結果では、回答企業のうち、労働組合があるのは16%で、大半の回答企業には存在していない。こうしたこともあり賃金上昇圧力はあまり強くはないと考えられる。


 職が少ないということもあり、ワーカークラスの離職率は低い。一方、フィリピン人は英語が話せることもあり、ナレッジクラスの労働者は、仕事探しの対象は全世界に向いており、よりよい条件を求めて転職する傾向がある。各企業とも良い人材を長く確保することに注力しており、アウティング(遠足)やクリスマスパーティー、優良従業員に対する各種表彰、インセンティブ旅行などいろいろと工夫を凝らしている。

 

 採用にあたっては、日本と同様に書類選考、試験、面接をしていくが、バックグラウンド調査は重要である。結婚しているか、子供はいるか、子供は何歳か、誰と暮らしているか、誰が生計を立てているか、両親は誰が面倒を見ているか、兄弟はどのような仕事をしているか、など思いつく限り聞いて差し支えない。その人物が家族の中でどのような位置づけとなっており、その人の収入に家族がどの程度頼ることになるのか(離職しやすそうかどうか)、一緒に暮らしている人の中に危険そうな人物はいないか(会社でトラブルを起こす要因はないか)、転職者の場合、前職・前々職の職場に連絡をとり、そこに務めていたときの勤務態度やどうしてやめたのかなども聞いて、できる限りその人物の事について把握することが重要である。

 

 一方、フィリピンでは、日本では当たり前の派遣労働は認められていない。労働者は最初の試用期間6ヶ月を超えると正社員となるため、各企業は6ヶ月以内にその労働者の能力を判定することになる。これを逆手にとり、試用期間の6ヶ月以内で雇用契約を打ち切り、また6ヶ月間雇うということを繰り返すケースがあるが、ドゥテルテ政権になってからは、このような6ヶ月単位での雇用を繰り返す形態を厳しく取り締まる姿勢を打ち出してきた。また、偽装請負を防止するため、請負業への規制厳格化、そこに従事する人々の正規雇用促進といった取り組みも行われている。この点は注意が必要である。

 

(フィリピン日本人商工会議所 事務局長 羽生 明央)