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【海外情報レポート】オーストラリアのウラン開発と原子力利用(シドニー)

 オーストラリアのウラン埋蔵量は、1,661,000トン、世界シェア31%で世界1位である(2011年時点、OECD/NEA & IAEA)。生産量については、5,983トン、世界シェア11%でカザフスタン(19,451トン)、カナダ(9,145トン)に次ぎ、世界3位である(2011年時点、World Nuclear Association)。

  オーストラリア国内には原子力発電施設が一切ないため、国内で採掘されたウランは、ごく少量の研究開発用以外の全量が国外へ輸出されている。主な輸出先は、多い順にアメリカ、EU、日本で、この3か国で約90%を占めている。核不拡散防止条約(NPT)非加盟国のインドに対しても、2011年12月の与党労働党の党大会でウラン禁輸措置解除が決定され、2012年10月には、豪印原子力協力協定締結交渉開始が両国首脳により発表された。

 オーストラリア国内には、北部準州に1つ(Ranger)、南オーストラリア州に3つ(Olympic Dam、Beverley、Honeymoon)の合計4つのウラン鉱山があり、大部分がRangerとOlympic Damの2カ所で生産されている(下図参照)。従来、新規のウラン鉱山の開発を禁止する「ウラン3鉱山政策」により、ウラン開発は、上述のRanger、Olympic Dam、Beverleyの3鉱山に限定されてきたが、2007年に与党労働党は同政策を廃止し、2011年にHoneymoon鉱山が操業を開始した。2013年中には、新たにFour Mile鉱山が生産開始予定であるほか、西オーストラリア州やニュー・サウス・ウェールズ州、クイーンズランド州でもウラン開発解禁が発表されるなど、今後、ウラン開発は拡大していくものと見られている。

 

 

 

オーストラリア.png

 

   当所の資源・エネルギー部会では、さる6月5日、原子炉の技術に関する視察会を実施した。同視察会では、オーストラリア政府の管理のもと、調査研究用としては世界屈指とされる同国で唯一の原子炉を運営し、原子力を利用した医薬品開発、水源管理、材料工学や原子分子科学研究など、様々な研究を行っているオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO=Australian Nuclear Science and Technology Organization)を訪問し、同機構のスタッフ・各分野の専門家からヒアリングを行った。同施設内には、原子炉や加速器、放射線医薬品生産施設、中性子照射装置などが設置されており、原子力の平和利用の研究が行われている。

 

 

  当所資源・エネルギー部会によるANSTO視察会の様子.png  

 

 

 

  同機構では商用実用化(物質の構造解析、質量・年代測定や医薬品の開発など)も行っており、構内のRADIO PHARMACEUTICAL FACILITYでは、がんの治療や診断用に使用される核医学検査薬テクネチウムの原料となるMolybdenum-99をはじめ、放射線物質を利用した医薬品を生産し、オーストラリア国内225以上の医薬センター(全豪の放射線医薬品の80%がANSTOから出荷)とニュージーランド、東南アジア等へ販売している。

   なお、Molybdenum-99の日本での消費量はアメリカに次いで世界第2位であるが、アメリカと同様に、日本国内では生産できず、海外からの輸入に依存している。日本国内でのMolybdenum-99の生産は長年の悲願であり、日本原子力研究開発機構は、Molybdenum-99の国産化・実用化に向けて、2013年1月に予備試験に着手している。

 

(シドニー日本商工会議所 事務局長 八田 城之介)