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【海外情報レポート】新たな転換期を迎えている都市国家(シンガポール)

   シンガポールは人口531万人、国土面積714㎢の天然資源の乏しい小さな都市国家でありながら、建国から50年足らずで一人あたりのGDPで日本を抜くほどの経済的に豊かな国となった。時代に合わせて海外企業の投資誘致を徹底して行い、海外企業が利用し易いように金融システムや税制を整え、地の利を活かして物流のグローバル拠点を築いてきたそのきめ細かい国家運営が成しえた結果である。このシンガポールがまた新たな転換期を迎えている。

 

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   シンガポールは金融、物流、観光が主な産業として見られがちであるが、GDPの構成比で見ると実は製造業が一番大きなウェイトを占める。これは、他の都市国家と大きく異なる点であり、安定的な雇用機会を生み、付加価値を追求することで技術的な国際競争力を得られるという意味においてシンガポールの強みでもあることから、シンガポール政府は国策として製造業がGDPの20~25%を占めるように推進してきている。内訳をみると電機・電子、バイオメディカル、化学で全製造業分野の約6割を占めている。かつてはハードディスクや半導体関連が牽引して電機・電子分野だけで4割近くを占めていたが、現在は年々縮小しており2012年には逆に急速に拡大しているバイオメディカルに追い抜かれてしまった。このように、建国以来、永くシンガポールの成長を支えてきた製造分野が高コスト化に耐え切れず、より付加価値の高い分野へとシフトしてきているのは明らかである。

 

 

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   この状況をさらに加速させているのが外国人労働者に関する政策である。昨年7月の本レポートで、政府による外国人労働者の就労規制強化とそれに伴う採用活動の制限や人件費の高騰が日系企業の課題となっている旨報告したが、この規制強化は段階的に行われており、さる7月1日にも強化に向けた様々な基準の引き上げが行われた。この影響を大きく受けるのがレストランやホテル等のホスピタリティー分野と製造業である。これまでは、外国人労働者を採用することでコスト面や労働力需要の整合性を図ってきたこれらの産業が、ビジネスモデルに合致するレベルの労働力を満たすことができなくなっており、国外への移転や投資の縮小を迫られている。シンガポール政府もこの動きに反応し、インドネシアやマレーシアなどシンガポールよりも安価で豊富な労働力が提供されている地域にシンガポール水準で管理・運営される工業団地を建設することで、そちらへの移転を促し始めている。

 

    シンガポールの政策転換はかなり頻繁に行われてきており、都市国家としての必然であるとも思われるが、今回の外国人労働者関連政策とそれに伴う産業構成のシフトはこれまでに無く影響の大きなものであり、シンガポールのこれからを決定づける非常に重要な一歩となるであろう。

 

(シンガポール日本商工会議所 事務局長 東 潤一)