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【最新海外事情レポート】フィリピン選挙期間スタート(マニラ)

  アメリカ大統領選に注目が集まっているが、今年はフィリピンでも大統領選が行われる。フィリピンでは、大統領だけではなく、副大統領、上院議員、下院議員(選挙区、比例)、州知事・副知事、市長・副市長、町長・町副長、州議会議員、市議会議員、町議会議員、ARMM知事・副知事、評議員といった総計約18,000ものポストが5月9日(月)の選挙によって争われる。

  一番の注目は大統領選挙で、候補者は、ポー上院議員、ビナイ副大統領、ロハス前内務自治相、サンチャゴ上院議員、ドゥテルテ・ダバオ市長(順不同)。各種民間調査では調査のたびに人気候補が入れ替わる混戦模様となっているほか、一部候補者の選挙資格問題や健康問題が出てくるなど、最後まで予断を許せない状況である。

  在比日系企業や在留邦人にとっても今回の選挙は目が離せないビッグイベントであるが、選挙の仕組みそのものがよくわからないということもあり、今回は、当会会報誌2月号で藤井伸夫副会頭(在比歴16年)にご執筆いただいた当地の選挙に関する記事の中から一部抜粋する。

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1.被選挙人(大統領、副大統領、上院議員、下院議員)

(1)大統領

 任期は「6年・再選無し」となっている。6年毎に選挙が行われる為、今年のような16年選挙を「総選挙」、正副大統領のみが対象とならない13年・19年選挙などを「中間選挙」と呼ぶ人もあるが、日々の生活ベースで物事を見ているフィリピン人にとっては大きな違いは無い。身近な生活に直結するのは州知事・下院議員・市町長・市町の評議員で、“投票用紙の長さが一寸違うだけ”(通常の投票用紙の最初に正副大統領が載っかっている)と思っている。正副大統領は“雲上人”であり、それだけに地方へ行くとなれば大歓迎されるのが通例である。

(2)副大統領

 任期は「6年・再選無し」と大統領と同様で、米の制度と違うのは「選挙の対象」となっている事で、フィリピン人のバランス感覚から大統領と所属政党・党派の異なった候補者が選ばれる“ねじれ”のケースが多い。現在のアキノ‐ビナイの関係のようになるのが普通で、今回選挙がどのようになるかに注目したい。“スペア・タイヤ”との陰口も多いが、閣僚ポストを要求して、実質的な仕事を行う場合もある。ビナイ副大統領もこのケースで、当初は地方自治体の首長経験を活かして「内務自治相」ポストを要求したが、断られて住宅対策の閣僚ポスト・OFW対策の閣僚ポストに就任していたが、汚職追及を機に辞職している。

(3)上院議員

 任期は「6年」で、再選のみ可となっている。継続して上院議員になれるのは「2期12年」が限度で、1回選挙を休んで3年後を目指す事になる。全体としては、24人の内半数の12人が3年毎に改選される仕組みとなっていて、日本の参議院議員と似ている。任期半ばで正・副大統領に挑戦するケースがあり、当選した場合は欠員が3年間続く事になり、落選すればそのまま任期を継続する事ができる。今回の選挙ではポー上院議員がこのケースに相当する。

 今回の上院選でもラクソンやパンギリナンが1回休んで再挑戦する好例である。その間、世間に忘れられないように下院議員や州知事などを目指す    ケースもある。

(4)下院議員

 任期は「3年」で、中身は選挙区選出議員と比例代表議員に分かれる。継続して下院議員になれるのは「3期9年」が限度で、3期目にあたっている議員は“次の道”か“後釜”を考慮しないとならなくなる。“次の道”には、「名前が充分に売れている・ボスの引きがある・資力も充分」という場合には上院議員かその上というケースもあり、“後釜”では無難なところで配偶者・子供・親族というケースが多い。選挙区は、各州の市と町を地域別に纏めた構成になっていて、市に昇格すると最低1人が割り振られる。従って、日本のように市町村の統合というような事態は起こり得ず、増える一方となっている。町から市への昇格は、法案によるが“皆が同じ境遇”にある事から否決されることは無い。比例代表議員は、「パーティ・リスト議員」と呼ばれる職種・地方・階層などの特定の利益を代表する団体に所属する議員である。選挙は全国区となり、広く意見を国政に反映させる趣旨から設けられた制度で、1団体から現在は3名が上限となっている。

 

2.選挙期間・運動期間

 立候補申請は、昨年10月16日までの1週間で終了しており、ドゥテルテ候補の申請で問題になった代理申請(党公認候補の変更)も昨年12月10日で終っている。

 様々な禁止事項などに絡む“選挙期間”は、1月10日からスタートし、投票日の1ヶ月後の6月8日まで続くことになる。その最後を飾るのが、5月23日から6月10日までの国会開催で、両院総会が開かれて新しい正副大統領が宣言される。

 選挙運動期間は、全国区である正副大統領・上院議員・比例代表団体が、2月9日から投票日前日の5月7日までの90日間で、その他は3月25日から5月7日までの45日間となっている。

  *選挙期間はエレクション・ピリオド、選挙運動期間はキャンペーン・ピリオドと言って明確に区別している。

  *この選挙期間の定めは重要で、例を挙げればTVなどで流される選挙コマーシャルについても適用され、放映時間・費用の制限がある。逆に言うと期間外の放映は対象外なので、事実上は“野放し”状態にある。だが、13年選挙でラグナ州知事に当選したエヘルシト州知事は、法定費用を大幅に逸脱したとして選管から当選無効が宣言され、伯父のエストラーダ・マニラ市長からも宥められて州庁舎から去っている。

 

3.“バン”(禁止令)

 “一大行事”であるだけに、各種の“バン”(禁止令)が出ることになる。最初に出されるのが“ガン・バン”で、通常期間は「所持許可」と「携行許可」の2つで銃器規制が行われているが、選挙期間(1月10日~6月8日)は「携行許可」が制限される。軍・警察の治安部隊と選挙関係者のガード役のみが銃器携行を許されるというもので、直近の13年選挙時でも、違反とされて逮捕された者は2,958人で押収された銃器は2,901丁に及んでいる。

 次に投票日前後の“リキュール・バン”が出される。投票日の前日・当日の2日間が通例だが、13年選挙時には選挙管理委員会とMMDA(首都圏開発機構)が1ヶ月を主張したが、飲料会社・飲食業協会が反発して最高裁が介入した結果、2日間に治まった。

 最後に“マネー・バン”がある。これは投票日前の5日間は、10万ペソ以上の現金の引出しを禁止する規制で、中央銀行や銀行業界がこぞって反対した結果、事実上骨抜きになった。

 これらの規制は、担当する政府機関が「選挙不正を何とかして防ごう」との趣旨から編み出したもので、“悪意”のあるものでは無い。

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 フィリピンでは圧倒的な貧困層の票も無視できず、イメージも重要なポイントとなる。先述の大統領戦の候補者にはそれぞれ特徴があり、捨て子だったが有名俳優に育てられたポー上院議員、ダバオ市の治安を圧倒的に改善したドゥテルテ・ダバオ市長、祖父が元大統領のロハス前内務自治相、市長時代にマカティを大都会に発展させたビナイ副大統領、歯に衣着せぬ発言で頭が切れるサンチャゴ上院議員、といった顔ぶれである。過去、投票率は70%を超えており、選挙管理委員会はさらなる投票率の向上を目指している中で、引き続きこの選挙戦から目が離せない。

 

(フィリピン日本人商工会議所 事務局長 羽生 明央)